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【J1:第6節 大宮 vs 神戸】レポート:課題改善の進まぬ大宮、攻守に噛み合った神戸に完敗を喫す。(14.04.07)

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試合前、アウェイチームの選手紹介で控えGKの名前がアナウンスされる辺りから、ホームゴール裏では既に待ちきれず拍手が起こり始めた。大宮サポーターの誰もが、河本裕之がNACK5スタジアムに帰ってくるのを待っていた。その名前が呼ばれたときにスタンド全体を包んだ拍手は、相手チームの選手に向けられるものとしては最大級のものだっただろう。ただし実際に彼が67分、3点のリードを守るためピッチに姿を現した時、いまだ無得点のホームサポーターに暖かな空気を醸す余裕はなく、そのまま試合が終わるとゴール裏からはブーイングも起こった。それほど、大宮の内容は良くなかった。

序盤から、自分たちの形を出せていたのは神戸だった。マルキーニョスが前線でボールを収め、森岡亮太がからみ、小川慶治朗やペドロ ジュニオールの突破力を生かす。何より、中盤の底でボールを引き出し、前線に縦パスをズバズバ入れてくるシンプリシオに大宮は手を焼いた。大宮は「(前節の)柏戦や(水曜日の)浦和戦ほど守備ラインは低くはなかった」(渡邉大剛)のは確かだが、前線からどうプレスをかけるのか曖昧で、両ボランチの金澤慎がファーストディフェンダーとして追い回し、片岡洋介は人を追って最終ラインに下がることで、神戸にとっては「思ったよりバイタルが使えた」(森岡)。そして神戸は守備でも「スイッチの入れ方が上手かった」(渡邉)。追うところと、追わないところと、メリハリの効いたプレスに、大宮はビルドアップができなかった。ラドンチッチへのロングボールも「マス(増川)のところ(競り合い)とかカバーリングは気をつけていた」(相馬崇人)という神戸にほぼ抑えられ、前半は攻撃の形が作れず、シュート1本に抑えられてしまう。
個人能力の高さに加えて、神戸は切り替えでも大宮を上回った。21分、左サイドで大宮を押し込むと、スローインを素早くペナルティエリア内に送る。大宮はエリア内に人数がそろっていたが、対応が遅れた。高橋峻希の強烈なミドルシュートを北野貴之が弾くと、そこに相馬崇人とマルキーニョスがなだれ込み、相馬弾はブロックした北野だが、マルキ弾まで止めることはできず、神戸が先制した。
大宮に不運もあった。ここで北野が右肩を亜脱臼したが、痛みをこらえつつプレーを続行。45分にまたもクイックリスタートからシンプリシオがペドロ ジュニオールにボールを送ると、がら空きのバイタルエリアをペドロが切り裂く。ミドルシュートは測ったように北野の右側を襲い、弾いたボールは無情にもゴールに吸い込まれた。試合後、大熊清監督は「Jリーグでは2点目というのは大きい。交代枠を取っておきたいという決断の遅れもあり、反省すべき点はある」と唇を噛んだが、確かに大きな失点だった。

後半、大宮はこの日まったく前線でボールを収めることができなかったラドンチッチを下げ、チョ ヨンチョルを投入。家長昭博をトップ下に移した4-2-3-1のフォーメーションで反撃に出る。対する神戸が、「攻撃のところで人数をかけて攻めれば攻めるほどカウンターをくらってしまう」(安達亮監督)と、ある程度引いてカウンターねらいを選択したことで、大宮の時間帯も増えた。もし57分の、中央でこぼれ球を拾って神戸守備陣を引きつけた家長から、ペナルティエリア内フリーで受けたズラタンの一撃が決まっていれば、試合はどうなっていたか分からない。しかし渾身の一撃は大きくバーを超え、神戸は徐々に落ち着きを取り戻し、鋭いカウンターをくり出し始める。そして65分、高橋祥平と片岡洋介のポジションチェンジによって生じたバイタルエリアの隙をシンプリシオに突かれ、森岡のミドルシュートが大宮ゴールに吸い込まれた。
ここで試合は完全に決まった。終盤に大宮は菊地光将を前線に上げてパワープレーに出るが、増川隆洋、岩波拓也に河本まで加わった神戸の最終ラインに弾き返され続けた。柏戦ではそれで2点を追いついているが、「あんなことは毎回できるものじゃない」と、菊地自身が自嘲気味に語った通りである。後半では神戸の5本を上回る6本のシュートを放ったが、最期まで神戸のゴールネットを揺らすことはできなかった。

神戸は完勝、それも初の無失点に、監督も選手も顔をほころばせると同時に自信を深める試合となった。攻守が噛み合い、順位も3位に浮上して、進撃を続けていきそうな気配がある。
大宮にとっては、最悪の内容とまでは言えないが、『プレス』と『ビルドアップ』というプレシーズンから一貫して問題視されている課題に対して、改善が遅々として進んでいないことへの焦りと怒りが、大宮サポーターのブーイングとなって表れている。それだけに、この日、河本とともに後半から姿を現した増田誓志の存在に、期待を抱かずにはいられない。本人は「チームのためにできたことは何もなかった」と浮かない顔だったが、アンカーの位置でボールを落ち着かせ、的確に配球することでゲームをコントロールする能力は示した。「増田のところで時間ができると、他も良いポジションを取れて主導権を握れる。良いチームにする方向性がこの試合で見えて、決断しないといけない部分も大いにある」と、試合後に大熊監督は人選も含めてチームの方向転換を示唆した。
早々に苛重な役割を負わされる増田には気の毒だが、それが大宮の現状である。2年前、シーズン途中にやってきて崩壊状態にあった守備の立て直しを期待され、見事にそれに応えてくれたセンターバックとの再会と、これから攻守において中心になってもらわなければならないボランチの初出場が交錯したことに、何か運命的なものを感じずにはいられない。

以上

2014.04.07 Reported by 芥川和久
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