公式記録としてシュート数は「1」となっているが、それも後半アディショナルタイムにようやくカウントされたものであった。しかもドウグラスがヘディングで放ったその唯一のシュートは、川崎FのDFに厳しく体を寄せられていたことでゴールマウスから明らかに外れた弾道。その事実が物語るように徳島は全く攻撃の場面を作れなかった。
さらにそれだけでなく、チームは絶対に堅く締めなければいけなかった守備においてもいい所がほとんどなかったと言わざるを得ないだろう。「守備の時は両サイドハーフも引いてくるので5バックになります。それでも止まらなかったというのが正直な感想です。自由にやられてしまい、自分たちの力不足を痛感しています」と福元洋平も語っていたが、川崎Fの個人能力と組織的パス回しに対して徳島の守りはまるで対処出来ず。川崎Fの選手たちが自らミスを起こさない限りボールを奪えないような状態がずっと続いた。
少々厳しい表現ではあるが、同じカテゴリーとは思えないほどのワンサイドゲーム。いずれにしてもこの一戦、徳島としては川崎Fにそれを展開されてしまったと認める他ない。
ゲームを振り返れば、徳島は早い時間にまず、川崎Fの個の力によって強烈なワンツーパンチを食らってしまった。まず8分、レナトに右サイドを切り裂かれる形から強烈なドリブルシュートを放たれ先制点を奪われる(記録は福元洋平に当たってのオウンゴール)と、続く11分には大久保嘉人に驚愕ミドルを叩き込まれてあっという間にリードを広げられてしまったのである。
するとそこから次は、余裕を得た川崎Fに組織力の違いをハッキリ見せつけられていく。徳島は人数を掛けたブロック形成で何とか食い止めようとするも、イメージ共有が明確に感じられる彼らのハイレベルなポゼッションにボールの奪いどころが絞れない。そのうえ前後左右へ振り回されてブロックのバランスが少しでも崩れた時には、中村憲剛や大島僚太に正確な縦パスをバイタルエリアに通され、一瞬のうちに肝を冷やすシーンへ持ち込まれてしまった。
逆に前半の徳島の攻撃はと言うと、ボランチの濱田武と小島秀仁から効果的な中央縦への配球がないことでなかなかそのスイッチが入らない。そのため1トップの高崎寛之が両サイド奥のスペースへ献身的に流れて懸命にボールを引き出すが、それもいいサポートに恵まれなかったことでチャンスには結び付いていかなかったと言えよう。
そして折り返した後半は両者の力量差がいっそう色濃く見えるようになっていく。ワンタッチ、ツータッチで数え切れないほどのパスが細かく回る川崎Fに対し、徳島はボールへのアプローチすらなかなか出来ない状況に。結果、試合のほとんどが徳島陣内で行われるようになり、そうした流れからして60分と77分に追加された2つの失点はもう必然のものであったと言えるだろう。
橋内優也が「本当に情けないです」と話せば、大崎淳矢も「ブーイングされても仕方のない内容です。僕がサポーターでも、間違いなくブーイングしています」と沈痛な表情でコメント。試合後にはさすがに選手たちも自分たちの内容にショックを受けていたようだ。
しかし、だからと言って下を向いたままでは何も変わらない。今季すでに何度も繰り返し述べていることだが、チームとして前だけを見据えて努力を継続すれば、きっと遠からず状況は変化させられるはずである。大崎も最後には顔を上げ「諦めずにやり続けていきます」と変わらぬ決意を絞り出したが、続いている厳しい戦い、苦い想いもひとつひとつ貴重な経験として吸収し、徳島の選手たちには折れない気持ちでまた明日から前進を追い求めてもらいたい。
さて対し勝利した川崎Fについては、風間八宏監督も「我々にとってはいいゲームだった」と口にしていたように、今後勢いをより加速させられる内容だったと言えるのではないだろうか。自慢のポゼッションはかなり精度高く実践出来ていたし、エース大久保がリーグ4戦連発のゴールを決めた上に途中出場の稲本潤一もが得点したことで、チーム全体のムードは一段といいものになるに違いない。ただ、負傷退場したレナトの状態は気になるところだろう。小林悠に続くケガ人の発生とあって、ACLを挟むことでかなりの連戦となる次節以降への影響がやはり心配される。それだけに、チームとしてそれをどう乗り切っていくのか、要注目であろう。
以上
2014.04.07 Reported by 松下英樹
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