清水にとっては本当にもったいない敗戦だったが、だからといってF東京が幸運で勝利をつかんだわけではない。何度かあった試合のターニングポイントで、流れを自分たちのほうに引き寄せる力を、F東京の選手たちはしっかりと備えていた。
前半30分あたりまでは、完全に清水のゲームだった。開始4分に大前元紀の突破から、こぼれ球を拾った長沢駿が公式戦3連発となる先制ゴールを叩き込み、その後も自分たちのサッカーを展開。新たなボランチコンビ、六平光成と竹内涼を軸に落ち着いてパスを回し、じっくり組み立てる場面と縦に早く攻める場面のメリハリも良好。守備でも良い位置でボールを奪うことができ、攻撃の厚みもあり、何より今までにない攻撃のスムーズな“流れ”が感じられたことは、チームの進化を実感させた。そして追加点のチャンスも何度か作れており、30分までは清水が負けることなど想像できない試合展開だった。
しかし、そのチャンスを清水が決め切れずにいるうちに、F東京が落ち着いてボールを回せるようになってきて、30分過ぎからはF東京がポゼッションする時間が多くなってくる。逆に「中盤にボールを入れられたときのファーストディフェンダーがはっきりしていなかった」(平岡康裕)という清水は、序盤ほど良い形でボールを奪えなくなり、奪えた場面でも攻め急ぎすぎて、流れを取り戻せない。
そんな中でF東京は、44分に良い流れの攻撃から武藤嘉紀が強烈なミドルシュートを放ち、これはGK櫛引政敏に止められたものの、リバウンドをダイレクトで河野広貴が良いコースに流し込み、同点ゴールを奪うことに成功。終了間際のこの1点は、F東京の選手たちにまだまだやれるという自信を与えた。逆に清水としては、追加点を決めるか、もっと冷静に試合をコントロールするかによって、リードを保ったまま終えなければいけない前半だった。
後半にも開始早々に試合が動き、4分にはF東京側から見れば不運な太田宏介のハンドで清水がPKを獲得。これをいつも通り大前が右足で蹴ったが、F東京の絶対的な守護神・権田修一がコースを読み切って見事にストップ。これが、この試合最大のターニングポイントになった。PKをほとんど失敗することのない大前が止められ、追加点のチャンスを逃した清水は落ち着きや余裕を失い、逆にF東京は権田のビッグセーブに勇気づけられ、勢いをつかんだ。
そして、後半12分に太田の右FKから日本代表DF・森重真人が気迫のヘッドを叩き込んで、F東京が逆転。その後、自信を持って冷静に試合を進めたのはF東京のほう。清水は後半19分にボランチの竹内に代えて2列目の高木善朗を投入し、ボランチを1枚、前線をノヴァコヴィッチと長沢の長身2トップに代えて(4−1−3−2の形)点を取りにいったが、「攻めがロングボールに頼りすぎた」(河井陽介)という状況になり、なかなか成果が表れない。落ち着いてパスを繋ぎながらサイドから攻略するという形があまり作れず、ロングボールはF東京のセンターバック陣に跳ね返されるばかり。それでも、セカンドボールを拾えれば良かったのだが、それもできずチャンスの数を増やすことはできなかった。
そして後半37分、カウンターから米本拓司に3点目を決められ万事休す。結果論ではあるが、リスクを冒した攻撃的な布陣変更というゴトビ監督の賭けは失敗に終わった。
その後は、5分あったアディショナルタイムでもF東京が落ち着いて試合をコントロールし、清水に付け入るスキを与えないままタイムアップ。アウェイで待望のリーグ戦初勝利をつかみ、マッシモ フィッカデンティ監督も「選手たちの姿勢がすばらしかった」と、彼らの頼もしさを称えた。
一方、これでホーム2連敗となり、16位に順位を下げた清水。完全に“たら・れば”の話ではあるが、前半のうちに追加点を奪っていれば、あるいは大前のPKが決まっていれば、F東京の焦りを誘って清水がカウンターから点差を広げられた可能性もあった。そうなれば、前半の試合内容から考えても、清水がさらに自信をつけ、勢いに乗れていた可能性が高いだけに、本当にもったいない試合だった。プレー内容が良くなってきていることは間違いないので、これで自信を失うことなく、4月から逆襲に転じることを期待したい。
以上
2014.03.30 Reported by 前島芳雄
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