アウェイで迎えた熊本との今シーズン開幕戦では自分たちのサッカーを見せられずに敗れた福岡だが、その後は３戦負けなし。Ｊ１昇格レースをリードすると目される京都と磐田に１勝１分の成績を残すなど、徐々に調子を上げてきている。特に前節のアウェイ・磐田戦では、立ち上がりから磐田に圧倒され、開始19分で２点を失う最悪のスタートながら、そこから主導権を奪い返して終わってみれば３−３のドロー。自分たちが目指すサッカーを表現すれば上位陣相手にも互角以上戦える所を見せた。

しかし、京都戦に引き続き、磐田戦でも自分たちのサッカーが通用したことで一定の手応えを掴みながらも、選手たちの口からは満足しているという言葉は聞かれない。選手たちから聞こえてくるのは、磐田戦の立ち上がりを最悪とも言える状況にしてしまったことへの反省と、勝ちきれなかった悔しさばかり。マリヤン・プシュニク監督も一定の評価をしながらも「京都戦の次の愛媛戦のような結果になったら磐田戦の勝点１は無意味なものになる」と表情を緩めない。変わりつつある気配は感じながらも、それを本物にするためには、まだまだ足りないものがあることを全員が認識し、それを追求するためにハードなトレーニングを積んでいる。

そして第５節。福岡はレベルファイブスタジアムに横浜FCを迎える。横浜FCは今シーズンを迎えるにあたってチームの半数に当たる14人の選手を補強。山口素弘監督がチームを率いて３年目のシーズンに勝負をかけて臨んでいる。先発メンバーの約半分が入れ替わるチームは、山口監督が目指すサッカーをそのままに、それを実現すべく質の高い選手を加えた布陣。プシュニク監督は「いい選手が入ってきたことでチーム全体が変わり、強敵と言える存在になった。何よりも個の質が高い」と警戒心を強めている。

１トップを務めるのは高さと強さを兼ね備えたパク ソンホ。ダブルボランチには経験豊富な松下年宏と北朝鮮代表の安英学。そして最終ラインで立ちはだかるのはドウグラス。センターラインに経験も実力もある選手を補強し、テクニックとサッカーセンスに優れる寺田紳一がゲームを作る。今シーズンは２引き分けのスタートになったが、富山、山形に連勝してここまで負けなしと評判通りの実力を発揮している。そして結果だけではなく、ボールをポゼッションし、パスをつないで崩すサッカーの完成度も高い。福岡にとっては難しい相手であることは間違いない。

それでも福岡にとって必要なものは勝点３。相手がどこであろうと、どんなチームであろうと、ホーム・レベルファイブスタジアムの試合で相手に勝点を許すわけにはいかない。昨年以上に若返ったチームは、経験と実績という点では横浜FCには及ばないが、かわりに若さとハードワークという武器がある。そして、サッカーが経験と実績だけで勝負が決まるわけではないことは、京都戦、磐田戦で自らの手で証明してみせた。それが単なる勢いではなく自分たちの力であることを証明するためにも、横浜FC戦で求められるのは勝利のみ。それが変わりつつあるチームをさらに成長させる糧にもなる。

福岡にとっての勝利の鍵は、いつもと同じように、高い位置からアグレッシブにボールにプレッシャーをかけること、１対１の戦いに負けないこと、そして相手よりも走ること。もちろん横浜FC対策も必要だが、まずは自分たちの生命線とも言える部分で相手を上回ることができなければ何も始まらない。そして、それによってゲームの内容と結果が変わってしまうのは過去４試合が証明している。その手応えと反省を踏まえて、立ち上がりから自分たちのサッカーを余すことなく表現することが求められている。

「横浜FCは負けていないチーム。難しい試合になると思うが勝てば順位がひっくり返る。逆に、序盤戦とは言え、ここで敗れれば上位陣に引き離されて後々苦しい展開になってしまう。しかもホームゲーム。勝つことだけを考えて戦う」（坂田大輔）
そんな選手たちをレベルファイブスタジアムに集う仲間が支える。そして、その仲間とともに戦うのも福岡の最大の特長のひとつ。変わらぬ姿勢。変わらぬ態度。そして変わらぬ想いで戦いたい。勝利の２文字だけを信じて。

以上

2014.03.29 Reported by 中倉一志