『また、その話か』と思われる諸兄もいらっしゃるだろうが、どうしても避けて通れないところだと感じているのでお許し願いたい。『負けに不思議の負けなし』と試合後のインタビューで語ったのは名将と言われた野村克也監督だが、この言葉は肥前国平戸藩の第9代藩主・松浦清(松浦静山)の剣術書に記された言葉だとは意外と知られていない。その剣術書では、“負ける時には、なんの理由もなく負けるわけではない”という意味とともに、“勝った時でも、なにか負けに繋がる要素があった場合がある”と説いている。要は、勝負事は勝敗だけにかかわらず常に内容に目を向けておかないといけないと諭した言葉である。これを頭の隅において、このプレビューを読んでいただきたい。
今シーズンも4節が消化された。思惑通りの試合運びができているチーム、初勝利に向けて苦戦するチームとその様相は様々だが、今節の対戦カードである鳥栖対G大阪を見ると、結果は別にして双方思惑通りの試合運びができているのではないだろうか。
鳥栖は、試合開始からアグレッシブさを前面に出し相手ゴールに迫っている。
G大阪も、いまだに流れの中からの失点はしていない。どちらも試合の流れをつかむことはできているように見える。しかし、鳥栖は9位、G大阪は11位。あとは、流れの中から“得点さえ”奪うことができれば、必然的に勝点が上積みされる戦い方を見せているものの、その得点を奪うのがとても難しいのがサッカーなのだ。
鳥栖は、開幕戦となった徳島戦と第2節・浦和戦で先制点をあげることができた。「先制点をあげると鳥栖は強い」とは、J1初年度の2012年試合後の早坂良太の言葉。これは鳥栖サポーターだけでなく、他クラブも認めるところで、その強さを第2節目までは見せてくれた。しかし、第3節・鹿島戦、第4節・新潟戦では先に失点し連敗となった。
対するG大阪も、押し込まれながらも統率された守備でしのぎ、少ないチャンスをシュートまで持っていく戦い方はできている。あとは、攻撃陣の覚醒さえ起これば、さらなる上位に進むことができるだろう。セットプレーやPKなどでの失点で勝点が思うように上積みできないのは、そこに至るまでに流れをつかみ切っていないことが大きな要因と思われる。FW宇佐美貴史の離脱も大きく影響しているのかもしれない。
両者の置かれている立場と状況を見ると、この試合でも“先制点の重み”が見えてくる。鳥栖はゴール前まで迫ることができている。決定的なシーンも前節の新潟戦では幾度となく見せた。FW豊田陽平を中心とした攻撃陣と、今シーズンの最大の武器である左サイドコンビMF金民友とDF安田理大の突破に期待がかかる。これに対するG大阪はDFの奮闘に尽きるが、右サイドDF加地亮とMF阿部浩之の攻撃参加で鳥栖の左サイドを抑え込みたいところだろう。
「サイドDFとして尊敬する存在」と加地亮(G大阪)の脅威を語る安田理大(鳥栖)とのマッチアップがとても楽しみな一戦でもある。
失敗には原因のない失敗はあり得ず、再び失敗しないためにその原因が何であったのか、その原因をどのようにして取り除いてきたのか…前節の試合からの対応能力も問われる一戦といえる。
サッカーを構成する要素は、フィジカル、テクニック、メンタルと多岐に渡る。どんなにシュートを放っても、ゴールを割れると限らない。とはいえ、“打たないシュートは入らない”わけで、ゴールを割るためには、その確率をあげるべくシュート機会を増やすしかない。11人で相手をかわしながらボールをゴール前まで運んでも、最後に決めることができるのは1人だけ。そのプレッシャーは想像以上のものだろう。
観ている側は、少しでもそのプレッシャーを軽くするために声援を送るしかない。『サッカーの華はゴール』と言われる由縁でもある。
以上
2014.03.28 Reported by サカクラゲン
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