今季初の連勝を賭けて三ツ沢のピッチの上には、横浜FC、山形の執念がぶつかった。大きなミスはなく、両チームの現在の力を出し合ったゲームだった。試合後の記者会見で、横浜FC・山口素弘監督は「データを見たらボール支配率はうち（横浜FC）が1位、山形さんが2位。山形はパスも多いし、シュートも多い」と述べたが、その両チームのチームスタイルそのままに試合は進行した。

前半立ち上がりから、両チームともゴール前に運ぶシーンを多く作り、積極的に試合に入っていく。横浜FCは、松下年宏、小野瀬康介、寺田紳一の出足とキープ力で中盤を支配すれば、山形は横の幅を使った攻撃でサイドから横浜FCを揺さぶろうとする。10分過ぎから、徐々に山形にペースが傾きつつある中、18分にアフターチャージを受けた松下年がプレー続行不能になり26分に黒津勝に交代、フォーメーションも2トップに変更する。山形にとってはマークの確認が徹底できない交代後の最初のプレーで、黒津の特長であるスピードに翻弄される。裏に抜ける黒津にドウグラスからロングフィードが入ると、黒津が頭で小野瀬に落とし、その小野瀬のドリブルを舩津徹也が倒しPKの判定となる。このPKを小野瀬が自ら決めて横浜FCが先制する。その後は、安英学を中心に、ディエゴをグループで封じることに成功した横浜FCがゲームを支配。前半を1-0で終わらせることに成功する。

「前半は攻め急ぎがあった。ハーフタイムに話をして、後半はそういうところが改善できたと思う」と、山形・石崎信弘監督が語るように、後半はややコンパクトさが失われる中で、山形がディエゴがフリーになるシーンが増え、落ち着いた攻撃を見せるようになる。そして62分に秋葉勝の絶妙のクロスに中島裕希がピンポイントで合わせるファインゴールで同点に追いつく。しかし、山形の勢いが増す中、横浜FCはこれ以上の大崩れをしなかった。そしてこの我慢が70分に結実する。ディエゴのノールックパスを「そういうパスが来ると聞いていて準備ができていた」ドウグラスが、特長である前に強い守備で奪うと、そのままドリブルで持ち上がり、前方のスペースに最高のパスを流し込む。そこに黒津がトップスピードで飛び込み、最後はセンターバック2人を見事な足技でかわすと、そのまま右足でゴールに流し込んだ。ドウグラスの守備の特長、黒津のスピードという2つの特長が繋ぎ合った最高のゴールで勝ち越す。その後、山形は前線に人数を掛けるとともに、ワイドな攻撃を繰り返し横浜FCゴール前に迫るが、横浜FCはその攻撃を凌ぎきり、2-1で勝利を収めた。

攻撃的選手のゴールが望まれていた横浜FCにとって、小野瀬康介、黒津勝の2人が得点を挙げたことは、連勝達成とともに大きな収穫となった。それは、チームとして意図を持ったプレーと個々の選手の特長をつなぎ合わせてゴールを陥れるようになったことの証明だ。キャプテン寺田は「練習で11人で描いている絵が、試合の中で出せるようになっている」と振り返ったが、この4試合で守備についてチームで得た自信が、ゴールへの道筋という点でも形を見せ始めたのではないだろうか。この2連勝とも、失点の後に反発力を見せて逆転や勝ち越しを決めている。安英学が強調する「助け合うプレー」が随所に見えはじめており、今後その部分をさらに強固にできれば、さらに勝点を積み上げていけるだろう。三ツ沢での山形線の勝利は2006年以来。長く超えられなかった壁を1枚超えることができた。

一方の山形は、勝点は落としたものの、開幕3試合で見せた攻撃のリズムは随所に見せつけた。横浜FCのシュート5本コーナーキック3本に対して、12本のシュートと6本のコーナーキックは、山形のほうが攻撃では上回っていたことを示している。石崎監督は「攻めている時のバランスの悪さ」を課題の1つに挙げたが、内容で上回る中で勝点を積み重ねていくための細かな修正が重要となる。

冒頭に書いたように、両チームの特長はピッチの上に充分に表現された好ゲームだった。次節以降に、この特長を継続して表現できれば間違いなく上位に来る確信は見えた試合だった。

以上

2014.03.23 Reported by 松尾真一郎