この日は、完全にホームチームのためのゲームだった。札幌は13分に砂川誠からの絶妙なパスを受けた内村圭宏が巧みに流し込んで先制。21分には同じく砂川の左CKを内村が頭で決める。28分にもPKの跳ね返りを上原慎也が押し込んで、前半30分までに3−0のスコアにしてしまった。時間はまだ60分以上も残っていたが、基本的にはこの時点で勝敗はほぼ決したと言っていいだろう。
「早い時間帯に前の選手が得点を取ってくれたので〜」と札幌の守備陣が感謝すれば、「早い時間に失点をしていなければ…」と北九州の選手が口々に発する。開始早々に生まれた先制点はホームチームを一気に勢いづかせ、アウェイチームにはあまりにも大きなダメージを与えたということだ。
「無失点のまま試合を進めていくことが狙いでもあった」とGK大谷幸輝が振り返ったように、堅い守備をベースとする北九州はアウェイゲームということもあり、スコアレスのままゲームを進め、どこかのタイミングでカウンターから得点を狙うプランがあった様子。そうしたチームが早々に得点を奪われたとあっては、やはり展開は厳しくなってしまう。
そうした中で試合を総括していくと、札幌アタッカー陣のアイデアが存分に発揮された試合だと言えるだろう。そしてその中心となったのが2アシストの砂川だ。左MFがオリジナルポジションながらも、積極的にインサイドさらには中盤の底へと顔を出してはボールをピックアップ。この選手が中盤で前後左右、巧みにパスを配球してタメを作ることでDFラインも高く押し上げることができ、加えて内村の持ち味である鋭い飛び出しも引き出した。得点こそなかったものの、この試合での砂川のプレークオリティは見事なもの。そして砂川を中心として、内村、前田俊介との連係から繰り出すアタッキングはアイデアも豊富で破壊力も十分。非常に見応えがあった。
しかし、だからこそ考えていきたい部分もある。この試合、早い時間に先制点を奪った札幌が北九州を圧倒し、ホームで難なく勝点3を得た。ただし得点シーンを見ていくと、素早いリスタートからのショートカウンターからのものと、CK、PKからの流れというもの。今シーズンの札幌は相手に守備ブロックを作られても、それを崩していけるチームを目指してトレーニングを重ねており、奇しくもこの日の相手は昨シーズンの最終節に堅い守備網で攻撃を封じられ、「J1昇格プレーオフ」への進出を阻まれた北九州。ある意味では、どれだけチーム力が高まったかを計れる場面ではあったが、「決定機は少なかった」と財前恵一監督が評したように、非常に厳しい言い方をすれば、この試合では相手の守備ブロックを崩して得点を奪えてはいない。
もちろん、だからこそ1点目のように素早いショートカウンターというのは貴重なプレーだったし、リスタートを利用して加点したことも素晴らしい。ただし、目指しているものが「守備ブロックを崩せる攻撃」であるならば、まだまだこの試合の結果をもってして、その成果が十分に出ているとは言えない。その意味ではこの試合では、まずは無失点で試合を終えたディフェンス面のほうを高く評価するべきなのかもしれない。
3−0で勝利したチームに対してのレポートとしてはあまりにも厳しいかもしれないが、大勝したホームチームを手放しで賞賛してしまうのは簡単なので、敢えてこうした内容になったということを札幌のファンの方にはご理解いただきたい。リーグ戦はまだ4節を終えたばかりだし、あくまでも高い要求をしてみたまでである。加えて言うならば、2点目を呼び込んだCKは、後方からしっかりとパスをつないで攻撃を組み立てて得たものなわけで、トレーニングの成果は出つつあることも記しておきたい。そしてホームゲームで完封勝利をしたのだから、結果の部分としてはこれ以上のものもないだろう。
一方で敗れた北九州についてだが、0−3という大差で敗れてしまったものの、何人もの選手が口にしたように、先制点を与えずに時計を進めることができていたならば試合展開は大きく違っていたかもしれない。「1点目の部分は攻守の切り替えという、基本的なところなので、すぐに修正できるはず」と風間宏希が話したように、残念ながら大敗のきっかけとなってしまった失点ではあるが、これを契機にしっかりとした修正ができるのであれば、大敗のなかにも収穫アリと言えるのかもしれない。
繰り返しになるが、リーグ戦はまだ4節を終えたところ。いまはまだ、様々な課題を洗い出したり、長所を見つけ出したりする時期なはず。ここから試合を重ねていくにつれ、双方がどれだけ長所を伸ばし、課題を修正していくのか、しっかりと見ていきたいところである。
以上
2014.03.23 Reported by 斉藤宏則
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