クラブの強化部・高山明泰さんと宮崎キャンプの宿泊先のロビーでばったりお会いしたのは、開幕戦を3日後に控えた2月27日。今シーズンからスカウト専従となった高山さんは、宮崎県西都市で行われたデンソーカップチャレンジ大会視察のために山形から宮崎入りしたばかりだった。こちらはいよいよ開幕を直前に控えた石崎信弘監督へ、他の記者たちと共同で囲み取材を行う直前だったが、高山さんはチーム本体とのスタートミーティングを経ずに始まる、例年とは勝手が違うシーズンに、「開幕するという実感が沸きません」と笑っていた。
各地で大雪による被害が出ていることが報じられ、山形も大雪に見舞われていた。チームがメインに使用している2面のグラウンドは雪に埋もれたままで、使用可能になるまでの期間は毎年のように同じ施設内のサブグラウンドを使用しているが、山形を発つ直前までサブグラウンドの雪かきをしてきたという。「除雪して全面空けてきました。だから、開幕戦が終わってチームが戻って練習できる状態です。でもこの後また積もったら…」。苦笑まじりの言葉が続いた。「それはわかりません」。
開幕戦後、3月4日のオフをはさんで5日には早速、サブグラウンドの雪かきが必要な状況となった。石崎信弘監督をはじめとするコーチングスタッフやチームスタッフ、強化部、フロントスタッフが動員された。その中にはあの高山さんの姿もあった。現場に居合わせた見学のサポーターやメディア関係者の協力も得て、先にグラウンドの外周を除雪。選手がそこを走っている間に、午後練習のために必要なスペースで雪を取り除いた。
翌6日以降も雪の予報が続いていたため、クラブは雪かきボランティアを事前に募ることにした。午前10時開始の練習に備えて、作業は午前8時にスタート。6日は全面空けた。より積雪が心配された7日には万が一に備えて他県に代替練習場を確保し、移動用のバスも手配もした。コート半面プラスアルファのスペースを確保して練習が決行された。
NDスタの雪かきも呼びかけていた週末の8日、9日には多くのサポーターの協力を得て、サブグラウンドも順調に除雪完了。午前中の練習を終えたチームは札幌へ向けて出発した。『J2白書2013』で「ベストサポート賞」を受賞した山形サポーターのチーム愛はここでも発揮された。
開幕戦を終えたチームが長いキャンプから戻り、ホーム開幕戦を迎えるまでのこの時期の積雪は、山形では珍しいことではない。ただ、例年であればどこかのタイミングで大量の雪が一気に積もることはあっても、それを除雪してしまえば新たに積もることはほとんどなかった。しかし今年、一度の積雪量こそ多くはないものの、夜が明けるとグラウンドが一面白く覆われ、雪かき作業が必要な日が連日続いた。
6日には練習中に吹雪いて視界が塞がれ、結局トレーニングは続行されたが、石崎監督が「怪我が怖いし、いつやめようかと思った」という状況に陥った。札幌戦翌日の10日にはやはり雪かきボランティアを呼びかけてグラウンドを空けたが、悪天候の新潟から対戦相手が出発できなくなりトレーニングゲームはキャンセルになった。そうしたトレーニングへの直接の影響以外にも、連日2時間程度が雪かきという他のクラブではほとんど必要のない作業に費やされることで、時間的なロスや肉体的・精神的疲労も各スタッフの中には積み重なっているはずだ。厳しい状況には違いないが、こうしてクラブとしてのたくましさが身についていくのかもしれない。
再びオフが明けて3月12日は、久しぶりに気温が0度を下回らない朝だった。体感では寒さが緩んだことがはっきりと感じられた。その代わり、サブグラウンドに積もった雪はたっぷりと水分を含む重い雪に変わっていた。(つづく)
以上
2014.03.17 Reported by 佐藤円
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