キックオフからアクセル全開だった。ハイプレッシャーを仕掛け、奪えばすかさずアタックに転じる。攻守に躍動し、ハーフタイムを待たずに先制すると、ゲーム終盤にも追加点を重ね3−0で勝利した。「守備はもちろん攻撃の部分でもっと貢献しなければ」開幕戦を終えて口にした課題をさっそく結果に示した宇佐美宏和のJ初ゴールに始まり、武富孝介が続き、丸山祐市も宇佐美と同じくJ初ゴールをフリーキックで仕留めてみせた。「1−0で守り切る試合にならず、前に行こうとするエネルギーを最後まで失わなかった」曹貴裁監督がそう振り返った前節の長崎戦は、湘南にとってひとつの道しるべとなるだろう。

個々にはしかし、反省や課題が口を突く。たとえば初先発の岡田翔平は、「チームが勝てたことが一番よかった」としながら、「もっとシュートを打ちに行けた場面もあったと思うし、課題は多かったです」と自省に触れた。序盤には宇佐美のクロスに飛び込み、ネットを揺らしたもののオフサイドとなる惜しいシーンも演出していた。ゴールを欲する気持ちが動き出しの一瞬を早めたのかもしれない。「ちょっとのところでゴールになるかならないかが決まってくることをすごく感じました。難しいと思うんですけど、そのちょっとのところを突き詰めていきたい」。

先制点のきっかけとなるクロスを送った三竿雄斗も、「高い位置でどんどんボールを受けなければ自分のよさは出ないと思っていたので」と意図を語りつつ、「まだまだ精度が低い。もっといい球を上げられると思うし、守備についても縦に行かれてしまったシーンがありました。そういう隙をなくさなければいけない」と反省は尽きない。「2試合勝ちましたが、自分が勝利に貢献できたとは思っていないので、今度試合に出られたら自分が勝利に貢献できたと言えるように、守備も攻撃もどんどん積極的にやっていきたいと思います」。

「満足している選手はいないので、ほんとうにいい緊張感、いい雰囲気でやれています」GK秋元陽太がふと口にした言葉がシンクロする。その秋元は今節迎える札幌について、愛媛に在籍した昨季の記憶を踏まえて語る。
「札幌にはいいキッカーに背の高い選手もいる。セットプレーはひとつの鍵になると思います。カウンターにも気を付けなければいけない。攻めているときのリスクマネジメントなど、基本的なことが大事だと思います」

実際、札幌は開幕戦で砂川誠がフリーキックを沈め、1−0で磐田を降した。ホームに山形を迎えた前節は、前田俊介の巧みなゴールで先制するも追いつかれ、勝点1ずつを分け合った。終盤には危険な場面もあったが、かたやゴール前に内村圭宏が抜け出すなどゴールシーン以外にも一瞬の隙を逃さぬプレーが随所に示されていた。

財前恵一監督とは同学年でS級も同期という曹監督は、一戦を前に語っている。「札幌は若い選手も多く、いいチームだなと思っていました。ただ、いつも言いますが、どの試合でも我々のエネルギーを出せるようにしていかなければいけない。相手にとって危険なプレーを続けていかなければならないし、そのためのメンバーを選んでいきたい。チャレンジして頑張ります」。札幌育ちの藤田征也も先日加入した。指揮官が目を細めるほどに各々が自分に矢印を向ける日々、メンバーを含めて注目したい。

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2014.03.15 Reported by 隈元大吾