新風は確かに吹き始めている。ただ、相手をなぎ倒すまでに至っていない、いまだそよ風だ。山形がアウェイ2連戦で獲得した勝点は1。ホーム開幕戦を今季初勝利のステージにできれば、その勢力を増し順位表を一気に駆け上がるだけのポテンシャルはある。迎え撃つ相手は、ホームで2連勝し首位に立つ岐阜。敵地でも勝利を挙げてスタートダッシュをさらに加速させることができるか。
昨年11月24日以来のホームゲームを迎えるNDスタは2週にわたるサポーターの除雪作業もあり、開催準備が整えられている。そして練習に使用するグラウンドも連日の雪に見舞われた。こちらもサポーターの協力も得て、グラウンドでのトレーニングが積雪でキャンセルされることはなかった。スペースの都合や0度をわずかに上回る低い気温で予定していたトレーニングが十分だったとは言い切れないが、石崎信弘監督は「どうしても雪国の環境というものがある。自分たちはその環境でしっかりトレーニングをやっていかなきゃいけないと思っているので、そこを言い訳にはしたくない」とできる限りのことを実践してきた。
攻守の切り換えの早さは、今シーズンの山形最大の魅力としてすでに片鱗以上のものが表現されている。シュート数は湘南戦では13対7、札幌戦では16対10と昇格レースに絡むであろう相手との2試合で大きく上回り、ボールを支配する時間帯もそれなりにあった。にもかかわらず、得点が前節の札幌戦で挙げたディエゴの1得点にとどまっているのは、やはりフィニッシュとその周辺の精度に原因を見る必要がある。開幕戦でシュート0に終わった萬代宏樹が前節ではポスト直撃のシュートを放ち、結果としてディエゴのゴールをアシストしているのは一定の改善の跡と見ていいが、その一方で、サイドハーフでプレーする中島裕希や伊東俊、山崎雅人のシュート数が極端に少ないのは噛み合わせのぎこちなさを表している。ゴール前を固める相手を中央から崩そうとする強引さは観る者のテンションを確かに上げるが、そこからゴールを奪うためには、余裕や落ち着き、柔軟性といった別の要素も加えたい。
岐阜は監督を含む大型補強という現実を周囲の熱気が大きく超えたことで、話題性が先行した感は否めない。しかし今、話題性は勢いを生み、勢いは勝点3に変換され、その勝点3が自信となってチームの実体を太くする相乗効果が生み出されつつある。昨シーズン21位のクラブゆえ、今シーズンの大変身の評価をわずか2試合で下すのは時期尚早だが、今節の山形、次節・湘南といったJ1経験クラブを倒していくことで、ダークホースから昇格の本命へと一気に走り出す可能性はある。ラモス瑠偉監督も「毎試合、毎試合が私たちにとって決勝戦」と位置づけ、「今こうしてマスコミが多く取り上げてくれて、J2の中で盛り上がっているのは間違いなく岐阜。上を目指すチームはそこに耐えられないといけない」と追い風を成長につなげる意欲を隠さない。
ここまで3得点ずつ計6得点はリーグトップ。そのうち、オウンゴールも含めると4得点がセットプレーで挙げたもので、前半30分台に難波宏明が先制点、後半に入り50分台に追加点を挙げるパターンは1、2戦とも同じ。さらに、2トップと絶妙に絡みながらプレーする高地系治が高い技術で試合を決定づける3点目を60分台に奪っている点も共通している。2試合ともシュート数では相手を下回り、爆発的な攻撃力を発揮しての3得点というイメージではない。先発11人の平均年齢は30歳オーバー。経験値の高さを前面に出しながら、勝負どころと見た場面では確実にモノにするしたたかさがある。今節にあたり気がかりなのは、前節で左足を負傷し途中交代となった三都主の状態だ。
セットプレーの攻防が試合を大きく左右することは間違いないが、見どころはそれだけではない。攻撃で縦の速さを持ち、守備でもアグレッシブさを追求する両チームの対戦は、互いの攻守が心地よく噛み合いスウィングする展開よりも、激しい潰し合いのなか、一発で決定機に結びつくスリリングな展開になる傾向が強い。
ボールを失った瞬間から守備に移る山形は敵陣で取り返すのが理想だ。ただし、出どころに制限をかけることができずにボールを逃がせば、身体能力が高く空中戦に強いナザリトをターゲットとするロングボールが飛び、裏へ飛び出す難波や近くでサポートする高地が一気にシュート態勢を整えることになる。GK清水健太は「前がかりにプレーするサッカーをめざしているところがあるので、そこでのリスク管理がとても難しい。どうしても広いスペースが自陣に残っているので、そこをカバーしていく作業は簡単ではないが、なんとかやっていきたい」と話す。
2試合で1失点と安定した試合運びを実現している岐阜も、守備に切り換わったあとは中盤のプレスバックが効き、早い段階で相手の攻撃を潰したり遅らせることができている。避けたいのは、萬代宏樹や中島裕希らの飛び出しを恐れてラインを必要以上に下げ、ディエゴや伊東俊など中盤の選手が自由にプレーするスペースを与えることだ。その一方で、安易にボールに食いつき過ぎれば開幕・讃岐戦のようにサイドを突かれ無数のクロスを浴びることになる。そして時間帯によっては長く押し込まれる展開も予測できるが、山形の速いパス回しとスペースへの飛び出しにどれだけ集中力高く対応できるかも結果に直結する。
長く雪に覆われ今週ようやく顔を出したばかりのNDスタのピッチは、当日の雨予報も重なり、緩い状況が予想される。技術は制限され、スタミナの消耗も早い。それを気持ちでどこまで補えるかも含めて、チーム、個人のあらゆる現在地が問われるコンディションとなりそうだ。ホームで今季初勝利をめざして戦う山形の選手たちを、「ブルーサポータープロジェクト」で青く染まったスタジアムが後押しする。
以上
2014.03.15 Reported by 佐藤円
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