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【J2日記】磐田:大きなボールと、小さなボール。(14.03.07)

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主力組がピッチサイドで“青空ミーティング”を行った

坂道の上に、大小2つのボールがある。巨大な岩石と、小石のようなイメージでいい。この2つを同時に転がす。坂道の下へ先にゴールするのは、どちらか――。

今季より磐田を指揮するシャムスカ監督が好む、『チーム作り』に関する例え話である。
スタートと同時に一気に加速し、勢いよく転がり始めるのは小さなボールである。小さく、軽いがゆえに初動にそれほど大きなパワーを必要としない。一方、出遅れるのは大きなボールだ。大きく、重いがゆえに動き始めるまでにより長い時間とより多くの労力を要する。その差は広がるばかりだ。だが、一度動けば、加速力に勝るのは大きなボールである。猛スピードで坂道を一気に転がる。その勢いを止めることはだれにもできない。先にゴールしたのは――。
ボールの大きさは『困難』の大きさを表す。つまり、『困難』は大きければ大きいほど、乗り越えた時に強いパワーを生み出す――。これはシャムスカ監督が大分時代によく用いた表現だそうだが、磐田にもよくあてはまる。磐田という大きなボールは昨季、その動きをぴたりと止めてしまった――。

屈辱的なシーズンだった。昨季J1でわずかに4勝。勝点23の17位でクラブ史上初のJ2という失意を味わうことになった。だが、戦力や強化費で15位・甲府を、16位・湘南を下回るチームだったのだろうか。昨季は神戸より日本代表・伊野波雅彦を獲得。同じく代表経験のある前田遼一、駒野友一、川口能活(現・岐阜)、山田大記と共にチームの中心となった。また、12年のロンドンオリンピックにU-23韓国代表として出場したチョン ウヨン(現・神戸)も補強。同代表のチームメイト・ペク ソンドンとのコンビを期待された。
だが、キャリアのある選手が集まり、巨大化したボールの動きは重く、坂道の途中でつまづくことになる。あるいは、スタート地点から動いてすらいなかったのかもしれない。監督就任2年目の森下仁志氏(現・京都コーチ)、さらにはロンドンオリンピックでU-23日本代表をベスト4へ導いた関塚隆氏をもってしても流れを変えることはできなかった。

このオフは主力の流出を最小限にとどめ、松井大輔という新戦力を獲得。けしてJ2を軽視しているわけではないが、戦力・強化費を他のJ2クラブと比較すれば、やはり磐田は『大きなボール』である。無論、だからと言って2年でのJ1復帰を確約されているわけではない。事実、3月2日の開幕戦では複数のけが人を抱えた札幌に0-1で敗れた。
やや強がりにも聞こえたが、シャムスカ監督の「望む結果ではなかったが、ポジティブな面もあった」という認識は間違いではない。磐田は札幌の5本を大きく上回る17本ものシュートを打ち、数多くの決定機を作った。序盤のチャンスを決めていれば、4、5つのゴールが生まれていてもおかしくない展開であり、この点では過度に悲観する必要はないだろう。だが、『内容はよくとも結果が出ない』という現象が昨季と重なることも事実である。

今季初黒星となった札幌戦翌日、シャムスカ監督は「選手にストレスを与えないため」との考えから主力組にあえて声をかけなかった。声をかけたのは新ゲームキャプテン・松井だった。クールダウンを終えた主力組を集め、約30分間、ピッチサイドで“青空ミーティング”を行った(※日本代表合宿のため駒野、伊野波は不在)。「ゲームの入り方などを話し合いました。もちろん負けていい試合はない。ただ、札幌戦に勝っていれば、シーズンの早い段階で修正できなかった部分もあったかもしれない。シーズンは長いので」(同選手)。後にこのミーティングを知ったシャムスカ監督は「責任感のある選手ばかりですね」と表情を緩め、選手たちをリスペクトした。「選手間で話し合おうということは常に言っています。これはたとえ話ですが、学校で一番いいクラスというのは、先生が背を向け、板書している時もしっかりと授業を受けているクラスですよね。選手たちが自主的に動いてくれた、ということです」(同監督)。

磐田にとって長丁場のJ2は未知なる戦いである。どこかで必ず『山場』が来る。それをいかに乗り越えることができるか――。
「アーベー!」。「ヤマザキー!」。今季新たにチームに加わったカルロスフィジカルコーチは、必ずと言っていいほど練習のウォーミングアップ時に阿部吉朗や山崎亮平を大声で“鼓舞”し、ムードを盛り上げている。常にハイテンションなブラジル人コーチについて「スタッフというより、選手。それくらい存在感がある(笑)」と話していたのは伊野波。スタッフの“元気印”である小林稔コーチも健在であり、総じてチームのムードは明るくなったように見える。経験があり、バランスの取れる松井の加入で“風通し”もよくなった。
ただし、大事なことはこの雰囲気をいつまで持続できるか、だ。“弱者のメンタリティー”はそう簡単に払拭されるものではない。昨季“どん底”を味わったチーム、選手が本質的な意味で変わることができなければ…。

止まったボールは今、少しずつではあるが、動き出そうとしているのかもしれない。あるいはそう『見えるだけ』なのか――。いずれにせよ、この1年、その動向を追い続けていきたいと思う。目指すゴールは1年でのJ1復帰であり、その先にあるJ1優勝である。

以上

2014.03.07 Reported by 南間健治
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