「去年は初めての国立で、自分でも何をしているか分からなかった」と振り返るのはDF高橋壮也(立正大淞南高)。2年連続で高校選抜に選ばれ、今年からサンフレッチェ広島でプレーする彼は、昨年のNEXT GENERATION MATCHで味わった悔しさを無駄にしなかった。そしてその想い、経験を仲間と共有していた。「昨日から『絶対に勝つ』と言うのを、とにかくずっと言っていた」(高橋)。
日本高校サッカー選抜の主将を務めるMF寺村介(星稜高)も「(高橋には)試合の入りが悪かったという反省があって、今年はしっかり…と言っていた」と振り返る。4戦未勝利の屈辱を晴らし、歴史を変える。そのためにまず立ち上がりで流れをつかむ−−。高校選抜はそんな想いで試合前から結束していた。
かくして高校選抜が、開始直後から試合の主導権を握る。7分には寺村のパスカットから、MF松田天馬(東福岡高)が枠を捉えるシュート。11分にも寺村がドリブルでエリア内に切れ込むなど、可能性を感じさせるプレーが続く。
ビューティフルゴールが生まれたのは19分だった。左SB竹澤昂樹(富山第一高)が得意の左足で縦にフィードを送る。絶好のタイミングでDFのギャップに走り込み、浮き球を右足でコントロールしたのは、1トップに入っていたFW木戸皓貴(東福岡高)。13年度の高円宮杯プレミアリーグWESTでは得点ランク2位と、Jリーグの育成組織からも得点を重ねていたストライカーが、その本領を見せつけた。「いいボールが来て、トラップもいい感じにできた。ベストゴールじゃないかと思う」(木戸)という左足ボレーがネットを揺らし、高校選抜が先制する。
U-18 Jリーグ選抜の左サイドバック山口真司は「(DFライン同士が)遠慮と言うか、なあなあになっている感じがあった」と反省の弁を述べる。Jリーグ選抜は時折、最終ラインにズレが出てしまっていた。攻撃も横山航河、北川航也、奥川雅也と個の勝負に強みを持つ3トップを擁していたが、ボールを上手く動かせず、いい位置にボールを打ち込めない。高校選抜の技量と結束があったにせよ、Jリーグ選抜は「センターフォワードへ入った時に周りがいなくて、相手の方が囲むのが早かった」(山口)という状況に陥っていた。かくして前半35分は、高校選抜が1点のリードで折り返す。
後半に入るとJリーグ選抜は持ち直しを見せる。「中盤のポジショニングの距離感が遠い」という野田知監督の指摘もあり、攻守のバランスを修正。前からのプレスもかかるようになり、高校選抜はほとんどチャンスが作れなくなる。それでもしばらく「ボールを保持するサッカーはできたかもしれないけど、なかなか前に進むことができない」(中井英人)というもどかしい展開は続いたが、最後の5分でJリーグ選抜が一気のラッシュを見せる。
後半34分には、FW加藤陸次樹(広島)のポストプレーから、FW米澤令衣(神戸)がゴール左脇でフリーの絶好機。ここは米澤の打つタイミングが遅れて、相手に寄せられてしまう。37分にも奥川の突破から、MF和田昌士(横浜FM)がフリーでシュート。これは枠の上に吹かしてしまった。更に38分、奥川の右クロスから、米澤がフリーでヘッドを放つ。しかし高校選抜の右SB高橋は中にしっかり絞り、ゴール内をカバーしていた。彼が今季から加入する広島のサポーターを背に、1点モノのクリアを披露する。
試合は1−0でタイムアップのときを迎えた。「最後は全員が引いて、死に物狂いで守る感じだった。みんなが身体を張っていましたし、魂を見せられたんじゃないですかね?」と高橋は“国立最蹴章”の70分を振り返る。日本高校サッカー選抜が5度目のライバル対決で挙げた、歴史的初勝利だった。
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