12月29日(日)第93回天皇杯 準決勝 横浜FM vs 鳥栖(13:05KICK OFF/日産ス)
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対戦相手は鳥栖だけじゃない。もう一つの強大な敵がいる。それは“準決勝の魔物”である。
一昨年の天皇杯・準決勝ではJ2の京都に延長戦の激闘の末、2−4で苦杯をなめた。昨年は同じくベスト4で柏と対戦し、相手のロングボール攻勢に屈し、0−1で敗退。さらにさかのぼると、08年度大会も優勝したG大阪と準決勝で延長戦まで戦い、0−1と敗れている。
もっと言えば、今年のヤマザキナビスコカップでも4強まで進みながら柏の軍門に降った。同カップ戦では05〜07年に3年連続ベスト4敗退。09年にも川崎Fに敗れ、決勝の舞台に足を踏み入れることができなかったのだ。これら近年の準決勝で敗れた回数、計7回…。準決勝の魔物にとことん苦しめられた歴史がある。当然、選手たちもそれを意識。富澤清太郎は「毎年、準決勝の壁にぶち当たっている。F・マリノスを愛する皆さんとともに、その壁を破り、頂点をめざしたい」とキッパリ。今度こそ魔物狩りに成功し、負のレッテルを引き剥がすことができるだろうか。
どうしても気になるのは、優勝を逃したリーグ戦ラスト2連敗のショック。22日の準々決勝・大分戦で決勝点を挙げた富澤は試合後、浮かない表情で、“切り替え”の難しさを吐露した。
「タイトルが懸かったリーグ戦を戦ってきて、各々が集中力やいろんなものをピークに持っていって戦って終わった。そのあと2週間空いたが、その時間の間隔は、あるようでないような難しいところだった。もう一度(天皇杯に向けて)いろいろ上げていかなければいけないことは、分かっていても、体と頭はどうしてもすぐに一致しない」
それは燃え尽き症候群的な症状なのかもしれない。力を入れようと思っても、なぜか力が入らない――。そんな状態に陥ったのが、先の大分戦だったのではないか。試合中は珍しくパスミスが散見された。自慢の堅守も効力を発揮できず、決定機の数では相手のほうが多かった。前半14分のビッグセーブをはじめとする榎本哲也の好守の連発、延長前半12分に相手FWがゴール前でフリーになった大ピンチを、懸命なスライディングタックルで何とか食らい付いて防いだ40歳・ドゥトラの献身がなければ、結果は違ったものになってもおかしくなかっただろう。それほど、結果以外に得るものが少ないゲームだった。ただ、結果が残せたことが一番大きい。ドゥトラはこう言う。
「リーグ戦が終わって、最初の試合だったので、ある意味、一つの試練となる試合でした。優勝を逃した悔しさを乗り越えることができた」。
その証左を本拠で戦える準決勝で示し、本来の姿を取り戻すことができれば、元日の「国立行き」のチケットを手にする可能性が脹らむ。
期待せずにはいらないのは、退団したマルキーニョスの穴を埋めようと励むアタッカー、藤田祥史だ。準々決勝では1トップを張り、ポストプレーは安定した一方、前戦で孤立する場面も。久々に先発入りしたため、周りの選手と呼吸を合わせる難しさも正直に打ち明けていた。それでも今の横浜FMに本格派FWは彼しかいない。否が応でもかかる期待の重圧を振り払うには、「点を取ることが一番」(藤田)である。
以上
2013.12.28 Reported by 小林智明(インサイド)
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