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【第93回天皇杯 準々決勝 仙台 vs F東京】レポート:120分間の大活劇はF東京が幕を引く。勝者と敗者、熱戦を演じたすべての登場人物に拍手を(13.12.23)

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フットボールに於いて、立ち上がりの時間帯と終了間際の時間帯のゴールは実に劇的だ。仙台とF東京がユアテックスタジアム仙台で激突したこの一戦では、その2つの時間にゴールが生まれ、終了間際の時間帯を2度モノにしたF東京が勝利、準決勝進出を果たした。

劇場の幕を開けたのは仙台の方だった。開始3分、太田吉彰のクロスを皮切りに、梁勇基がファーサイドからシュート。これが阻まれても赤嶺真吾がボールを広い、再び梁に託す。ここからのボールも止められたが、こぼれ球を今度はウイルソンがシュート。コースを消し続けていたF東京守備陣も、この熱い攻撃は止められなかった。
この場面に象徴されるように、この日の仙台は、特に前半に、攻守ともに鋭い出足を見せていた。角田誠が中央に、菅井直樹と石川直樹が両サイドに復帰し、J1最終節にF東京に敗れてからの2週間で距離感などを修正。「集中して試合をできていたし、戦術も正確にできていて、奪ってから出ていくスピードもありました」(渡辺広大)。この6年間、手倉森誠監督が積み上げてきた組織力を、ユアテックスタジアム仙台にこの日も詰めかけたサポーターの声援に後押しされ、発揮した。

後半はF東京が石川直宏の突破力、平山相太の高さとポジショニングで仙台を揺さぶったものの、決定機はまだ仙台の方が多かった。しかし「攻めながら1点を取れなかったのは、今季を象徴していた」と梁を初め多くの選手が振り返ったように、決定機での追加点が取れなかった。ウイルソンが腰痛で交代を余儀なくされたのは痛かったが、代わって投入された中原貴之の高さやクロスへの反応を生かして攻めるかたちはできていた。1-0からスコアが動かないまま、試合はアディショナルタイムに突入した。

手倉森監督は、ここで逃げ切る采配ができなかったことを試合後に反省した。天皇杯4回戦では1点を守り抜くために、アディショナルタイムに守備固めの選手交代をおこなったが、「何で今日は1分遅らせてしまったのか、ということが非常に残念」と自らを責めた。
そこでF東京が終盤の時間帯を制し、クライマックスの主役となった。ランコ ・ポポヴィッチ監督が「こういう試合で必ず結果を出すと思っていた」と、3人目の交代選手として投入したのは、林容平。前線の選手たちに呼応したランニングでジワジワと仙台守備陣を追い込み、後半も終了間際に仙台ゴール正面でFKを獲得。これを名手・太田宏介が冷静に蹴りこみ、試合は延長戦にもつれ込んだ。

ある時は1対1、ある時は多対多の見応えある激突が続いたこの劇場に、幕を引くのはどちらか。どちらであってもおかしくないなか、延長戦も終わろうとしていた。F東京の右サイドをえぐった石川が、ゴールラインのわずか手前からクロスを送る。それは相手のGKもセンターバックもすり抜けて、ゴール前のスペースに流れる。そこへ誰より早くコンタクトした林容平が、決勝点を奪い取った。仙台は残り数十秒に駆けてほとんどの選手をハーフウェイラインからスタートさせて次のキックオフをおこなったが、ゴールには及ばずタイムアップとなった。
F東京にとって喜劇の、仙台にとって悲劇の幕は、こうして閉じた。

勝負事であり、しかもノックアウト形式であればなおのこと、悲喜は大きく分かれる。しかし喜劇でも悲劇でも、その日のスタジアムにいた者たちは、みんなが大事な劇の登場人物だった。カーテンコールにあたる試合後の光景が、それを物語っていた。
F東京。この試合のピッチに歴戦のベテランである背番号49は立てなかったが、新しい時代を作る背番号23が、準決勝への道を切り開いた。2得点にからんだ林は「シャーを夢見ていた」と、試合後の勝利の儀式で大いに喜んだ。
仙台。「まだ信じられない気持ちでいっぱい」という言葉で記者会見を切り出した手倉森監督にとっては、これが仙台で指揮を執る最後の試合となった。監督としてチームを率いたこの6年だけをとっても、J1・J2入れ替え戦、J2優勝、J1残留、東日本大震災からの復興、J1優勝争い、ACL…信じられないほど多くのことを経験してきた。試合後に、松下年宏、田村直也、越後雄太といった去りゆく選手たちとともにサポーターからコールを受けた名物監督が、仙台を去る。「監督がいなくなってベガルタ仙台が弱くなったとは言われたくないので、もっともっと努力していいチームを作りたい」。渡辺の言葉に象徴されるように、次の年に喜劇を演じられるように、残された者たちは稽古を続けていく。

以上

2013.12.23 Reported by 板垣晴朗
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