12月22日(日)第93回天皇杯 準々決勝 広島 vs 甲府(13:00KICK OFF/Eスタ)
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広島にとって屈辱的、甲府にとっては狙い通り。明暗がくっきりと分かれた真夏の小瀬決戦から、約4ヶ月の月日が流れた。J1第23節における対甲府戦での敗戦は、連覇を果たした広島にとっては危うく致命傷になりかねなかったほどの痛手だったのだ。
セットプレーで先制され、強烈なミドルで追加点。クサビが入ってもまるで連動できず、大きな展開もほとんど見られずに、広島が放ったシュートはわずか6本。前線から激しくプレスを仕掛けるパトリックをスタートラインとする甲府の堅守を崩せないだけでなく、球際で上回られてボールを奪われ、何度もカウンターを食らった。スコアこそ2−0だったが、もっと大差がついてもおかしくなかったこの敗戦をきっかけに、広島は3連敗と大きく崩れた。何とか立て直しに成功した粘りは賞賛されるべきだが、そのまま坂道を転がり落ちても決しておかしくなかったのだ。
一方の甲府は、広島戦完勝の原動力となった守備の安定をそのまま持続し、以降の11試合で8失点・5試合完封を記録。鹿島には3−0と完勝し、浦和・横浜FMとも引き分けるなど、甲府の躍動が優勝争いの混迷化に大きく寄与したと言っていい。後半戦17試合での敗戦数4は「後半戦首位」の新潟やC大阪と並んでリーグトップ。リーグ1位のシーズン13引き分けのうち7試合を勝利していれば、勝点は51まで跳ね上がって賞金圏内も狙える位置に浮上しただろう。リーグ最少の0.88得点/1試合平均という攻撃の不振を補った守備力が本物であることは、最後の3試合を全て完封で終えたことで立証された。
甲府にとって不安があるとすれば、堅守を支えてきたリベロ・山本英臣やベテラン土屋征夫が負傷のため、広島戦出場が難しいこと。ただ、リベロに佐々木翔をあてて行ったトレーニングでも組織としてはうまく機能しているようで、大きな破綻はなさそうだ。ボランチも、広島戦で見事な活躍を見せた伊東輝悦や保坂一成ではなく、若い新井涼平がマルキーニョス パラナとコンビを組む可能性が高いが、このコンビはリーグ最後の2試合で完封という結果を出しており、不安はない。特に新井は高卒1年目の2009年、広島ビッグアーチ(現エディオンスタジアム広島)で大宮の一員として広島と対戦した経験を持つ。この時はアグレッシブな守備で勝利に貢献しいるだけに、自信を持ってピッチに立てるはずだ。
もちろん、小瀬で完敗した甲府に対してのリスペクトを、広島の選手たちは欠かさない。「彼らの守備はとてもタイトだ。我慢強いし、カウンターも鋭い」とはミキッチのコメント。高萩洋次郎は「とにかく粘り強い。しっかりと準備していないと、難しい試合になる」と最大級の警戒。青山敏弘にいたっては、「小瀬での彼らに勝つのは難しい。今回、ウチのホームで試合ができることは大きいと思う」とまで語った。
出場停止のファン ソッコを除き、ほぼベストな布陣を組んでホームで戦えることは大きなアドバンテージだが、それで勝利が約束されたわけではない。Jリーグが開幕した1993年以降の20年間、リーグと天皇杯の「ダブル」を手にしたのは、2000年・2007年の鹿島と2006年の浦和だけ。特にベスト8はリーグ王者には鬼門で、過去9チームがこの準々決勝で敗退している。小瀬での痛みだけでなく、そういうジンクスもまた、広島にとっては重い。
ただ、その「負のデータ」がネガティブな方向に向かうのではなく、むしろ想いを燃やすエネルギー剤として投下される状況ではある。1万3000人を集めた優勝報告会から明けた今週の練習では、球際の厳しさや運動量、アイディアも含め、シーズン終盤から続くチームとしてのハイテンションを維持。ダブルという大きな目標だけでなく「引退するナカジ(中島浩司)さんに天皇杯を掲げてほしい」(佐藤寿人)という想いでチームは団結している。何より、真夏の屈辱的な敗戦に対するリベンジの機会を与えられたことが、選手たちの闘志をさらにかきたてるはずだ。
「ホームではいい試合(5ー1で広島勝利)ができたけれど、小瀬では完敗。どちらの可能性もある難しい試合となる。ウチに対してはシステムも『はめて』くるだろう。だけど、僕らにとっては今季最後のホームゲーム。そこを強く意識して、まず甲府を上回るプレーを見せること。まだベスト8だし、ダブルうんぬんを意識するのは早いかもしれないけれど、目標は高く掲げたい。甲府に勝てば、チャンスは広がってくる」
選手会長・青山は力強く決意を語った。「オリジナル10」で唯一、国立で三大タイトルを勝ち取った経験のない広島にとって、視界にあるのは天皇杯で勝利することのみ。J1優勝の余韻は、既にない。
以上
2013.12.21 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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