サッカーに触れたことのある者ならば、一度は『元日の国立競技場のピッチに立ちたい・・・』と思ったことがあるだろう。それだけ、元旦のサッカーの聖地には色々なものが詰まっている。
日本3大タイトルの一つであり、1921年以来数々の名勝負・名場面を見せてくれた。
Jリーグが創設されてからは、プロフェッショナルとアマチュアが同じ舞台で戦える大会となった。
それが、天皇杯全日本サッカー選手権大会なのである。
そして、元日の国立競技場(現在の)決勝戦は、今大会が最後となる。
その決勝戦に出場できる可能性を持つのは8クラブ。予選からすべてトーナメントで戦い、“一度も負けていない”チームなのであり、この日で4チームに絞られる。
文字通り、“負けたら終わる”戦いでもある。
そんな大舞台を迎える選手の心境はどのようなものだろうか。
その場に立たないと分からないものであり、その場に立った者だけが感じることができる世界である。
観る側としては、勝手な思いを馳せながら一緒に戦っていきたいと思う。
鳥栖は、リーグ終盤に4連勝、最終節に引き分けと上り調子でリーグ戦を終えた。
前半戦では、得点もあげるが失点も喫する試合が続き、勝点が増えず下位に低迷した。
しかし、約1か月の中断期に、「それぞれがやるべきことを再認識できた」(高橋義希/鳥栖)ことで失点も減り、勝点が上積みされた。
リーグ戦で結果が出てくると、天皇杯でも3回戦で松本(10/13 松本)、4回戦ではC大阪(11/16 長居)と破り、5年ぶりのベスト8に勝ちあがってきた。
まさに、『リーグ戦の勢いそのまま・・・』の快進撃を見せている。
対する川崎Fも、リーグ終盤に持ち前の攻撃力を見せつけて3位に入った。
最終節までの4連勝で7位(第30節)から一気に順位を3位(第34節)まで上げた。
圧巻だったのは、最終節の横浜FM戦。横浜FMの優勝の目を消し、ACL出場権を得る3位に入り込んだ試合だった。
川崎Fも、『リーグ戦の勢いそのまま・・・』なのである。
この両チームの対戦は、応援しているサポーターだけでなく、サッカー好きにはたまらない試合を演じてくれる。
構図的には、『川崎Fの攻撃力と鳥栖の守備力』と言えるが、もっとサッカー通的な見方をすると、『流れを引き寄せるのは、川崎Fの攻撃スイッチか鳥栖の守備スイッチか…』と言えるだろう。
リーグ戦の得点王FW大久保嘉人やレナトにボールが入ると一気にゴールまで迫る川崎Fに対して、相手のストロングポイントを消す守備からボールを奪い、両サイドを絡めてゴールに迫る鳥栖…こんな見方も楽しんでほしい。
ポイントになりそうなのは、川崎Fの攻撃スイッチを入れるMF中村憲剛がどれだけ“高い位置でボールをコントロール”できるのかとなる。当然のごとく、鳥栖はそこに“ボールを入れさせない”守備となる。
鳥栖が、ボールホルダーに対してプレスをかけ、ボールの入り所を消すことができれば、第26節リーグ戦(9/21等々力)みたいな結果になるかもしれない。
この試合を風間八宏監督(川崎F)は、「前線の動き、それを追い越す動き、そしてパスの質がいつもよりブレてしまった。それにより、自分たちのパフォーマンスが出せなかった」と評した。
鳥栖サイドから見ると、川崎Fのストロングポイントを消したことが勝利につながったといえるだろう。
敗れるとそこで元日の国立競技場への道が閉ざされるカップ戦。
勝てば良い試合ではなく、勝たねばならない試合なのである。
カップウィナーズの称号を得るのは1チームだけである。
そのチームは、一度も負けないままその大会を終えるのである。
トーナメントの厳しさと、そこを勝ち抜いた喜びは、永遠の記録と記憶に残る。
競技規則は同じでも、リーグ戦とは違う楽しみ方ができる天皇杯全日本サッカー選手権大会。
サッカーの興業的な側面を見せてくれる大会でもある。
サッカーは一様的な見方では収まらないスポーツなのである。
以上
2013.12.21 Reported by サカクラゲン
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