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【J2:第42節 山形 vs 東京V】レポート:奥野体制の2シーズンはスコアレスドローで幕。(13.11.25)

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朝方降った雨は早くに上がり、最終節が戦われるピッチは日差しを受けて少しずつ乾いていった。共にプレーオフ進出をすでに逃したクラブ同士の対戦。山形は水曜日の天皇杯4回戦・川崎F戦で退場したキム ボムヨンが山田拓巳に代わったのみと変更が少なかったが、東京Vはバックラインに出場停止明けで金鐘必が戻ったほか、2トップには前節の高原直泰、常盤聡に代わり巻誠一郎、中島翔哉のコンビが入ったが、その2トップで相手を押し下げながら東京Vは攻撃を組み立て始める。

日曜日のG大阪戦、水曜日の川崎F戦をフルタイムやそれに近い時間戦った山形の選手たちのなかには体が重い選手もいて、アプローチのスピードや守備でのリアクションの動き、奪ってから前線に飛び出す動きなどは先の2試合と比較すると精彩を欠いた。14分、左サイドにボールを運ばれた際、前田直輝から小池純輝へのスルーパスにはプレッシャーがなく、29分に中島翔哉が右スペースで起点をつくったシーンでは中村太亮とイ ジュヨンが同時に反応し、そのギャップを前田に使われた。31分には左で起点となった小池を追い越した福井諒司がフリーでクロスを上げた。何度もオフサイドにかかりながら裏を狙う中島翔哉の動きも徐々に効いてきそうで、山形のゴールを守る常澤聡は「裏を常に7番の選手(中島翔哉)は狙ってたし、いいサイドチェンジから小池とかも来ていたし、スピード感のあるカウンターは怖かった」と振り返る。

東京Vが高い位置からプレッシャーを狙ったこともあり、山形はボランチを使った展開が少なく、攻撃の意図が噛み合わずにイージーにボールを失うシーンも目立ったが、サイドからの展開では何度か決定的なチャンスをつくっていた。オーバーラップした山田のクロスを萬代宏樹がヘッドで当てたボールがファーサイドへ流れると、それを拾った中村太がドリブルで突破してファーサイドへ上げたクロスを萬代がヘディングシュート。33分には中村太のクロスの跳ね返りを秋葉がボレーシュート。しかし、これはいずれもGK佐藤優也の好セーブに阻まれ、36分のカウンターのチャンスでも左サイドのスペースを突いたロメロ フランクの、萬代へのクロスともとれるシュートは佐藤の両手に収まっている。

「シュートチャンスがある時はどんどん打っていこう」(奥野監督)、「相手のバイタルエリアまで入ったら必ずシュートで終えて攻めきろう」(三浦監督)
両監督ともにシュートへの意識に働きかけ、前半と同じ選手をピッチに送り出した後半だったが、ペースをいち早く握ったのは山形だった。中盤でセカンドボールを拾った宮阪が持ち上がってシュートまで持ち込んだのを合図に、サイドチェンジから山田拓巳がクロス、宮阪のチェイスで得たこぼれ球を拾った中村太が中へ入リスピードに乗ってグラウンダーのシュートと相手ゴールに迫る。このプレーで得たコーナーキックではショートコーナーを使い、宮阪のクロスに山崎雅人がヘディング、GK佐藤が弾いたこぼれを最後は萬代が押し込んだが、これは山崎がオフサイドの判定でノーゴールとなった。

流れを変えたい東京Vは58分、前田に代わり高木大輔を投入するが、その2分後、競り合いのシーンで遅れて振った右足が相手を蹴ってしまい、吉野恭平が一発レッドの退場。これがこの後の試合の流れを大きく変えることになった。東京Vは中島翔哉を下げて楠美圭史をボランチに入れ、巻を1トップとする4-4-1に。はっきりと形勢された2ブロックを自陣深めに設定した。一方、山形はプレッシャーが解除されたバックラインからのビルドアップが容易になり、ボール支配率が一気に高まるなかでサイドからの攻撃で東京Vのブロックを崩しにかかる。75分には持ち上がったイから大きく右に展開し、やや遠目だったが宮阪は直接枠を狙う。こぼれれば詰めていた選手が押し込める態勢にあったが、ここはGK佐藤がしっかりとキャッチ。その直後にも、途中からピッチに入った大久保剛志が左サイドで収め、追い越した中村太のクロスに秋葉がフリーでヘディングシュートを放つなど、すでに山形のワンサイドの展開に変わっていた。

山形はここでボランチに石川竜也を投入し、先にピッチインしていた堀之内聖と最年長ボランチコンビを形成。ボールをさばいて押し込む圧力をさらに強めた。しかし、試合終盤には巻もアタッキングサードで守備に回るなど割り切ったように守る東京Vを前に、ゴール前まで迫ることはできてもゴールを割ることはできずに時間が過ぎていく。44分には攻め上がったイがロングシュート。こぼれを拾った東京Vのパスミスを突いてペナルティーエリア付近でボールをカットした中村太がシュートを放ったが枠をそれた。決定的な場面は少なくはなかったが、最後まで精度を欠いた。

90分の結末はスコアレスドロー。一人少なくなって以降、ほとんど自陣に押し込まれたままの東京Vにとっても、その東京Vゴールに迫りシュート23本を浴びせながら無得点に終わった山形にとっても、シーズン最後の試合を気持ちよく終えるエピローグとはならなかった。これが山形で指揮を執る最後の試合となった奥野僚右監督は、「アクシデントがあって、相手が退場で一人減った部分、そういった部分でもこれまで学んできたことにより、サイドから崩して得点を狙うというシーンが見受けられました」と、しっかりとボールを握り、展開してチャンスを量産した戦いを評価し、東京V・三浦泰年監督は「相手の焦れるなかでの相手のミスを狙う。そのぐらいの攻撃しか、あの状況のなかでは見いだせなかったんじゃないかなと。それを選手がしっかり把握したなかで戦ってくれたなと思っております」と攻め手が見いだせない厳しい状況を受け入れたなかで10人が共通した意識と粘り強さで守りきったことを讃えた。退場者が出た後の戦い方で、数値に表れず、しかし一朝一夕には構築できない部分を試合後の両監督が指摘していたのが印象的だった。

守備的なリアクションから攻撃的なアクションへ、大転換をはかったこの2シーズン。2年連続10位はシビアな結果だが、そのなかで育ってきた新たな可能性をさらに広げることも、J1昇格・定着を実現するために必要となる。NDスタの最終節としては希少なあたたかい日差しに包まれながら、山形の今シーズンは幕を下ろした。

以上

2013.11.25 Reported by 佐藤円
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