群馬の秋葉忠宏監督は、試合後の会見冒頭で「雨の鳥取まで、数多くのサポーターの方が残留を信じて来てくれたことに感謝していますし、残念ながら勝つことはできませんでしたが、今日の最低限のノルマ、ミッションである残留を決めることができたことを、すごくうれしく思っています」と語った。激しい雨の降る中での一戦は、J2残留争いの渦中にあった群馬が、ライバルの最下位・鳥取と敵地で引き分け。今季21位以上を確定させ、2試合を残してJ2残留を決めた。

群馬は立ち上がりから、残留への強い意欲をプレーで示した。キックオフ直後、平繁龍一がドリブルで突破を図り、いきなりペナルティエリア付近まで進んでファウルを獲得。直接FKははね返されたものの、その後も攻撃を続けた。落ち着きを取り戻せない鳥取をしり目に、左サイドからダニエル ロビーニョがドリブルで切れ込み、夛田凌輔にパス。左足を振り抜いた夛田の強烈なシュートがニアサイドを破り、ネットを揺らした。キックオフから2分が過ぎたばかり、公式記録では3分の先制ゴールだった。

「こちらは最初から、頭の中で前からいくと決めていたけど、平繁はたぶん自分たちの勢いを見て、ドリブルで仕掛けてきた。気合いが空回りした感じでもあったし、軽いプレーでした」と振り返ったのは、平繁にドリブルで中央を割られた武田英二郎。一度も自陣から抜け出せないまま失点した鳥取は、その武田のリスタートからのキックなどで反撃に転じる。前半終了間際のアディショナルタイムには、右サイド奥からのFKを武田が中央へ。群馬DF小柳達司がクリアし切れず、頭に当たって後方に流れたボールが、そのままネットに吸い込まれるオウンゴールとなって同点とした。

迎えた後半も、キックオフ直後は群馬のペースだった。ゴール前までボールを運び、最後はダニエル ロビーニョがドリブル突破から強烈なシュートを放つ。惜しくも左に外れたものの、嫌な時間帯に追い付かれた群馬が、勢いを取り戻すきっかけになるかと思われた。しかし、後半の群馬のシュートは結局、この1本だけで、その後は鳥取に押し込まれる苦しい時間帯が続いた。

鳥取は後半から布陣を3―4―3に変更。左サイドバックの森英次郎のポジションを上げ、一気に逆転を目指した。だが、永里源気が「久保（裕一）や自分が外に流れると、ゴール前の厚みがなくなる」と振り返ったように、サイドに展開することはできても、そこからセンタリングを送る際、中央に飛び込む選手が少ないことが多く、決定的な形を作ることができない。終盤は選手交代で何とか打開しようとしたが、最後まで追加点を奪えないまま試合終了となった。

鳥取は、群馬を残留争いに引き留められなかった上に、同じく引き分けた岐阜との勝点差4も縮めることができず。北九州とアウェイ、千葉とホームで対戦する残り2試合について、前田浩二監督は「勝たなければいけないのは事実だと思います。2試合、われわれは勝つしかないし、向こうは1勝でいい。われわれは勝つだけです。まずは42試合の中で、しっかり進めていくことだと思っています」と語った。この日、カマタマーレ讃岐のJFL2位以内が決まったため、最下位でも自動降格になることはなくなったが、18試合未勝利と打開策を見いだせないまま、ますます苦しい状況に追い込まれた。

群馬は、小柳が「シーズン前の目標とは全く違った結果になってしまった。この経験を生かして、残留争いではなく、昇格争いに食い込めるチームにしなければいけない」と語ったものの、残留を決めたことで、残り2試合を、来季を見据えた戦いとすることができる。その2試合は神戸、Ｇ大阪とのホーム2連戦。秋葉監督は「ホームゲームですから、相手がヴィッセルだろうと、ガンバだろうと、負けるつもりは全くありません。優勝争いにしっかり一矢報いる、邪魔者になれるように。ある程度プレッシャーからは解放されたと思いますので、アグレッシブに、攻撃的に、ウチらしく。若いチームなので、荒々しく、ウチのスタイルで2試合、正面から、正々堂々とぶつかって良い結果を得たいと思っています」と力強く語った。

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2013.11.11 Reported by 石倉利英