その瞬間、ひときわ高い歓声がレベルファイブスタジアムに響いた。8月18日以来となるホームゲームでの勝利。「バーモース アビスパ福岡 我らと いつも共に」。スタジアムにはサポーターが歌うチャントが響く。
「我々は素晴らしい試合を展開して勝ったわけではないが、我々の意識は非常に良かった。戦っていた」(マリヤン・プシュニク監督)。
徳島を一方的に攻め込んだ前半。押し込まれながらも耐えた後半。90分間の中には山もあれば谷もあったが、1試合を通して感じられたのは、どんな時でもチームを支えてきたファン、サポーターとともに勝利をもぎ取ろうという強い意志。選手たちは、ひとつ、ひとつのプレーに全ての力を注ぎ、サポーターは途切れぬ声援で選手たちの背中を押し続けた。「この1週間、観客、スポンサー、クラブ職員、選手等々、あらゆるエネルギーを集結することで相乗効果を狙うと言い続けた」と語ったのはプシュニク監督。その言葉通り、スタジアムに集う仲間の力を結集させた勝利だった。
口火を切ったのは石津大介。開始直後の4分、坂田大輔からのパスを受けると対峙する青山隼との間合いを冷静に測る。そしてシュートコースが空いた瞬間、右足を一閃。ゴールまで約20メートルの地点から放ったミドルシュートがゴール左隅を捕えた。
このゴールで福岡が試合の流れを掴んだ。相手ボールになると、素早くブロックを形成して徳島のパスコースを消す。雨に濡れたピッチの上で徳島がボールの処理に戸惑うと、2人、3人と囲んで激しくプレッシャーをかける。そして、ボールを奪うと縦に速い攻撃を仕掛けて徳島ゴールに迫った。攻撃の起点を作るのは金久保順。そこへ、坂田大輔、金森健志、石津、さらには三島勇太が絡む。この5人が繰り返すポジションチェンジに戸惑う徳島は防戦一方。開始直後にキム ジョンミンが放ったシュートを除けば、攻撃の形すら作れなかった。福岡は追加点を奪うことはできなかったものの、内容で徳島を圧倒した前半だった。
それでも試合は簡単には終わらない。後半になると、1点を追って前に出てくる徳島に対して福岡が下がる。ボールを受けようとする選手がいなくなり、ボールを奪う位置も、ボールを回す位置も明らかに低くなっていく。気が付けば試合を支配するのは徳島。福岡はゴール前に釘づけにされて、ただボールをはね返すだけになっていく。これまでの試合でも何度も見られた光景。嫌な空気がピッチに流れはじめる。
だが、この時間帯を徳島は活かすことができなかった。柴崎晃誠、濱田武を中心に、意図した形でボールを運ぶところまではできても、あと一歩の力が足りずに福岡ゴールを脅かすことが出来ない。「押し込んだ中でこじ開けるということが、どうしても大きな課題。ボールと自分という関係から、3人の関係が出来るようにならないと、引かれた、リトリートされた相手には難しい」と小林伸二監督は振り返る。
やがて、後半の10分を過ぎたあたりから、再び福岡が前へボールを運び出す。ここでもチームを引っ張ったのは金久保。ルーズボールを追い、高い位置でボールを収め、疲労の色が見える仲間たちをプレーで勇気づけた。さすがに前半のように徳島を圧倒するわけにはいかなかったが、機を見て仕掛けるカウンターは、徳島にリズムを刻ませなかった。引きすぎず、攻め急ぎすぎず、福岡は、これまでの試合とは違う姿で試合を進めていく。
そしてアディショナルタイム。今シーズンは、何度となくアディショナルタイムの失点で勝点を落としてきた福岡だが、この日は落ち着きを失わず、ボールをキープして時間を使った。「まだまだ物足りないところはあるが、少しずつ、チームが成熟し始めたと感じている」。プシュニク監督は満足気に話した。
今シーズンのここまでを振り返れば、この日の試合と同じように、山もあれば谷もある戦いだった。どちらかと言えば、谷の方が多かったかも知れない。しかし、プシュニク監督はいつも口にする。「大切なことは何度転んだかではなく、何度起き上がるかということだ」。その言葉を胸に福岡は残り3試合を戦う。試合終了後に、いつものように、サポーターとともに叫んだ「1、2、3、アビスパー!」の掛け声は、そんな決意の表れでもある。
以上
2013.11.04 Reported by 中倉一志
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