試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、槙野智章はピッチに倒れ込んだ。「国立に忘れてきたものを取りにいく」。チームメイトとともにそれを合言葉にして決勝に挑んだが、その思いは叶わなかった。2年ぶりに決勝の舞台に立った浦和だったが、柏に0−1で敗れた。
立ち上がりはいつもより慎重な戦いぶりだったが、平川忠亮が「こういうタイトルが懸かった試合はそういう入り方になることはよくある」と振り返ったように、一発勝負の大舞台という状況を考えればそれも仕方がない。対戦相手の柏も「うちの方がバタバタしていた」と近藤直也が苦笑いしたように、出足が鋭かったわけではなかった。
両者とも様子見の序盤になったが、それでも浦和は自分たちのサッカーをしようと試みていた。宇賀神友弥、原口元気、槙野智章がいる左サイドを中心にボールを回し、柏陣内に押し入っていく。柏は守備意識が非常に高く、10人全員が自陣に戻る形が多かったため、浦和は比較的簡単にボールを前に運ぶことはできた。ただ、バイタルエリア付近までいくと、枚数の多い柏の選手が密集しているため、最後のところでこじ開けられない展開が続いた。
柏は引いて守ってカウンターという狙いがはっきりしていたが、浦和は攻めの姿勢を見せながらもきっちりと守備のケアもできていた。浦和は特別良かったわけではないが、そこまで悪い出来でもなかった。鈴木啓太も「特に前半に自分たちのやりたいことができなかったというような形では見ていない」と振り返る。
それだけに前半アディショナルタイムの失点は痛かった。「前半のアディショナルタイムは絶対にやらせてはいけない時間帯だった。前半のピンチはあれくらいだった」と山岸範宏が唇を噛んだように、浦和は柏にワンチャンスでリードを許した。
後半、まずは1点を返さないといけない浦和は攻勢を強める。前半以上に選手たちが流動的に動き回り、阿部勇樹や那須大亮といったリスクマネジメントを担う選手たちも機を見て攻撃に加わった。槙野も前半以上にボールを失うリスクを恐れずに仕掛け、左サイドを何度もえぐってクロスを上げた。
1点のリードを守ろうとする柏の守備は非常に固く、浦和は攻撃の枚数を増やしても簡単にはこじ開けられなかったが、それでもピンチを覚悟しながらリスクを上げて攻め続けたことで前半よりもチャンスの場面は増えていった。
そのなかで、この日最大の決定機を迎えたのが70分。興梠慎三のポストプレーから阿部が左に展開、ボールを受けた原口がDF2人に対して勝負を仕掛けながら右足アウトで2人の間を通す技ありのパスを出すと、後方から飛び込んできた阿部が滑り込みながら合わせたが、「自分で浮かすっていう選択をした」というシュートはゴールマウスの上へ。ここで決めておけば試合は大きく変わっていただけに、阿部は「追いつけなかったのは自分の責任。みんなには申し訳なく思っている」と肩を落とした。
浦和は2年前の忘れ物を持ち帰ることはできなかった。自分たちのサッカーができずに敗れたわけではなかった分だけ、選手たちの心境は複雑だ。宇賀神は「ああいう内容の試合で負けると悔しいし、気持ち的にも負けた気がしないのでモヤモヤする」と唇を噛む。
だが、終わった事実は変えられない。10年ぶりのヤマザキナビスコカップ制覇は叶わなかったが、浦和にはまだリーグタイトルをかけた戦いが残っている。那須は「くよくよしていてもしょうがないので、この教訓を生かしてリーグ戦につなげていくしかない」と力を込める。今回の敗戦を糧にできるかどうかは自分たち次第だ。
以上
2013.11.03 Reported by 神谷正明
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