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【J1:第29節 鹿島 vs 浦和】レポート:1人少ない鹿島が最後まで意地を見せるも、熱戦を制した浦和が2位に浮上する(13.10.20)

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気温は18.1度とそれほど低くないはずだったが、猛烈な風が体温を奪う。厚手の上着が必要なくらいの寒さに見舞われたなかでの試合は、それとは対象的に熱く激しく、意地と意地がぶつかり合うタイトルを争うに相応しいものだった。途中から霧のような雨が吹き付ける環境にも関わらず、32,305人もの観衆が詰めかけ、さらにゲームをヒートアップさせた。

鹿島にとっては難しい試合だった。4人で守るDFラインに対して、浦和は5人の選手を並べてくる。そのためシステムのかみ合わせが悪く、サイドの選手の判断力が問われたが、右サイドバックの主力である西大伍はF東京戦に続いて出場停止。2年目の伊東幸敏が起用された。しかし、いまの浦和の左サイドは原口元気、宇賀神友弥、槙野智章が連携を取りながら崩してくる。「守備の仕方がハッキリしなかった」(伊東)というように、的を絞らせずに主導権を握る攻撃を仕掛けてきた。
しかし、中央を固めてクロスを弾き返す鹿島の守備も堅かった。特に、興梠慎三への楔は青木剛がほぼシャットアウト。サイドからの攻めは許すが、中央はうまく締めていた。そのためパスの出し所を躊躇したり、サイドチェンジのパスをミスすれば、一気に鹿島が逆襲に移る。あっという間に展開が変わる目の離せない攻防が繰り広げられた。

だが、その流れを一気に引き寄せたのは浦和だった。20分、右コーナーキックから那須大亮が、マークに付いていたダヴィとの駆け引きに勝って先に頭に触り、ゴールにうまく流し込み先制点をあげる。背後から手でうまく視界を遮り、ダヴィを跳ばせない技術はさすが。前回対戦時も鹿島は那須にコーナーキックから同点弾を決められているだけに、決してマークがうまくないダヴィを付けたことが悔やまれる失点だった。

ただ、このあたりから雲行きが怪しくなる。イライラを募らせたダヴィが森脇良太としばしば言い合いになり、松尾一主審が2人をなだめる場面が増えてしまった。その後もイライラするダヴィ。ハーフタイムにはトニーニョ セレーゾ監督がなだめ「前半だけで終わりにしてくれ、後半はサッカーに集中してやろう」と語りかけたが効果はなかった。57分に受けた繰り返しの違反による警告は、相手を掴んでいたわけでもなくフェアなプレーだったと思われるが、その直後に自制心を失い森脇の顔をはたいてしまう。これは間違いなく反スポーツ的行為として警告の対象に。2枚目のイエローカードにより退場となってしまった。

攻撃の糸口が掴めなかったため、ベンチはダヴィに代えて土居聖真を用意していたなかでの退場劇。これにより鹿島のゲームプランは大きく崩れてしまった。しかし、久しぶりの大観衆に後押しされた選手たちは、勝利を諦めなかった。
「1人少ない状況であれだけやっていたことはすばらしいと思います。僕もボランチ出身ですので、またサッカーを学ばさせてもらったと思います」
試合後、セレーゾ監督は小笠原満男の姿勢を絶賛した。1人少なくなった前線から中盤までを広く走り回る。71分に、原口がドリブル突破から決定的な2点目を決めてもその姿勢は変わらなかった。87分に、大迫勇也が一矢報いるボレーシュートを叩き込み試合終了のホイッスルまで同点、逆転の望みを捨てずに戦いきった。
しかし、1人少ない状況は如何ともしがたく、浦和が1点差を守って逃げ切る。3位、4位の直接対決を制し、2位に順位をあげた。バス61台で浦和から大挙して訪れたサポーターと共にあげる凱歌は最高の味わいだったことだろう。

鹿島は優勝争いから一歩後退。残り5試合で全勝しても得られる勝点は15。そのなかで首位と6差に開いてしまったことは痛恨だ。しかし、目の前の試合で勝利を目指し、勝点を積み重ねていく作業に変わりはない。
「まだ、終わってない」
大迫は諦めていなかった

以上

2013.10.20 Reported by 田中滋
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