北海道内の各家庭で徐々に暖房器具が動き始めつつある10月中旬。この第37節では現在ともに勝点51で並ぶ、10位札幌と9位山形が激突する。会場は札幌のホームである札幌ドームだ。
札幌の直近試合は今月13日に行われた天皇杯3回戦の磐田戦(ヤマハスタジアム)だが、J1チームを相手に1−0のスコアで見事に勝利を収めている。財前恵一監督は「チーム一丸となって掴んだ勝利」と番狂わせを演じた自チームを称えたと同時に、「しっかりコンパクトな状態を作るということで言えば、ほぼピンチはなかった」と内容面でも充実したゲームだったことを強調している。
磐田戦の勝利は単なる1勝ではない。内村圭宏らコンディションが万全ではない主力選手に代わり、神田夢実や堀米悠斗といったルーキーをスタメンに抜擢。そしてその若手選手が躍動して難敵を下したとあっては、チームには勢いが生まれつつあるはずだ。貴重な決勝ゴールを挙げたのは神田だった。
その磐田戦からこの試合までのトレーニングのなかで、指揮官はこう口にしている。
「磐田戦で若手が頑張って結果を出したことで、チーム全体にいい意味での危機感が生まれている。『自分は絶対に試合に出られる』と思っている選手はひとりもいないとはず」
ことリーグ戦においては、前節、前々節と下位チームに連敗をしてしまい、流れが若干悪くなってしまっているという状況である。しかし、天皇杯でディビジョンが上のチームに競り勝ったことで、間違いなく選手たちには自信もあらためて芽生えているはず。「残り試合を全勝するイメージで戦っていく」と奈良竜樹が発したように、今節の結果次第では再び札幌が上昇気流に乗れるかもしれない。
対して敵地に乗り込む山形の直近試合は、16日(水曜日)に天皇杯3回戦の浦和戦(駒場スタジアム)を戦っており、これを3−2で勝利。こちらもまた格上のチームを見事に撃破している。
39分に生まれた伊東俊の先制ゴールを含め、常に先手を取る展開ながらも、個人能力の高い選手を並べる浦和にすぐに同点とされる。だが、「(相手は)非常に攻撃的なチームでしたけれども、それ以上にこちらの攻撃的な姿勢、攻撃的な守備というものを披露できたと思っております」と奥野僚右監督が振り返ったように、この試合での山形は相手のパスワークを封じるべく高い位置から連動した守備を行い、相手DFへの厳しいプレッシングからカウンターのチャンスを生み出してはゴールに迫るというプランを徹底して遂行。そしてそれが成就し、敵地と言える会場でアップセットを演じてみせたのである。
そしてその浦和戦後に指揮官は次のように発している。
「札幌さんも天皇杯で磐田さんに勝っていますし、僕たちもJ1のチームを倒してこの週末の札幌戦に向かっていこうという思いはもちろんありました」「こういういい形で勝利を得られることによってチームは勢いづいていくんじゃないかと思う」
リーグ戦に目を向けると前節、前々節ともに勝利を逃してしまっているが、山形もまた、天皇杯で浦和という強敵を倒したことで再び勢いを得そうな気配がしっかりとある。
さて、そんなチーム同士の対戦であるが、あらためて双方の立ち位置を見てみると、プレーオフ出場圏内である6位との勝点差がどちらも6。残り試合数も6であることを考えると、どちらもここで勝点3を積んで可能性を広げていきたいところ。その意味では、どちらも総力を挙げて勝点3を奪いにいく、熱い試合になることは間違いない。ただし、日程のところに目を向けると札幌は中6日で山形は中3日。ホームゲームであることも加味すると、コンディションの部分では札幌にアドバンテージがある。その意味では、札幌が積極的に仕掛け、山形が浦和戦と同様に連動した守備からのカウンターで背後を狙い続けるという構図が想定できる。果たして、天皇杯で得た勢いは札幌が上回るのか、それとも山形が上回るのか。今後のリーグ展開を左右する、重要な一戦だ。
以上
2013.10.19 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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