試合前、メンバー表を見ると、マルキーニョス、中村俊輔の名前がスタメンの欄にあった。これまでヤマザキナビスコカップ、天皇杯のミッドウィークのゲームで彼ら2人が揃って先発起用される機会は少なかっただけに、この一戦への本気度がうかがい知れた。「しっかりとタイトルを意識して戦おう」。樋口靖洋監督も、そうハッパをかけて選手をピッチに送り出す。その意気込みが序盤から現れた。
前半5分、風上に立った横浜FMは、ドゥトラが早目にアーリークロスを放り込み、風に乗ったボールは、ファーのマルキーニョスの足元へ。栃木ディフェンスは一瞬、ボールウォッチャーとなり、GKと1対1になったマルキーニョスが難なく沈める。
しかし、直近4戦無敗の栃木は、そのまま相手の軍門に降らない。18分、右サイドで廣瀬浩二がドゥトラに倒され、FKを得る。キッカーは背番号44、三都主アレサンドロ。左足から放たれた高速クロスに飛び込んだパウリーニョの頭をかすめて、ゴール前で混戦に。最後はサビアが蹴り込み、同点とする。
ただ、横浜FMの選手たちに、動揺の色は見られなかった。それは「相手のプレッシャーは思ったほどきつくはなかった」(中村)から。栃木はキックオフ時、トリプルボランチで臨んだが、その1人・血気盛んなクリスティアーノがボールを深追いしすぎるため、守備の統制がとれず、前半途中に彼を前線に上げ、ダブルボランチに変更。ポジション上でのバランスは保てるようになったが、J1上位チームのクリエイティブなパス回しに困惑気味に。「(横浜FMは)ワンタッチ、ツータッチでボールを動かしてきた。無理してボールを取りに行くと、裏に一発でパスを通された」(廣瀬)が言うように、プレッシャーのかけ方が定まらず、後手を踏んだ。
2回目の被弾のシーンも、横浜FMの巧妙な連係プレーに翻弄された。パスカットをした富澤清太郎が、左から対角線にパスを送り、走り込んだ中村が大胆にスルー。その先にいたマルキーニョスが、虚を突かれた相手DFを尻目に、冷静に左隅を突くシュートを決める。
それでも栃木は、力量差を認めて引いてブロックを敷いて守ることなく、前からボールを奪おうと真っ向勝負を挑む。そして、走力みなぎるカウンターを何度も披露。30分には菊岡拓朗が中盤でボールを拾うと1人かわして、ロングスルーパス。クリスティアーノが猛然と走り、裏に抜け出したが、シュートは榎本哲也のファインセーブに阻まれた。
後半に入り、56分にはパウリーニョが自陣で中村からボールを奪取し、速攻開始。菊岡のダイレクトパスを経由し、再びクリスティアーノと渡るも、弾丸ミドルを再びGKに弾かれる。
一方、横浜FMの守備陣は、「危ない場面もありましたけど、単発だったというか、ゲームの流れを相手につくられたわけではない。やっていて、やられる雰囲気はなかったです」(小林祐三)と慌てるそぶりを見せない。シュートブロックや、シュートをミートさせない相手への寄せなどで、きっちり要所を締めた。そしてマルキーニョスが、62分にPKでハットトリックを樹立。横浜FMが波乱を起させることなく、勝負の終止符を打ったのである。
以上
2013.10.17 Reported by 小林智明(インサイド)
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