120分+αの激闘は、仙台と水戸の対戦に新たな一頁を加えた。
ユアテックスタジアム仙台に両チームのバスが到着し、水戸の方では本間幸司が降りたときに、コンコースから見ていた水戸サポーターだけでなく仙台サポーターからも呼びかけの声があった。水戸が1999年の第79回大会で仙台を破ったときにもゴールマウスを守っていたこの守護神は、このカードの歴史を知る人にとってなじみ深い存在である。
試合では、このベテラン本間から19歳の鈴木雄斗に至るまで、水戸が攻守にハードワークを惜しまずに、J1の仙台を苦しめた。
試合後の記者会見で仙台の手倉森誠監督は、調整期間の短い来週も見据えてフィジカルトレーニングを多めに入れたことで、コンディションが重かったことに言及。しかし「立ち上がりはコンディションは理由にならない」とも話した。水戸の出足の鋭さ、球際での激しさがキックオフから発揮されていたことが、水戸優勢の大きな理由だった。8分と9分のミドルシュートは林卓人の好セーブに阻まれたものの、9分のCKから水戸が先制。船谷圭祐のCKを三島康平が折り返し、元仙台の細川淳矢が押しこんだ。
仙台もやられっぱなしではいられない。15分、赤嶺真吾が西岡謙太からボールを奪うと、相手のカバーが遅れた隙を逃さずウイルソンにパス。ウイルソンのシュートは本間にブロックされたが、詰めた赤嶺が頭で押しこんで仙台が追いついた。
しかし、このゴールで仙台が押し返す、とまではいかなかった。ミスからの失点にも水戸は崩れず、果敢に正面から攻撃を挑んできたからである。「(これまで)ボランチとトップの連係が悪かった」というリーグ戦での反省のもと、柱谷哲二監督はこの日に、橋本晃司をFW起用。橋本は2トップの一角というより1.5列目のような位置を取り、相手ボランチの背後を狙う。彼が西岡と内田航平との距離感のバランスが取れていたときには、カウンターでも高い位置でのボール回しでも攻撃のポイントとして存在感を発揮した。逆に、水戸のボランチが引き過ぎたときには、仙台の角田誠や富田晋伍が容赦なくボールを奪取して仙台の速攻につなげていた。このゾーンの攻防には特に見ごたえがあった。
スコアは1-1になってからはなかなか動かなかったが、互いに激しい上下動の中で相手のシュートチャンスをつぶす攻防は止まることなく続く。それは選手交代を経ても、延長戦になっても、変わらなかった。そして勝負はPK戦へ。ここでは後攻の仙台が3人連続で決めたのに対し、先攻の水戸は鈴木隆行が決めたあとは山村佑樹のキックが林に止められるなどして3人が連続で失敗。結果、仙台が4回戦に進出した。
勝敗はPK戦でついたものの、そこまでのスコアは1-1の「引き分け」でもある。それぞれのこの大会にかける思いが生んだ激闘だった。仙台は初タイトルやACL出場権獲得という目的、さらには手倉森監督が来年のU-21日本代表監督就任に伴いチームを離れるということで「勝てば監督とやれる時間も増やせるし、このメンバーとやれる時間も増やせる」(林)という思いがあった。水戸には「自分達にはJ1のライセンスがないのでこの大会で勝ってアピールしないといけなかった」と細川が語ったように、自ら築いてきたものを少しでも高いレベルで発揮し続けたい思いがあった。
柱谷監督は試合後に「今日は本当にエキサイティングで面白いゲームだったと思います」として、楽しさや厳しさを含めた今日のような内容を、今後のリーグ戦でも披露することを誓った。長い対戦の付き合いがある両チームは、この日の激闘から得たものを、また明日からの新しい歴史につなげてくれるだろう。
以上
2013.10.14 Reported by 板垣晴朗
J’s GOALニュース
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