仙台と大分の対戦は、以下のような仙台のゴールラッシュで終わった。
1点目　CKに角田誠が頭で合わせる
2点目　自陣からのカウンター攻撃。ウイルソンのクロスを梁勇基が頭でわずかに軌道を変えてゴール
3点目　梁のスルーパスを受けた柳沢敦が、浮き球でGK丹野研太との1対1を制す
4点目　太田吉彰のクロスに、投入されたばかりの石川大徳が合わせて得点
5点目　松下年宏のFKを渡辺広大が折り返し、角田が押しこむ
6点目　渡辺のフィードを起点に、赤嶺真吾のポストをはさみ、ウイルソンが突破からフィニッシュ
2点がセットプレーによるもの。そしてそれをもぎ取ったプレーと残り4点は、いずれも大分の裏を取って仙台がチャンスを得たことによるものだった。
それは、1つでも順位を上げるため、互いに攻撃的にゲームを進めた結果だった。

大分の田坂和昭監督は、試合後の監督会見で攻撃面でのトレーニングの成果について語った。そして「ねらいを随所に出すことができた」（田坂監督）というように、仙台の中央が固いことを考慮して、サイドに大きく開いて攻略する攻撃的な姿勢をキックオフから見せていた。
その大分の裏を、仙台は突いた。最前線の森島康仁と、その背後からの飛び出しを抑える上で、大分のフィードの落下点ではコンパクトな布陣を取ってプレッシャーを強める。中盤の底の梶山陽平から攻撃が組み立てられる場合は、高いポジションからのプレッシャーでボールを奪うか、前方のパスコースを塞いでサイドにボールを逃がす。そうして奪ったボールを、この日は攻撃的な位置で起用された梁を中心とした組み立てで相手の裏のスペースに送りこんだ。大分の3バックが広がったところに「スペースができていたので、そこに立っていればチャンスができると思った」（ウイルソン）とポジションを取った2トップのしたたかさも効いていた。

大分にもチャンスの時間帯はあった。実に13本のシュートと7本のCKが記録されたように、左サイドのチェ・ジョンハンの切れ込みや西弘則の突破を中心にサイドからチャンスをうかがっていた。特に後半立ち上がり、ウイルソンがPKを失敗したあとにはこの2人のチャンスメイクは効いていた。
また、西に代わって高松大樹が69分に起用されてからは、縦のロングボールと横パスをうまく織り交ぜ、相手のスライドの大外からチャンスを作る場面もあった。それでも決定機で仙台の守備に前を塞がれたり、フリーに近い状態でのシュートが外に逸れたりして、大分がゴールネットを揺らすことはできなかった。

こうして6-0という結果が生まれた。仙台にとってはJ1・J2を通じて1試合での最多得点・最多得失点差だった（それまでの最多得失点差は2009年J2第18節水戸戦での5-0）。大分にとっては残留を勝ち取る上で痛い敗戦だった。
しかしこれは両チームとも攻守にアグレッシブな姿勢を見せてファイトした結果だった。その点は強調しておきたい。「ミスもあったし、『勝って兜の緒を締めよ』という試合」と無失点に抑えた仙台の渡辺が反省すれば、「次の試合につなげるためにも、甘い部分をなくすしかない」と大分の為田大貴は大敗の経験を生かそうと決意した。

シーズンも終盤戦に入り、それぞれの置かれている立場の中で、ゴールを目指すための熱は増してくる。その中で勝ち負けはつき、点差という結果は出るという現実はあるが、互いにベストを尽くしたからこそできるゲームを、これからの試合でも期待したい。

以上

2013.09.15 Reported by 板垣晴朗