３人の見慣れない記者が雁の巣球技場にやってきたのは、夏真っ盛りの８月中旬。首からプレスパスを下げ、ノートとボールペンを持った姿はスポーツ記者のそれだが、どこか初々しさが漂う姿から、この日が初めての取材であることが分かる。３人の正体は斎藤佑磨君（壱岐南小５年）、本田倖正君（周船寺小２年）、伊東直央君（原北小２年）の、西日本スポーツ所属の特命子ども記者。雁の巣球技場で、マリヤン プシュニク監督と選手たちに突撃取材を行った。

もちろん、アビスパの選手たちは大歓迎。練習が終わるとピッチに呼び入れて「１、２、３、アビスパ−！」と一緒にコールし、全員が揃って記念撮影。３人は少し照れくさそうにしながらも、いつもは入ることが出来ないピッチの上で、しかも、憧れの選手たちと肌を触れ合う興奮に、少しばかり表情が上気している。

そしてインタビュー取材。まずはマリヤン プシュニク監督を３人で囲む。
「好きな食べ物は何ですか？」
「フリーキックのコツは何ですか？」
「リフティングのコツを教えて下さい」
特命子ども記者は、ノートにしたためてきた質問を代わる代わるぶつけていく。そして、そのひとつ、ひとつにプシュニク監督が丁寧に答えていく。プシュニク監督が、特に強調していたのは、毎日、毎日、継続してトレーニングを続けることと、サッカーボールを好きになるということ。そして、最後に一言付け加えた。
「素晴らしいジャーナリストぶりだね。いつも来ている記者の人たちよりもいい質問をしていたよ」
う〜ん、強力なライバルの出現だ。

さて、選手インタビューは城後寿。当初は３つの代表質問に加えて、それぞれが３つずつ質問する予定だったが、「もっと質問していいよ」と城後本人が子ども記者に促し、結局、インタビューは40分を超えるものになった。穏やかな表情で子どもたちの質問に答え、時折、逆に質問をしながらアドバイスをする城後の優しさが伝わった時間は、子ども記者たちにとって最高の時間になったはずだ。質問はサッカーのことが中心だったが、中には「好きな女性は誰ですか？」という質問も。城後は戸惑いの表情を見せながら米倉涼子と答えたのだが、納得がいかなかったのか「好きな女性のタイプは何ですか？」続けて質問を浴びせる子ども記者（笑）。う〜ん、簡単に引き下がらないところは、ジャーナリストとしての素質十分だ。

そして、最後は城後からのメッセージが子ども記者たちに送られた。
「サッカーだけやっていても駄目だと思います。僕が一番後悔していることは、サッカーだけをやって勉強をおろそかにしてしまったことです。小学校の頃から、たくさん勉強をして、いろんな知識を身に付けることは、将来、必ず役に立ちます。『勉強しなさい』と言われて、面倒だなと思うこともあるだろうけれど、それも、みんなのために言ってくれていることなので、お父さん、お母さんの言うことをしっかり聞いて、たくさん勉強してください。それから、早寝早起きをすることはもちろん、好き嫌いせずに御飯をたくさん食べて下さい。そして、みんなの周りに仲間はずれの子を作らないで、みんなで楽しく過ごしてくれたら嬉しいなと思います。プロサッカー選手を目指して頑張ってください。応援しています」

練習見学を含めれば約３時間。子ども記者は、この日の事を一生忘れることはないだろう。そして、これまで以上にアビスパ福岡を、そして監督、選手を身近に感じ、もっと強い気持ちで声援を送ってくれるはずだ。もしかしたら、何年か後には、３人のうちの誰かを私が取材することになるかもしれない。あるいは、ライバルとして一緒に取材するかも知れない。その時がやってきたら、この日の事を笑い合いながら話したい。そんなことを考えながら、子ども記者の笑顔を見ていたら、自然とこちらも笑顔になった。とても穏やかで楽しい１日だった。

以上

2013.09.13 Reported by 中倉一志