開始間もないゴールは両チームに大きかったろう。3分、武富孝介が中盤でパスカットし、相手の前傾を逆手に湘南がショートカウンターに転じる。ステボに預け再び受けた武富は、GKの位置を見定め冷静に流し込んだ。さらに9分には、左アウトサイドに入った古林将太の突破を契機に、コーナーキックから宇佐美宏和がヘッドで押し込む。

「ミスから失点し、すこし意気消沈してしまった」薩川了洋監督がそう振り返ったように、琉球にとっては自分たちに反省の見出せる早々の失点だった。溢れる意欲が空回りした側面もあったのかもしれない。ただ、見過ごせないのはその後の戦いだ。安易に蹴り込むことなく、繋ぐ意識を弛まずに組み立てを試みた。

琉球はこの日、高橋駿太を1トップに据え、我那覇和樹や中山悟志が2列目に入る4−2−3−1のフォーメーションで臨んでいた。ただ、「中盤でタメをつくろうと心掛けましたが、効果的なパスや決定的な場面はつくれなかった」と我那覇が振り返ったように、湘南の前線に始まる鋭いプレッシャーによってなかなか前にボールを運べない。逆に守備を機に流れるパスワークへと転じていた湘南は24分、大槻周平や宇佐美、そして中川寛斗の絶妙なスルーパスを経て、抜け出した武富が相手DFとの駆け引きも攻略し、追加点を挙げた。

3点のビハインドを背負った琉球は後半2トップにシフトし、また33分に投入されていた永井秀樹が中盤でリズムをつくり、ラインの押し上げを加速させた。パスワークの先で寺田洋介がミドルを狙い、また永井のクロスに寺田がヘッドを合わせる場面もあった。だが攻勢には出たものの、クロスバーに弾かれるなどいずれも枠を捉えきれない。鎌田翔雅をはじめとする湘南DF陣の、局面での粘り強い対応も背景にある。逆にこの時間帯を防いだ湘南は、永木亮太が入るとともに再び引き締まり、73分には大槻、中川と繋ぎ、裏に抜けた宇佐美のクロスに武富がこの日3度目のフィニッシュを右足で合わせた。

琉球はエフライン・リンタロウに続き小幡純平が入り、前線を活性化させた。かたや湘南も、途中出場の荒堀謙次や前田尚輝が積極的なプレーで好機を演出した。キャプテンマークを巻いた岩尾憲然り、試合への想いを地道なトレーニングとともに日々研いでいる彼らの躍動と、誰が出ても変わらないチームのスタイルの発揮は、この日の湘南のなによりの収穫かもしれない。

「完敗です。僕も監督なりに反省しなければいけない部分があるし、選手たちも今日の試合をいい経験として何かを掴んで、来週のリーグ戦に繋げられたらと思います」薩川監督は語った。一方、湘南の曹貴裁監督も、「チーム全体として一つひとつのプレーの質にもっとこだわっていかないといけない。僕からすると、もっとやれるのに、という想い。このまま成長を止めてしまったら間違いなく我々はいい位置に行けない。来週からまたリーグ戦が始まるので、一瞬だけ喜んで切り替えていきたい」と兜の緒を締めた。勝者も敗者も、この日のゲームから得た学びを自分たちのこれからに繋げたいという想いは変わらない。切磋琢磨の日々は続く。

以上

2013.09.09 Reported by 隈元大吾