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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【第93回天皇杯 2回戦 F東京 vs 武蔵野】レポート:120分の熱戦。F東京が横河武蔵野に番狂わせを起こさせず (13.09.08)

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「TOKYO 2020」。午前5時過ぎ、その文字が見えた瞬間、寝ぼけ眼がガバッと開いた。地球の真裏から届いた吉報に歓喜の声が上がった。IOCジャック・ロゲ会長の「TOKYO」に思わず、両手を挙げた人も多かったはずだ。東京にオリンピック・パラリンピックがやってくる。ボールを蹴る子どもたちに、スポーツに打ち込む未来のアスリートに、その場を用意した方々に、「おめでとう」と「ありがとう」の言葉を繰り返したい。

その1964年に、その歓喜と悲哀の舞台となった国立霞ヶ丘競技場で行われる最後の天皇杯決勝を目指して東京ですばらしいゲームが行われた。7469人が見守った試合は、東京の名前を冠する「FC東京」が勝利を挙げた。

米本拓司は「去年負けているし、相手も必死で向かってくる。だからこそ、こっちも必死にならないと。それはプロだからこそ、やりきらないといけないと思っていた」と言う。前回大会でまさかの敗戦を喫した相手。実力差があっても、何が起こるか分からない。わずかな隙が結果を覆す。身を持ってそれを学んだF東京は、最後までそれを見せないことを徹底した。

試合開始から主導権を握ったのはF東京だった。ただし、昨季の再現を狙う横河武蔵野の堅守を90分で崩しきることはできなかった。前半11分に、相手最終ラインの背後に抜け出した東慶悟が1対1の好機をつくった。これを横河武蔵野のGK飯塚渉に阻まれる。続く28分、長谷川アーリアジャスールが獲得したPKを渡邉千真が蹴り込む。しかし、これも飯塚が読み切ってゴールを阻止する。F東京は圧倒的にボールを支配しながらも、粘り強い横河武蔵野の守りを崩しきれず、得点は遠かった。

横河武蔵野DFの小山大樹は「5枚は引いたが、それを高く保って高い位置でボールを奪いにいこうとした。初めは良かったが、次第にパスが雑になってしまった」と言う。後半からは途中出場で入った平山相太が、三田啓貴が、F東京の決定機を次々とつくり出した。一方的な展開になったが、その度に、横河武蔵野は水際で体を張ってゴールラインを割らせなかった。0−0で90分を終えて試合は延長戦へと突入する。

延長に入ると、F東京にアクシデントが起こる。延長開始2分、足を滑らした丸山祐市がファールを犯して一発退場。数的不利の状況で延長戦の多くを戦わなければいけなくなった。この窮地を平山が救った。延長前半アディショナルタイム3分、太田宏介からのクロスを高い打点で合わせる。頭を離れたボールはゴール左へと吸い込まれた。

ゴールの3分前、平山は石川直宏のクロスに頭で飛び込んだが、ゴールを挙げることが出来ず。普段は表だって感情を露わにしない男が、悔しさでポンッと手を叩いた。「気持ちの折れた方が負け。ブレたり、迷ったりせずに戦うことができた」。ゴールと勝利を目指して形振り構わず戦った。それが決勝点へとつながった。

昨季のジャイアントキリングの立役者である横河武蔵野のMF岩田啓佑は「選手の間では、うちのペースだと話していた。だからチャンスはくると信じていた」と振り返る。実際に、岩田は延長後半10分にチャンスを迎えた。GKからのこぼれ球に右足を振ったが、これは枠の外へと外れてしまう。F東京は、追いすがる横河武蔵野を振り切って1−0で逃げ切った。

敗れた横河武蔵野DF瀬田達弘は「120%を出せた。相手も本気でやってくれた。こんなに疲れる試合は初めて」と悔しさを滲ませつつも清々しく語った。前回大会も5バックで守りきった。そして、今大会は引かずに、強気なライン設定をして戦った。そこにチームとして成長の跡を見せた。全員が守備の意識を切らさず、120分の健闘を続けた横河武蔵野に、F東京サポーターからも賛辞が送られた。試合後、ピッチ上に黄色い円ができる。その中で吉田康弘監督は「誰が見ても素晴らしい戦いをしてくれたと思います。ただ、いちアスリートとしてプロとか、アマチュアとか関係なく、やはり勝ちたいという気持ちがある。そういう中で今日の負けを絶対に忘れない。これを基準にして明日からやっていこう」と選手に声を掛けた。

高橋秀人は「プロとしてはみっともなかったかもしれない。僕らも去年以上に泥臭くプレーして気持ちを見せた。プロだからクリアせずにトラップしてつなぐことが当たり前だと思われてもヘディングで大きくクリアした。差を見せつけるよりも、何としてでも勝ちたかった。今日は死に物狂いでやった」と話す。どちらも本気だった。F東京がすべてで上回り、真剣勝負が生んだ緊迫した120分間の熱戦に終止符を打った。

以上

2013.09.08 Reported by 馬場康平
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