Jクラブが登場する天皇杯2回戦。ユアテックスタジアム仙台では、J1の仙台とJFLの秋田という東北勢同士が対決する。

山口県代表のレノファ山口を破って2回戦に駒を進めた秋田県代表・ブラウブリッツ秋田は、ショートパスをテンポよくつないで攻撃するかたちを得意とするチームだ。
彼らは6月1日にJFLの試合で宮城県七ヶ浜町に多くのサポーターとともに乗りこみ、ソニー仙台（※今回の天皇杯では宮城県代表としてJ1鹿島と対戦する）と戦った。この試合では1-2と逆転負けを喫したものの、与那城ジョージ監督は「自分達のリズムでパスを回して主導権を握る時間も長かった。ミスを減らすだけでももっとこのスタイルは魅力的になっていきます。もっと磨いていきたい」とその後に向けて自信を深めていた。
あれから3ヶ月が経ち、再び宮城県に乗りこむ秋田は、さらにパスワークの精度を上げてJ1のクラブに挑む。その攻撃の中心にあって、長短のパスを操るのが熊林親吾だ。2006年から2007年途中まで仙台に在籍していた熊林は当時の若手選手に多くのものを伝え、徳島や草津（現群馬）在籍時には対戦相手として仙台を苦しめ、今度は出身地のクラブの中心選手としてこの試合を迎える。熊林を経由して展開される秋田のパスワークは、サイドでスピードアップをはかる平井晋太郎や3年連続JFL二桁得点の松田正俊、中盤から飛び出しやシュートセンスを発揮する前山恭平といった選手たちによって彩りを加えられる。
秋田が2回戦進出すなわち仙台との対戦の権利を得た後、仙台の渡辺広大のもとにはかつてのチームメート・熊林からすぐに連絡が入ったそうだ。「『回してやる！』と言われましたよ」（渡辺）。カテゴリーの違いや仙台のホームスタジアムでの試合ということもあり、JFLではボール支配率を高めている秋田も、この場では守勢の場面が多くなるかもしれない。だが、J1相手にも、自ら磨いてきたパス回しをどれくらい発揮できるか、腕試しの試合ということでもある。

この秋田に対して、迎え撃つ仙台も「カテゴリーの違いは関係なく、全員が気を引き締めて戦う」（蜂須賀孝治）構えだ。昨年は3回戦でJ2の熊本に敗れただけに、今年こそ巻き返したい思いは強い。仙台の天皇杯における最高の成績は2009年のベスト4。その上を目指すとあれば、決勝戦の舞台に立ち、悲願の初タイトルを現実にしたいところだ。
そのために仙台は秋田のパスワークを遮断しなければいけない。「我々は厳しい守備を示す必要があります」とは手倉森誠監督。自らに隙を作らず、かつ、相手にリズムを作らせないプレッシャーが必要だ。
ここで問題なのが、現在の仙台には、サイドバックを中心として負傷者が多いこと。しかしここはどのポジションでも、新しくチャンスを得る選手に期待したい。仙台では2011年には武藤雄樹が、2012年には奥埜博亮（現長崎）が、天皇杯2回戦で公式戦初得点を記録してきた。「状態はいい。どのタイミングでチャンスが来てもしっかり結果を出したい」という2年目の藤村慶太など、年代を問わず出場のチャンスをモノにする選手が、厳しい守備から相手を押しこむ攻撃に切り替えるための勢いを生み出すことが期待される。

いつもユアテックスタジアム仙台のゲームを盛り上げてくれる仙台サポーターは勿論のこと、応援歌が豊富で横断幕も楽しい秋田サポーターも、多く会場に駆けつけてくれるだろう。天皇杯で実現した東北勢対決が、ピッチ内外で盛り上がることを期待したい。

以上

2013.09.06 Reported by 板垣晴朗