9月7日（土）第93回天皇杯 2回戦 栃木 vs 福岡（13:00KICK OFF/栃木グ）
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★天皇杯特集
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以前、クリスティアーノは、こんな言葉を残した。
「１試合１試合を（トーナメントの）決勝戦のようなつもりで戦いたい」
今週末、まさに天皇杯を懸けたトーナメントが開催され、栃木はノックアウト方式の大会に身を投じる。２回戦の相手は、同じＪ２で戦う福岡。今季の対戦成績は１勝１敗の五分で、２試合とも２−０で勝負が付いている。全くのイーブンの状態で３度目の対戦を迎える今回、両者は勝ち上がってくることが予想されるＪ１の横浜FMへの挑戦権を懸けて鎬を削る。

先週のリーグ戦で徳島に０−１で惜敗した栃木は、Ｊ１昇格プレーオフ進出に向けて苦境に立たされている。だからこそ、「天皇杯なので雰囲気が変わるけど、目の前の１試合に勝つことが今のチーム状態を良くする一番の薬になるはず。とにかく勝ちたい」と話す廣瀬浩二は、福岡戦を上位再浮上のきっかけにしたいと考えている。天皇杯の勝利が直接リーグ戦の結果に反映されることはないが、福岡のリズムを乱すことに繋がる可能性は高い。そう考えれば、天皇杯での３回戦進出とともに、Ｊ２で１４位・栃木が１３位・福岡を叩く意味は小さくないと言える。

徳島戦の敗因を松田浩監督は、「コミットメント（懸ける気持ち）の差」だと語った。身を挺してピンチを潰す徳島の姿勢からは、Ｊ１への思いがひしひしと伝わって来た。気迫を前面に押し出すスタイルは栃木にも備わっており、徳島戦で学んだことを福岡戦に活かさなければ意味がない。
勢いよく前線からハイプレスを仕掛けてくるのが、福岡の最大の特長だ。その圧力がおさまる２０分過ぎまで我慢の時間が続くことになるだろう。思うに任せない状況ではミスが起りやすいが、そこで集中力を切らすのではなく、常に味方と適切な距離をとりながらフォローに回れる関係性を維持したい。張りつめた状態を保てれば、あらゆる局面に対応できるはずで、最後の最後で足を投げ出してゴールを守ることにも繋がる。栃木本来の粘り強さを発揮し、福岡の攻め疲れを誘いたい。

守備一辺倒では勝機は引き寄せられず、また嵐のようなプレスを少しでも弱めるためには攻撃機会を設けることが相手を牽制することになる。そのためには高い位置でボールを奪い、鋭利なカウンターを仕掛け、さらにシュートで攻撃を完結させる必要がある。「シュートで終わる。確実にセンタリングを上げ切る。そういう攻撃ができれば勢いが出る」とは勝又慶典。フィニッシュに持ち込む回数が増えれば増えるほど、相手は後ろへの意識が働き、簡単に前には出て来られなくなる。そうなればボール握る時間帯も長くなり、ゆっくり呼吸できるようになるだろう。そこで先制点を取れるようだと、栃木のペースで試合を運べる。
福岡は前節の千葉戦で、後手に回ってからバランスが崩れ失点を重ねた。徳島戦では逸機し続けた栃木だが、今度は作ったチャンスを確実にゴールに結び付ける「最後の精度と決定力が大事になる」（高木和正）。

３−４で千葉に打ち負けた福岡だが、もともとチームが持っている気質なのか、先手を取るとイケイケのサッカーに拍車が掛かる。千葉に同点弾を浴びるまでは、相手陣内でボールを何度も奪い、理想的な試合展開に持ち込めていた。栃木戦でも千葉戦同様のアグレッシブさを継続し、先制するだけではなく、追加点も取り切ってしまいたいところだ。加点するには栃木同様に精度と決定力を追求する必要があり、坂田大輔を中心とした前線の選手はしたたかにゴールを狙っていきたい。一方、守備陣は「この２試合で８失点もしたが、後ろが頑張れば前が点を取ってくれることを信じてやっていかなければいけない」（三島勇太）。点を取れるだけの力があっても、守備が崩壊していては勝利が遠ざかる。天皇杯の感触をリーグ戦に繋げるには、栃木を無失点に封じるくらいの気概で臨む必要がある。

中位から逆転でのプレーオフ圏内（６位以内）進出を目論む栃木と福岡。両者とも１つ前のリーグ戦を落としているだけに、戦う舞台は異なるが「連敗」するわけにはいかない。天皇杯できっかけを掴むのは栃木か、それとも福岡か。１３時キックオフと条件は厳しいが、それでも選手は９０分全力を振り絞るはずだ。できるだけの多くの方に足を運んでもらい、実際にその雄姿を目にしてもらいたい。

以上

2013.09.05 Reported by 大塚秀毅