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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第32節 山形 vs 水戸】レポート:伊東と西河、攻守の立役者の活躍で山形は11試合ぶりの連勝!水戸は決定力で及ばず、今季2度目の連敗。(13.09.02)

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場内1周の挨拶を終え、最後にメインスタンドへの挨拶のため整列する列のなかで、キム ボムヨンがニヤニヤしながら隣のイ ジュヨンに話しかけ、右方向を見るように勧めていた。その会話が聞こえたのか、そのまた隣の中村太亮もつられて右を向く。目の中に映っていたのは、いまだに熱が冷めないホームクラブのゴール裏。3人とも苦笑いに近い笑顔だったのは、試合中と変わらないテンションに気圧されてか、あるいは、この試合の活躍が認められ一人ゴール裏に向かった伊東を心配していたのか。山形の連勝は、シーズン前半戦最後の試合で、この試合と同じ相手、水戸に勝利して以来となる。ある時は耐えながら、試行錯誤も経験しながら、山形の歯車はいま再び力強く回り始めている。

開幕から全試合先発を続けてきた中島裕希の欠場を受け、2トップの一角には萬代宏樹。さらにディフェンスラインには出場停止明けの西河翔吾が戻った。それに対する水戸は8試合ぶりにダブルボランチ、1トップ2シャドーに戻すとともに、3バックのうち2枚を前節の尾本敬、冨田大介から新里亮、石神幸征に代え、西岡謙太と組むボランチには7月の移籍後初先発となる船谷圭祐が入った。

ボランチを2枚にした水戸はバイタルエリアのスペースを埋めるとともに、ディフェンスラインからボールを引き出し、中盤からの展開も狙っていたが、「ディフェンスから中盤にボールが入らず、バタバタして終わっちゃいました」(小澤司)とロングボールに多くを依存することになった。1トップ・鈴木隆行と近い距離を撮りながら裏へ抜ける動きを狙う小澤に対して、もう一人のシャドー・橋本晃司は時折、中盤の底まで下りてさばくシーンもあったが、そうしたプレーから水戸がビッグチャンスを迎えたのは21分。橋本からやはり下りてきた鈴木隆はボールを預かると、右の鈴木雄斗に当ててタッチライン際へ回り込み、山形の守備を引きつけた状態でゴール前にクロス。ボックス内中央でフリーでトラップした小澤は、さらに外から入ってきた輪湖直樹とクロスオーバーした直後に左足を振った。しかし、そこへ伸びてきたのは西河の右足。チームのピンチを救った西河は事を終えると颯爽と立ち上がり、直後のコーナーキックに備えた。

水戸の自陣からのスローイン。後ろ向きでボールを受けた鈴木隆に対し、背後から西河がプレッシャーをかけると、今度は前線から萬代も戻り、船谷との間に入る。パスコースが完全に消される間際、鈴木隆がパスを送ったが、船谷との連係を欠いたボールはその奥で待つ伊東俊が奪う。ブロックが崩れた状態の水戸ゴールに向かい、伊東のドリブルは縦から左へ。必死で食い下がる石神のスライディングが届かないところで左足を振ると、地を這うシュートはGK本間幸司の逆を突き、右ポストに弾んでからゴールマウスに入り込んだ。

山形が先制したわずか2分後、今度は水戸にビッグチャンスが訪れる。フリーキックのボールが左に展開され、小澤のシュートから跳ねたボールを鈴木隆がヘッドで競ると、伊東との接触で転倒していた輪湖が立ち上がってボールを拾う。ペナルティーエリア内、目の前にはGK常澤聡ただ一人。対応が遅れた山形は林陵平がスライディングで体を投げ出すなど、シュートコースを消しに向かったが、それを見た輪湖はシュートではなく右へのパスを選択。フリーで待ち構えていた細川淳矢がダイレクトで面に当てたが、コース付近に立っていた西河が反射的に伸ばした右足に阻まれた。

ビッグチャンスをことごとく潰されていた水戸は、しかしさらに攻め続ける。33分、押し込んで左へのサイドチェンジから、輪湖が1対1を瞬間的に外してクロス。鈴木隆のダイビングは届かず逆サイドに流れていったが、その1分後、中盤の底に下りた橋本が、今度は左サイドのスペースへ大きく展開する。輪湖を制して先に追いついたのは伊東。しかし、「あれは完全にミスで、体を入れたところからクリアでよかった」と足元でのキープを試みたところで輪湖に入れ替わられた。追いかける形になった伊東は輪湖を倒してPKに。今シーズン4つのPKを決めている鈴木隆がしっかりと5つ目を決めて水戸が振り出しに戻した。

後半開始から、水戸は鈴木雄に代えて尾本を投入し、石神を右ウィングバックに移動させ、勝ち越しへ向けた態勢を整えたが、ここで飛び出したのは山形のゴール。49分、中村太が左サイドを持ち上がると、山崎雅人がサイドバックの裏にダイアゴナルに進入。パスを受け、追っ手を避けるようにさらにコーナー付近へ誘い、3人を引きつけたところでパスをマイナス方向へ。すっかり手薄になっていた2列目で伊東が完璧なトラップで態勢に入ると、ややアウトにかけた右足シュートは本間の手をかすめてサイドネットを鋭く揺らした。

再びリードされた水戸は、残り65分に山村佑樹を投入し、西岡を1ボランチとする3-5-2にシステムを変更。石神や小澤が右サイドを突くシーンや、左への大きな展開で輪湖が仕掛けるシーンをつくる。しかし、山形も山崎が強烈なスイッチとなってプレッシングを連動させたことで、中盤で水戸のボールロストが多くなっていった。水戸最後の決定機は81分。小澤のスルーパスから左サイドをえぐった山村が放った強烈なキックは常澤が壁となって防がれた。

「この暑いなか、選手たちは最後まで力を振り絞ってですね、勝とうという気持ちをしっかり持ってやってくれました」。柱谷哲二監督は選手の頑張りを評価した。柱谷監督も「素晴らしいゴールだった」と讃える伊東の2ゴールで今季2度目の連敗で12位に後退したが、そうした負のイメージ以上に、持続できる高い組織力の余韻をピッチに残した。「個人としては自分のよさを出せました」と話した輪湖は、「でもそれが結果につながらなきゃダメだと思いますし、チームで戦ってるので、1試合をとおして相手を上回らなければいけないと思います」と次は結果につなげる決意を示した。

連勝の山形は6位・京都との勝点差こそ5と変わらないが、順位を3つ上げて9位に浮上した。負けなしが続くこの7試合は相変わらず失点が伴っている。ただしその間、相手にリードを許した時間は逆転勝利を収めた神戸戦の、先制された32分から同点に追いついた52分までの20分間のみ。あとの時間は同スコアかリードした状態で試合を進めることができている。「ここ数試合一体感があって、チームとしてやろうとしていることが90分とおしてできてると思う。それがいい結果につながった」と山田拓巳が話す。安定感を手にした山形に、微かな光が射している。

以上

2013.09.02 Reported by 佐藤円
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