心配されていた雨もなく、夕暮れの青空がのぞく空の下、始まったこの一戦。試合は静かな立ち上がりから始まった。この試合のポイントは先制点。どちらも先制を許すと苦しくなるチーム状況だけに、慎重さがうかがわれた出足となった。
10分、東京VはDF刀根亮輔が負傷し、早々に福井諒司と交代になった。この交代を境に試合は動き出した。本来ならば、痛手を負ったのは東京Vだった。いきなりディフェンスの選手が負傷し、大事な交代カードの1枚を切らないといけなくなった。ゲームプランもある程度の変化を求められるかもしれない。岐阜にとっては、相手が見せた『つけ入る隙』だった。
しかし、つけ入るどころか、相手が上げてきたギアに対応できず、後手に回るという最悪のシナリオをたどってしまった。あれだけ静かな立ち上がりだったのにもかかわらず、開始16分で2失点。しかも刀根が交代した後の僅か6分間という時間で奪われたものであった。
その2失点も非常にお粗末な守備からだった。13分、左サイドをあっさりとMF飯尾一慶に破られ、フリーでライナーのクロスをニアに送り込まれる。これに飛び込んだのは、10試合ぶりに先発出場、9試合ぶりにベンチ入り&試合出場を果たしたFW巻誠一郎だった。巻の今季初ゴールの直後の16分、またも右サイドをDF石神直哉に突破され、上げたクロスに対し、なぜかペナルティーエリア内でマークが完全にルーズになってしまっていたところを、MF森勇介に楽々ダイレクトボレーで決められた。右サイドの対応と、クロスを挙げられる際の中央の守備。いずれも怠慢としか言いようがないルーズさで、簡単に2失点を献上してしまった。
あの千葉戦の集中した守備は一体なんだったのか。そう思いたくなるほど、前節との試合の『熱』の差が感じられた。はっきり言うと、冒頭で書いた『慎重な立ち上がり』は、東京Vだけに当てはまるもので、岐阜は『ただ何となく試合に入った』。そう表現されてもおかしくない出来であった。
前半、これ以上試合は動かなかった。岐阜は開始3分に、バージェがGKの正面を突くシュートを放った以降は、チャンスらしいチャンスがなかった。
後半、辛島啓珠監督はバージェに代えて、FWスティッペを投入。前半に比べると、岐阜が攻撃に関与できる時間が長くなった。しかし、それは必然で、アウェイで2点リードをしている東京Vにとっては、リスクを負ってまで前に行く必要はない。しっかり守ってカウンターと、ある程度余裕を持って試合を運べるようになったにすぎなかった。
そして、この日の岐阜の覇気の無さ、集中を欠いていたことを象徴するプレーが、68分にあった。東京Vが右サイドから攻め込み、中央にクロスを送った時、中央で東京Vの選手が競り勝つも、ボールは左サイドに流れていった。当然、東京Vの選手たちはボールを追う。しかし、なんと岐阜の選手は勝手にエンドラインを割ったと判断し、ゴールキックを始めようとした。当然オンプレーで、左サイドでボールに追いついた選手も、中を向こうとした。しかし、岐阜のGKがすでにボールボーイからボールを受け取って、ゴールキックをセットし、DF陣もゴールキックのつもりで誰も追わなかった。
結果、岐阜のリアクションを見て、審判も出ていないのに気が付いていなかったのか、東京Vの選手交代を認める笛を吹いて、試合は中断。当然、東京Vサポーターからは大ブーイングが沸き起こった。交代後、レフェリーズボールで試合が再開された。これは東京Vにとっては不幸ともいうべきシーンだった。あのまま逆サイドで拾って、棒立ちの岐阜の選手をしり目にゴールを決めていたら…。少なくとも、2次攻撃は出来ていたはずだ。東京Vの選手が「ありえないシーン」と口にするように、これは岐阜の選手、主審も含めて、怠慢なプレー以外何物でもなかった。
低調な試合に、東京Vもお付き合いをしてしまったのか、82分、森のバックパスを交代出場のFWスティッペがかっさらい、慌てて飛び出したGK佐藤優也も交わされ、J初ゴールをプレゼント。
だが、これ以上点を奪うこと力は岐阜にはなかった。試合はそのまま終了し、2-1で勝利した東京Vが連敗を3で止めた。
『痛恨』。岐阜にとって、この一言でしか、この試合は言い表せない。前節の千葉戦は何だったのだろうか。あの気迫、あの気持ち、あのプレー。たった1週間の間に何が起こってしまったというのか。覇気の無い者には勝利は微笑まない。90分を通じての覇気の無さは、戦えるはずの岐阜を知っている人間からすると、まったく理解できない。
岐阜と残留争いを繰り広げる他のチームが軒並み敗れ、『おつきあい』をしてくれたから良しでは決してない。この負けは単なる負けではない。岐阜が抱える問題の根本が改善されない限り、不安定な戦いは続くことを実証してしまったようなものだ。
何度も言わせないでほしい。今の岐阜は『超危機的状況』にある。覇気がないなんて情けないことを言われていてはいけない。
「前半の立ち上がりにいい守備が出来なかったことが、こういう結果につながってしまった」(辛島監督)。もちろん後半にも憂うべき問題はあったが、このコメントがすべてを現している。
『後半からよかった。後半のサッカーが前半からできれば』。良く耳にする言葉だが、もし今日の試合でそんな言葉を言っていたとしたら、これは本末転倒だ。サッカーは90分間、前後半で成り立つものなのだから―。
以上
2013.09.02 Reported by 安藤隆人
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