攻守において統率性があり、攻撃は縦に速い。細かい部分にまで言及すれば違いは生じるものの、柏と仙台が持つスタイルの根幹は基本的には同じだと思っている。だからこそ、この両者の対戦はがっぷり四つとなり、拮抗した勝負を繰り広げた挙句、どちらが勝つにしても終盤に決着がつくことが多い。
仙台は3連勝で勢いに乗っている。前節の鹿島戦も、ホームで押し込みながら逆に先制を許し、試合巧者・鹿島の術中にハマってもおかしくはない展開だった。ところが結果はビハインドを跳ね除けての逆転勝ち。上記した“縦の速さ”を生かして2点を奪った。
ここで言う“縦の速さ”とは、自陣からロングボール一発のシンプルな攻撃で裏を狙うという安易なものを指すのではない。言うなれば、仙台は攻撃のスイッチの入れ方が非常に優れているのである。ゆったりとしたペースでパスをつないでいるかと思いきや、突如縦に鋭いパスを入れ、サイドを中心に切れのある攻撃を仕掛ける。連動性、動きの質、動き出しのタイミングなどがあらゆる要素が噛み合っていなければ、できる芸当ではない。
怪我人も多く、本来ならば苦しい状況下にあるはずなのだが、チーム全体にスタイルそのものが浸透しているからだろう、仙台は怪我人の多さからくる“綻び”を微塵も感じさせない。それどころか、前節はウイルソンに代わってスタメン出場の柳沢敦が幾度も前線でタメを作り、サイドへの供給源として効果を発揮し、なおかつ前線での質の高い動きにより、鹿島戦では同点弾を挙げた。また、アクシデントで早々と退いた梁勇基に代わって途中から出場したヘベルチが中盤から飛び出して決勝点を叩き出した。仙台には確固たるスタイルの上に、各選手が自分の持ち味を生かせるといった強みがある。
その仙台をホームに迎える柏は、直近の6戦は負けなしと、以前に比べれば状態は上向きにある。しかし、内容を見れば満足のいくものばかりではなく、6戦無敗の内訳は3勝3分と引き分けが多い。第17節の清水戦も勝ちに値する内容だったにも関わらず、2−2の引き分け。前節の大分戦もスコアレスドローだった。どうも「勝ち切れない」という印象が強い。
パフォーマンスが停滞する原因として、日本列島を襲う酷暑が大きく影響しているのは分かる。だが「90分が終わって、全員がピッチに倒れ込むぐらいまで走らなければいけない」と大谷秀和が課題を口にするように、柏が勝ち切れない時は決まって全体的に運動量が少なく、動きの質も悪く、ボールを持った選手へのサポートも少ない。結果、良い形でボールを奪い、カウンターを仕掛けてもスローダウンさせられ、遅攻になる。そして遅攻になると、今度は前にパスコースがないから後ろで回すしかなく、最終的には相手に寄せられて前線に可能性の低いロングボールを蹴り込んでボールを失う。この悪循環が続くのだ。
しかも今節対戦するのは仙台である。コンパクトな陣形と統率された守備、連動したプレッシングを掻い潜るためには相手以上に動き、サポートの意識を強め、前線は上下動や斜めの動きでスペースを作りつつ、さらにその生じたスペースに他の味方選手が入るといった攻撃面の変化、アクセントを与えなければ、あの守備を崩すことはできない。
選手それぞれが、それぞれの役割をこなし、その上で個人の持ち味を発揮する。3連勝中の仙台にはそれがあり、その仙台と真っ向からぶつかり合うことで、柏も本来の姿を取り戻してほしい。すなわちそれは、今回の対戦もがっぷり四つとなり、1点を争う攻防になることを意味するが。
試合が終わる度に選手は「修正」という言葉を使う。だが、結局は修正ができないままリーグ戦は半分以上が過ぎてしまった。リーグ戦の巻き返しのためにも、さらに来週から再開するAFCチャンピオンズリーグで勝ち進み、悲願の優勝を飾るためにも、あらゆる部分で手応えを掴むような意義のある試合となることを期待している。
以上
2013.08.16 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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