「この子達はすごいよ。本当に頑張っている。実力以上のことをやっているんだから」。
長崎の高木琢也監督は前節、最下位の岐阜にアディショナルタイムに決勝ゴールを許し、１−２で破れたものの、ここまでの試合でひたむきなプレーを見せてきた選手たちを庇った。

長崎は岐阜戦の前、通常より長いミーティングを行っている。話した内容はほとんどメンタル。高木監督は「相手は最下位だし、ものすごい気迫でやってくるからそれに負けないように」と伝えたが、指揮官の不安は的中した。

チームに慢心があるのかと問うと、「選手たちに慢心はないです。ひたむきにサッカーに取り組んでいるのはとても良くわかる。ただし、ミスを恐れてチャレンジをしていない」。ここ最近の数試合のゲーム内容について高木監督は振り返る。

恐らく、東京Ｖ戦ではハイスピードでハイテンションのイケイケフットボールを見せるために、連動性のあるダイナミックな攻撃や展開を見せてくれるだろう。そのために今週の練習では徹底した走りこみと、前線から激しいプレスをかける練習に力を入れた。いずれも開幕前から継続して行ってきたことだが、選手たちの意気込みと意識は明らかに違った。DF藤井大輔も「１点目は僕のミスでした。もう同じミスはしない。もう一度開幕前の気持ちで戦う」と勝利を誓った。
敗戦で落ち込む者はなく、そこには新たな決意のみがあった。チャレンジ精神を失わずに、連動性のあるイケイケフットボールを見せることができれば勝機は充分にある。

東京Ｖ戦で長崎のキーマンになるのはボランチの岩間雄大になるだろう。チームがチャレンジするタイミングを見極める大きな役目を担うからだ。試合中、彼が左右に首を振るときには、頭の中でその作業を行っているときだ。攻めのパスがどれだけ出せるか、東京Ｖジュニアユース出身の岩間に期待したい。

対する東京Ｖだが、失点はリーグ最小の１３で敗戦はわずか３。守備に自信を持っており、ここまで連敗がない。ただその一方でシュート数は少ない。攻撃については後ろの選手の攻撃参加は多くはなく、組織でボールを相手ゴールまで運ぶシーンは目立っていない。三浦泰年監督はここまでリスクマネジメントに長けた手堅い守備のチームを作り上げていると言えるだろう。攻撃面は前田直輝のパスや森勇介のクロスなど、選手の個が前に出ている印象だ。

東京Ｖは前節の水戸戦は0-0のドローだったが、後半はチーム一丸となって多彩な攻撃を見せた。あと少しのタイミングが合わず得点には至らなかったが、段々と個がかみ合ってきている印象を受ける。今週は大宮との練習試合を行い、スピードのある守備を行うチームとの試合経験をつんだ。長崎対策はばっちりだろう。

長崎の高木監督は東京Ｖについて「前線の選手にスピードとパワーがあるチームですね。ここ数試合、高原直泰にキレが出てきており要注意選手になる」と話していた。

長崎と東京Ｖの試合は連動性の長崎と、個を前面に出したスピードとパワーを持つ東京Ｖが似て非なるハイテンションフットボールを同じピッチでやりあうことになるだろう。恐らく見ていて面白い試合になることが予想できる。
長崎はＪリーグに入会して初めてのホーム戦でのナイトゲーム。大人の方にとってはビールを傾けながら見る試合としては最高の組み合わせではないだろうか。

以上

2013.06.14 Reported by 植木修平