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【NON STOP J2】-J2のススメ- 中島裕希(山形):ピッチを駆ける「ミスター・タフネス」(13.06.05)

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その走りは、たとえるなら獲物を狙っているヒョウやチーターを思わせる。初速から爆発的なスピードは出ているが、伸びのあるストライドはスムーズでしなやか。すべてのパワーが骨や筋肉を介し効率よく推進力に変換されていく。自分の体は自分で手入れをし、トレーナーのマッサージをほとんど受けることがないという。ゴールを奪える試合も奪えない試合もあるが、どの試合も確実にチャンスメークし、1シーズンをタフに走り続け大きな怪我もない。チームへの貢献度は計り知れない。

富山第一高校から、柳沢敦と同じルートをたどり鹿島の一員となったのは03年。しかし、名実ともにチームの主力として存在感を発揮したのは06年から6シーズンプレーした仙台時代だった。それだけに昨年、「みちのくダービー」を戦う最大のライバルチームから、しかもそこで痛い目にも遭わされている中島を期限付きで迎えることに、少なからぬ山形サポーターは100パーセント「ウェルカム」の気持ちを持てず、しばらくは「お手並み拝見」と距離を置いていたように思う。

しかし、そうしたことはおかまいなしに、中島は山形の中に飛び込んでいった。1月の新加入選手会見のときから「山形をJ1へ上げるために」という言葉を発し、その思いが偽りのないものであることを毎試合の全力プレーで証明し続けた。昨シーズンはチーム最多の9ゴール。フォワードとして得点以外の部分でも、チャンスメークすること、そしてその手段として走り抜くことでサポーターの心をつかんできた。フィールドプレーヤーとしては出場試合数41は石川竜也、秋葉勝と並んで最多、出場時間も石川に次いで2番目の多さだった。

完全移籍を果たした今シーズンも、ここまでチーム唯一の全試合先発出場中。今シーズンはゴールシーンにもそのスピードが存分に生かされている。第6節・横浜FC戦では、一見コントロールミスかと思われるほど遠くに持ち出すファーストタッチ。一発で相手を置き去りにしてゴールを奪ったプレーは、本人曰く「狙いどおり」。第16節・京都戦では約50メートルの高速ドリブルから、シュートシーンでは逆にじっとキーパーの動きを確認してタイミングを計る冷静さを見せた。

自らの決定力について聞かれたとき、中島はこう答えている。「入るときもあれば、入らないときもある。上をめざして、高いところをめざしてやっていかなければいけないので、ゴール前は大胆に、でも落ち着いてやっていきたい」。走り続けることで何かを起こせる。その信念こそが、タフにプレーできる原動力となっている。

以上

2013.06.05 Reported by 佐藤円
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