立ち上がりの印象は川崎Fに傾いていた。小林悠のヘッドを皮切りにポゼッションを強め、敵陣での展開に持ち込む。かたや湘南はセカンドボールで後手を踏み、パスが合わないシーンも散見された。ウォーミングアップ中の負傷により武富孝介が急きょスタメンを外れ、また19分には島村毅が負傷交代していた。そんな流れも含めて、ともすればネガティブに引きずられてもおかしくはなかった。
ただ、それでも川崎Fのシュートが記録として前半2本にとどまった背景には、フィニッシュまで至らせない湘南の帰陣の速さがあったろう。GK安藤駿介をはじめ、この日ゲームキャプテンを託されたクォン ハンジンら守備陣もゴール前を譲らない。加えて、武富に代わって先発した大槻周平らFW陣が足を動かし、粘り強くコースを切っていく。転じれば馬場賢治や菊池大介、また今季初先発の猪狩佑貴が積極的にシュートを狙った。前からの組織が機能するとともに、徐々に自分たちのリズムを手繰り寄せていく。
曹貴裁監督が振り返る。
「どんな相手の攻撃になろうと、選手たちが自発的に大事なポイントを押さえ、且つうちのチームの良さを出して前半から我々らしい戦いができた。満足してはいけないが、戦術の理解度を含めて全体が上がってきていると思う」
40分に記録された湘南の先制ゴールの一連は、そうした流れから生まれたものだ。大槻のプレッシャーに蹴り出されたボールが湘南のエンドを割る。安藤に始まったビルドアップから、中盤でハードワークを続ける中川寛斗が前を向く。「お互いが合った」と、前へのイメージを共有した猪狩が裏へと抜け出し枠を狙う。これはGK杉山力裕が弾くも攻勢は止まらない。今度は左サイドから、島村に代わった三竿雄斗が運び、馬場がシュートを狙う。さらにそのこぼれに反応した菊池が左足を振り抜く。「うまく当てることだけを意識して撃ちました」と振り返る、抑えの利いたシュートが鮮やかに枠を射抜いた。
落とせば決勝トーナメント進出が怪しくなる川崎Fは後半、中村憲剛と大久保嘉人を投入し、フォーメーションを変えて反撃に出る。トップ下に入った中村のパスを機にサイドの裏を突くシーンが増し、攻撃のペースは格段に上がった。水を得た魚のようにFW陣が躍動し、二度、三度と決定機を重ね、攻勢は終盤に向けてさらに加速した。押し込まれてなお粘り強く守り、繋いで打開を図っていた湘南も、敵の圧にクリアの数が増えていく。そうして83分、ドリブルで左サイドを深く抉った山本真希のクロスに小林がヘッドを合わせ、川崎Fがついにゴールをこじ開けた。
勝点1を手にした川崎Fは、Aグループ3位の磐田の結果を受けて決勝トーナメント進出を決めた。喜びを分かち合うアウェイチームとは対照的に、膝に手をつき、振り払うように天を仰ぐ姿が印象に残る。大きく息をついても止まらない。何度拭っても溢れ出る悔しさは拭いきれない。「失点はGKの責任だと思ってやっているので悔しい。どうやって守るべきだったか考えている。足下を見つめてやっていきます」。そう語る安藤の姿が大宮戦の高山薫のそれに重なる。湘南に募る悔しさは手応えゆえ。目の前の勝点3に傾ける情熱は、この先きっと裏切らない。
以上
2013.05.23 Reported by 隈元大吾
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