前週の予選リーグ第6節の結果を受け、ともに今節が今季のヤマザキナビスコカップの最終戦となった名古屋と新潟。中2日の土曜日には中断前最後となるリーグ戦第12節を控えており、冷静に考えれば双方とも主力を温存してくることは明白な一戦となった。しかし、だからこそこの一戦には面白味がある。控え選手、そして若手の絶好のアピールの場であることで、ともすればリーグ戦以上の熱気に包まれる可能性があるのだ。
特に名古屋は今季序盤を思わぬ低迷に悩まされ、ヤマザキナビスコカップとリーグ戦の過密日程をほぼベストメンバーで切り抜けてきた。ストイコビッチ監督は本来、カップ戦では大胆なローテーションを見せるタイプの監督で、そうした采配でチーム全体のコンディションとモチベーションを整える傾向がある。予選敗退は残念なことだが、これでローテーションへの障害がなくなったと考えれば、また別の期待感も膨らんでくるというもの。注目は久々の新人開幕スタメンを張るも、以降出番を失っている牟田雄祐や、3月のヤマザキナビスコカップ予選リーグ第2節でプロデビューを果たした197cmの“大型”新人、ハーフナー・ニッキあたりか。将来の名古屋を背負う逸材2名にはなるべく多くの実戦経験が必要であり、周囲の万全のサポートを整備して伸び伸びとプレーさせたいところだ。
前線では伸び盛りの田中輝希や田鍋陵太なども出場機会を得ることが予想できるが、こちらも同じく持ち味を発揮させる展開に持ち込めるかがカギ。その役割を誰が担うかは当日のお楽しみだが、経験豊富な選手が多いチームだけに、その点に関して大きな心配はない。
一方で新潟は、ディフェンスラインにやや不安を抱えての一戦となった。リーグ戦前節でレギュラーセンターバックの大井健太郎と金根煥が衝突し負傷退場。2選手ともすでに練習には復帰しているようだが、顔に裂傷を負っているため無理はできない。その試合では濱田水輝と坪内秀介がセンターバックを務めたが、このポジションをこなせる選手といえば菊地直哉もいる。新潟はこの穴埋めという点で、控え選手の奮起がひとつ試合の鍵を握る。特に濱田はヤマザキナビスコカップでは出場機会を得ているが、リーグ戦ではここまで途中出場の3試合のみ。大井、金の牙城を崩すためにも、このチャンスを逃す手はない。
またFW陣の熾烈なスタメン争いも興味深いところ。リーグここ5試合でハットトリックを含む5得点の川又堅碁がエースとなった今、ブルーノ・ロペスや岡本英也、さらには19歳の大器・鈴木武蔵らは焦りを感じていてもおかしくはない。名古屋がDF陣に新人を起用してくるならば、なおさらに貪欲さを増してゴールに迫ってくることだろう。
もちろん、メンバーだけがこの試合の注目点ではない。新潟にとっては4月のリーグ戦のリベンジという意味合いもある。豊田スタジアムでの一戦は2−0で名古屋が完勝。新潟の柳下正明監督をして「立ち上がり15分の名古屋はこれまでで今季一番良かった」と言わしめたハイレベルなサッカーで新潟を圧倒し、90分間をコントロールしてみせた試合だった。イージーなミスを連発し、自らの首をしめ新潟はその反省を活かし、翌節の横浜FM戦で勝利するなど盛り返した。メンバーが違ったとしても、前回対戦時の新潟ではない。逆に言えば、リーグ戦4連敗中の名古屋の方が、チーム状態は下り坂にあるため、新潟にとっては逆襲の好機ともいえる。
勝負の分かれ目は新潟のハイプレッシャーに対して、名古屋がどのような対応を見せるか。4月の対戦では名古屋がプレッシャーを無効化するハイパフォーマンスで新潟を後手に回らせたが、同じことを今回も実践できるかは未知数だ。できればサイドの高い位置でボールをキープし起点を作りたいところだが、そのためには堅実なビルドアップが必要不可欠。つまりこの一戦は両チームの戦術面から見れば、名古屋のDFラインと新潟のFW陣が交わるポイントが熱を帯びることになる。
状況としては消化試合だが、それでも楽しみ方は無数にあるもの。これを“消化”と言わず、むしろ采配の自由度が増した試合だと捉えて、この一戦を楽しみたい。
以上
2013.05.21 Reported by 今井雄一朗
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