直近5試合は負けなしで失点は2と堅守のうえに、今季の5勝は全てアウェイゲームの松本。千葉にとっては先制の『1点』を取るまで焦らずに、ミスから失点することなく我慢比べに耐えられるかという一戦だ。昨季ならば『1点』を取れずに引き分けたり、逆にカウンター攻撃やセットプレーで『1点』を失って負けたりしかねない緊迫した試合展開。だが、千葉は77分、交代出場のMFジャイールが松本のDF多々良淳斗の股の間を抜いたボールコントロールでの突破からクロスを上げ、松本のDF川鍋良祐と競りながらダイビングヘッドで合わせたMF谷澤達也が『1点』を奪取。今季の松本の得点の半分を生み出したセットプレー、千葉の守備の弱点のセットプレーで失点することなく勝ちきった。
試合開始わずか14秒、MF兵働昭弘のパスを受けて前を向いたFWケンペスが思い切りよくシュートを放った。枠内に飛んだシュートは松本のGK野澤洋輔がファインセーブ。千葉は6分に今度は谷澤がミドルシュートを打ったように、立ち上がりから積極的にシュートを打ってゴールを狙う姿勢が見えた。相手にしっかりと守られると、ボールを保持できれば左右に動かして打開を図ろうとするものの、前を向けても勝負の縦パスや思い切ったミドルシュートが少ないがために得点機を作れない傾向にあった千葉の変化だった。
松本は自陣に引いてゴール前のスペースを消すのではなく、千葉が後ろからパスをつなぐとディフェンスラインを上げ、全体をコンパクトにしてプレスをかけた。だが、今節は谷澤のプレーに多く見られたように千葉が球際で体を張り、パスワークも絡めて何とかして前を向こうとする意識が高く、前半はボールの支配では千葉が優勢。松本はMF北井佑季が豊富な運動で積極的な仕掛けを見せ、45分には北井のクロスのこぼれ球をFW船山貴之が見事なボレーシュート。だが、岡本が俊敏な反応でセーブして0−0で前半が終わった。
『1点』勝負が濃厚な雰囲気が強まる中での後半、千葉は47分に前線へ抜け出した兵働がシュートを打つもミートせずに野澤が難なく処理し、50分には前半にもミドルシュートを打っていたMF佐藤勇人が再び枠内へミドルシュートを打つが野澤が横っ飛びでキャッチ。松本も60分に前半から交代出場したFW塩沢勝吾がヘディングシュートを放つもクロスバー直撃でノーゴール、62分にはゴール前の競り合いのこぼれ球を拾った船山がフリーでシュートを放ったが岡本がキャッチと、互いに得点機をなかなかモノにできなかった。
ベテラン選手が多いこともあって試合の終盤のスタミナと運動量に課題があり、次第に足が止まってきた千葉に対して、延期分の試合から中3日で今節を迎えたにもかかわらず松本のスタミナと運動量は落ちない。互いにロングボールでの攻撃やカウンター攻撃の形が増える中で、松本がセカンドボールを拾うことが多くなって千葉を押し込む。この展開では我慢しきれずに失点しがちな千葉だったが必死に耐え、前述のようにジャイールの『個』の力の強さを生かした突破から谷澤が決勝ゴールとなる『1点』を取って千葉が勝った。
『1点』を取りきれない課題をクリアできず、6試合ぶりに敗れた松本。だが、試合を通してのハードワークは素晴らしく、力を出し切った選手を大声援で迎えた松本サポーターも素晴らしかった。フクアリの雰囲気は熱気に満ちていて心地良かったが、大勢来場した松本サポーターの一体感ある応援、それに負けまいと声を出して応援した千葉サポーター、そして迫力ある激戦を繰り広げた両チームの選手のおかげだ。
鈴木淳監督の采配も奏功し、今季初の4連勝の千葉。17本のシュートで1得点の決定力不足、終盤に必ず押し込まれる守備は問題だが、何よりも必要な勝ち試合を続けているのは大きい。だが、J1昇格には試合内容の質を高める攻守の連動性の向上がやはり必要だ。
以上
2013.05.20 Reported by 赤沼圭子
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