●曹貴裁監督（湘南）：

「試合終了して２０〜３０分になりますが、死力を尽くした戦いだったので、僕も選手と一緒に走りきった気分です。湘南スタイルをやらない限りこのリーグにいる意味がないと選手たちには言い続けていて、２月にここでプレシーズンマッチを大宮さんと戦って、そのときの悔しさが選手にもあって、今日は結果は残念でしたが堂々とプレーした選手たちに『よくやったよ』と言ってあげたい。ただ、ああいうところで決める力は我々にまだ足りなくて、そこで勝点を持ってこれないというところはずっとやっていかなくてはいけない。総力戦ということで、今日ピッチに立った選手全員で戦うとずっと言い続けていた。２月はまだ手探りの段階で、階段の上には上がっているけどどの辺まで階段が続いているのか分からない状態だったのが、今は何となく２階、３階、４階が分かって、頂上がどの辺なのかは分からないけど、自分たちの相手に対する立ち位置を選手がしっかり感じてくれるようになった。今日のゲームでも、９０分通してお互いに勝つチャンスがあったと思うが、負けてしまって悔しい。ただ、今日は遠くまで来てくれたサポーターが、負けた中でもアディショナルタイムもずっと声援をしてくれて、終わったあとにアルディージャのサポーターも我々のプレーに対して声援を送ってくれたのは、本当に一人の大人として感動した。僕はドイツに２年くらいいて、死闘には相手チームからも当然に拍手が出て、このスタジアムの雰囲気を含めて今日は本当にヨーロッパにいるような気がした。サッカーを通じてああいう空気が生まれるというのは、大宮の富山君は僕の大学の後輩ということで最後に挨拶に来ましたが、彼の勇気あるプレーも含めて、いろんなものがこのスタジアムでこういうシーンを生み出してくれたんだなと思います。大宮さんに追いつけ追いこせでやっていかなきゃいけないし、来週もナビスコカップと広島戦が迫っていますが、その中で自分たちは上に上にまっすぐ上がっていくしかないので、その質を高めて選手たちと一緒に努力したいと思います。本当に選手たちはよくやってくれたと思います」

Q:最終ラインの真ん中に下村選手を起用して、島村選手はベンチにも入っていませんでしたが、その起用の意図は？

「戦術的なことはあまり詳しく言えません。今日戦うに当たって、いろんな意味でベストなメンバーを組んだつもりです。島村が過去に何をしたか、下村が過去に何をしたかとかは全く関係なく、今がどうかということでメンバーを決めている。選手というのは、前の試合で得点を取ったら次の試合も自動的に出場機会が与えられると思いがちだが、僕が選手の時もそういう感じでしたが(笑)、僕は選手たちにはそういうふうには言っていない。次の週に満足している感じがあればピッチには立たせないし、逆にミスをしてもそれを振り返ってしっかりやるのであればチャンスを与えてきた。そのマネジメントには賛否両論あると思うが、週の頭の火曜日に『次はレギュラーだよ、今週は調整でいいよ』というやり方はしていないということです」

Q：内容は素晴らしかったが、これだけ選手を走らせられるのはどういう指導を？

「そんな体罰みたいに言わないでくださいよ(笑)。真面目に聞かれても困っちゃうんですが、一つには、僕は指導者という立場だからピッチには立てない。選手はピッチに立ってプレーするわけで、どっちを優先して考えるかというと、一番は選手。よく『気持ち良く選手にやらせる』と言われますが、気持ち良くやらせてはダメで、勝点３を追うためにチームを忘れないで責任を負ってプレーすることに喜びを感じない限り、プロサッカー選手として絶対に成功はしない。ただドリブルをする、フェイントをすることに喜びを感じているようでは、その域から出られない。そのことは雨が降ろうが槍が降ろうが雷が鳴ろうが、ずっと選手たちには言ってきた。その自分が言ったことに、自分が見た時に、嘘っぽいなとか、ごまかすために言ってるんだなというようなことは絶対に言わないようにしてきたし、これからもそうしていきます。だから選手にきついことも言うし、逆に負けても今日なんかは『よくやった』と話をします。その僕の言葉が全てだと。包み隠さず言うので。それを聞いてどう変わっていくかというのを選手たち自身で感じてくれということ。選手がプロサッカー選手になった時に、上に行きたいとか勝ちたいという意欲が当然あって、それが何らかの原因で削がれることになると、戦術的に何かやっても結局上手くいかないと思っている。よい意味で勝手にやらせていて、選手の判断を奪うことは絶対にしないと決めてやっている。それが人から見てどうなのか分からないけど。僕がああだこうだ言っても、プレーするのは選手だという基準は絶対に自分の中にあるということです」

以上