●柱谷幸一監督
1993年5月15日に華々しく開幕したJリーグ。その翌日に万博でG大阪と対戦した浦和レッズ。今ではビッグクラブに成長した浦和でこの試合、背番号11のエース番号を背負ってピッチに立ったのは、現在は北九州で指揮を執る柱谷幸一監督だ。開幕までの思いや秘話、これからのJリーグについて語っていただいた。
Q:Jリーグが開幕する前から選手としてプレーしていましたが、開幕が近づいてきた時はどんな気持ちでしたか?
「プロリーグがなかった頃は、僕の目標も高校の体育教員になることでした。大学で免許を取って、高校のサッカー部の監督になって全国高校サッカー選手権に出るのが目標でした。ただ大学の時に日本代表に招集されて、もう少しサッカーをやりたいと感じたので、日産自動車(現横浜FM)に入りました。当時は27歳までに教員試験を受けないと教員になれないというところが多くて、同級生もその道を歩み始めたので、僕もそろそろと考え始めたその頃に『Jリーグができる』という動きが出てきたんです。日本代表でバリバリ活躍していたし、『Jリーグができるなら、今ここで教員になったら一生悔いが残る』と思いました。その後、日産から浦和に移籍して開幕を迎えました。
あと1〜2年Jリーグ開幕の動きが遅かったら、僕は教員になっていたでしょうね。そう考えると本当に良いタイミングでJリーグができて、5年間プレーできたのはとても幸運だった、僕らの上の世代にはJリーガーになれなかった
人がたくさんいたわけですから」
Q:開幕戦のことは覚えていらっしゃいますか?
「前年の天皇杯準決勝で肉離れを起こして、ケガの治療で、開幕戦までほとんどトレーニングできませんでした。でもやっぱり開幕戦には出たかったので、結構無理して間に合わせた。それで、その試合でまた肉離れを起こしてしまったんですよ(前半29分で交代)。だから自分にとっては良いコンディションで試合ができなかった印象が残っています。でも、あの開幕戦の興奮は十分に味わうことができました」
Q:20年が経ちましたが、監督から見て日本サッカー界の変化とは?
「開幕して最初の4〜5年はチケットが取れないほど、会場はどこも超満員だった。今から思うと、ちょっと異常でしたね。その後は徐々に来場者が減っていくわけですが、あの時ブームの時に何かをしておくべきだったと思うところはあります」
Q:現在は北九州監督をされていますが、今後はJリーグとどのように関わっていきたいですか?
「地域にサッカーがまだ文化として根付いていないと感じていて、それはあのブームの頃にしておかなかったことがあったからだと。今さらですが、地道にその地域で―自分の場合は北九州ですが―、サッカーが文化として根付いていくように取り組んでいかないと。各クラブがその地域でやっていくことで、日本全体で文化として根付いていくと思うんです。目先のこともありますが、地道に、少しずつでもファン・サポーターを増やして定着させていけば、Jリーグは50年、100年と続いていくと思う。まずは今スタジアムに来場してくださる人たちを大事にして、プラスαの来場者を増やすことが、これから大事になってくるんじゃないでしょうか?」
●渡大生選手
「5月15日が何の日か知っていますか?」と聞いたら「ちょっとわかりません」と不思議そうな表情で答えてくれた渡大生選手。今季プロ2年目の渡選手は、6月25日に20歳の誕生日を迎える。Jリーグと同い年の渡選手にも、話をうかがった。
Q:Jリーガーを目指し始めたのはいつ頃ですか?
「つい最近です(笑)。高校の時も自分がJリーガーになれるとは思っていませんでした。正直、北九州に拾ってもらって道が拓かれたと思っています。三浦泰年・前監督に誘われて、北九州の練習に来たのが2年前の夏。Jリーグは遠い世界、自分とは違う世界だと思っていたので、Jリーガーになれるとは夢にも思っていなかったです」
Q:今、Jリーガーとしてプレーしていますが?
「自分がサッカーをすることで、人に夢を与えられる。そういうことってなかなかないし、すごく幸せな職業だと感じながらプレーしています」
Q:Jリーグが20周年を迎えました。今後、どのようなリーグになってほしいですか?
「若い自分が言うのは大変恐縮なんですが、ヨーロッパのような盛り上がり方…試合前から街全体が盛り上がるような…になったらいいなと思います。街と街がぶつかりあってファンやサポーターが楽しんでくれるような、そんな雰囲気の中でプレーできたら僕らも幸せですからね」
Q:20歳を迎えたJリーグに、メッセージをお願いします。
「これからも共に歩んで行きましょう!」
以上
2013.05.16 Reported by 坂本真
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