甲府の4−4−2と磐田の3−4−2−1がマッチしないなか、混沌とする立ち上がりを予想していたが、磐田のキックオフで始まった前半はやってみると野球のように攻撃と守備が交互に来る展開。羽生直剛は、「相手がボールを持つとリトリートして持たせる感じで、『次はそっちの(攻撃の)順番』という流れだった」と表現する。つまり、お互いに相手ボールの時には守備のブロックを作ってから奪いに行ったということ。それでも2回表の攻撃あたりになると磐田の方が優勢なことは明白になっていた。ただ、甲府の守備は、ある程度押し込まれても失点しないという意味ではほぼパーフェクトで、アンマッチながらマークミスができる場面はなかった。その代償として攻撃のパワーは減じていたが、野球にたとえるなら磐田は三塁までランナーを進めるも無得点で、甲府は二塁までという展開。22分には山田大記のパンチのあるミドルシュートが決まりそうになるなど、普通に考えれば磐田の方が先制に近いという予感もあった。ただ、有利に進めているチームが決められないときはカウンターが流れを変えるのもサッカー。
試合後に聞いた選手コメントでは、青山直晃は第8節の横浜FM戦からの回復が完全ではなかったのか、「ヤバかった。身体が重い」と感じながらのプレーで、磐田の駒野友一は「最近は3バックのチームとの対戦が続いていたので、チームとして4バックに対するプレッシャーが上手くできなかった」、山本康裕は「前と後ろがバラバラ。最後までチグハグだった」ということを感じていた。結果を踏まえてのコメントでもあると思うが、記者席からは感じ取ることができなかったから、磐田が先制する可能性の方が高いと思っていた。甲府が決定機を作るには25分に山本英臣がプレッシャーを掛けられた中で見せたワンタッチパスのように、相手をいなすパスの精度やコンビネーションかカウンターが必要だった。でも、甲府のゴールチャンスはPKで訪れた。福田健介が磐田の左サイドのスペースに出し、走り込んだ柏好文が倒されてPK奪取。蹴るのはもちろんウーゴ。
「ヨシカツ、ヨシカツ、ヨシカツ」とコールを背中で受ける川口能活は右に反応したが、ウーゴが蹴ったボールはその指先あたり、ポストギリギリのところを通過してゴールイン。少し重苦しかった山梨中銀スタジアムの雰囲気が一気に明るく沸き上がった。スタジアムDJは「ご〜〜〜〜〜〜〜る」といつもより長めに叫び、声が裏返っていた。39分には羽生、平本一樹、ウーゴが中央で推進力のあるパスワークで決定機を作り出したが、ウーゴのシュートはバーに当たって決まらなかったが、PKの1点でこれまで持っていた磐田に対する恐怖感というか不安がだいぶん消え去った。これはピッチのほとんどの選手や城福浩監督には関係ないことで、長年甲府を応援し続けているファン・サポーターの記憶の問題。甲府は合計で過去3シーズンJ1で戦っているが、磐田戦は1勝(カップ戦)2分5敗と、リーグ戦は未勝利でいい思い出はなかった。2010年の天皇杯でも敗れている。特に、“福西のいる磐田には苦戦する”というイメージだったが、福西さんは今は解説者で時代は変わり向き合うのは今のヤングジュビロ。
後半の立ち上がりに磐田の決定機をしのいだ甲府は、体力差が後半により際立つ柏のドリブルや裏への突破でサイドの主導権を取りに行った。60分には柏がドリブルしてからウーゴに入れたグラウンダーのクロスが決定機になりそうになるなど、数は多くなかったがチャンスを作って2点目の可能性を高めていた。磐田も金園英学(54分)、山崎亮平(65分)と、ベンチに座らせておける選手層が羨ましいストライカーを投入して次の1点を取りに行く。しかし、その2人が怖さを発揮する前に、平本の突破(65分)が再び甲府のPKとなり、キッカーのウーゴが決めて2−0と次の1点は甲府に入った。
点差は2点に広がったが磐田の山崎のドリブル突破がかなり効果的だったし、金園のフィジカルの強さとスピードを活かした攻撃は脅威。72分には山崎がドリブルで抜いて決定機を作るなど、交代選手が流れを引き戻していく。そして、82分に前田遼一が右サイドから入れたクロスを金園が決めて1点差。残り時間と磐田の勢いを考えれば甲府には不安な状況。87分にFWウーゴを下げてDF盛田剛平を投入して5バックで必殺の逃げ切り態勢を城福監督は選択。前線に高さのある磐田がパワープレーで来たときには189センチの盛田を真ん中に置く5バックは有効な布陣だが、山崎のドリブルや足下で繋がれたときには、不安定な面も見せた。おまけに、90分前に出たアディショナルタイム表示は6分。4分程度と予想していたので、長い長い6分間となったが、それでもなんとかしのいで甲府が勝点3を手に入れた。
磐田は前節の湘南戦のいい内容を続けることができなかったことを2日間でどう修正してF東京戦に繋げるのか興味があるが、まだいい内容とその自信が定まっていないだけに気持ちでカバーしなければならない部分は小さくはないはず。森下仁志監督の手腕と選手の自覚が問われるだろう。甲府は欲しかった勝点3を、磐田相手にホームで挙げることができたことで自信や求心力はより高まった。課題はあるが、そのレベルは前進している。勝点1をもぎ取る戦いから、勝点3を取る戦いに進み、今度は勝点3をより高い可能性で取るという課題に。このままスムーズに右肩上がりで進めるほど甘くはないJリーグだけれど、この前進はチームのベースアップに繋がっている。次の第10節はお互いに中2日の総力戦マッチ。やれることが少ない中でやるしかない第10節。両チームのサポーターの皆さん、スタジアムで選手の背中を押してGW最後の試合をいい思い出にしましょう。
以上
2013.05.04 Reported by 松尾潤
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