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【J1:第8節 F東京 vs 川崎F】レポート:F東京が川崎Fを下し、多摩川クラシコを制す。差を分けた攻守の移行期(13.04.28)

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ランコ・ポポヴィッチ監督は試合前日の練習後と同じような言葉を試合後の会見で使った。
試合前日、川崎Fの守備体系の話になると、「彼らに対して俺たちは賢く、粘り強くやる必要がある。焦らないことがきっと大切になるだろう。でも、じっくりとやることは必要だが、それは動かないということではない。アクティヴにプレーし、流れを読みながらアクションを起こしていかなければいけない」と答えた。

そして、試合後の会見では「試合の流れ、状況に応じて賢く粘り強く、場合によってはアグレッシヴに戦えていた。90分間を通してボールを動かしてハイペースで攻めていくことが理想。でも、それができないときもある。自分たちがそういう中で、うまく運べないなら相手にもやらせないことができた。組織的な守備を整えながら、体を休ませてボールを奪ったら前に出て行く。そういった効率的なプレーもできていた。苦しい時間帯での意思統一もできていたと思う」と選手たちを称えた。このゲームの焦点は指揮官のその言葉の中にあった。

F東京が川崎Fを退けて2−0でリーグ戦連勝を飾った。ただし、期待したほどの試合にはならなかった。前半は互いに水を存分に含んだピッチに大苦戦し、パスミスを連発してしまった。特に、F東京の渡邉千真は繊細なボールタッチができず、「みんなに助けてもらった」と言う。縦パスを受けに入るが、何度もボールロストを繰り返し、試合中に自分の頬を両手で叩いた。

組織立った守りでボールを拾い集め、そこから川崎Fが攻撃を仕掛ける展開になってもおかしくはなかった。しかし、そうはならなかった。徳永悠平が「ミスは多かったけど、それをカバーしあえた。一人ひとりの集中力も高かった」と話せば、米本拓司も「ミスは仕方ない。でも、それをカバーしあうことがチーム全体としてできていた」と言った。二人だけでなく、F東京の多くの選手が同じフレーズを試合後に喋っていた。

この試合、特にF東京の攻撃から守備への切り替えの速さが際立った。攻守の移行期にボールを奪い続けたことで、川崎Fを自陣に押し込むことにも成功した。権田修一は「これができれば勝てるという試合だった。みんな走っていたし、意識的にプレスを掛け続けた。それができれば、相手を難しい状況に追いやることができる。ただし、走り続けているわけじゃない。バランスよく全体が動けていたので、いい意味で省エネ。連動してボールを追い込むから、今日はミスがあったけど、マイボールにしてシュートまでいけていた。DFラインの横ズレもスムーズだったと思う」と言い、連動したプレスから始まるF東京の守備を勝因に挙げた。たとえボールを失っても、ファーストDFがすぐにパスコースを限定し、囲い込んでボールを奪った。それがミスによって生まれる穴を最小限に抑えた要因だ。

渡邉千真は確かに、ミスが多かったが、彼の切り替えの速さと迫力あるプレッシャーはこの試合でも目立っていた。さらに、東慶悟の献身的な動きも加わって高橋、米本のドイスボランチがパスの行方を予測し、いち早く相手からボールを強奪できていた。また、中盤を適正距離に配置できたのは、最終ラインが勇気を持ってラインを押し上げたこともそこに付随している。

綻びを埋めたF東京に対して川崎Fは、そのプレスをかわせず、パスミスを犯してピンチを招いた。大島僚太は首を傾げ、「奪った後に攻撃につなぐ守り方をやりたかったが、相手のつなぎにミスが出てチャンスになりかけたときに、またミスを犯してしまった」とため息まじりに振り返った。結果的に、その差がボール保持率にも反映された。

F東京は、相手の陣形が崩れたときに攻め入って効率的に決定機をつくった。22分に、ルーカスが決め、65分には東が追加点を挙げた。芝生の乾き始めた終盤には、すでに2点差がついていた。そこから追いつく足を川崎Fは溜め込んではいなかった。

川崎Fの風間八宏監督は「簡単に言えば、積極性が足りなかった。プレッシャーを早く感じてしまっていた。ピッチがすべるのでボールのスピードに慣れなかった。そこでテンポを上げすぎた。向こうもとりにくるので速さを感じすぎた。もっともっとボールを引き出して、もっともっとボールを触りたいという意識でやってほしいと思います」と話している。

単純な話だ。ボールを持つサッカーは楽しい。だからこそ、横取りされたボールを早く取り戻す。そして、また楽しい時間を始める。もちろん失わないことが一番だが、ミスは起こるものだ。パスワークとプレスは対の関係にある。それを改めてF東京が体現した。この日のプレスに、パスワークの精度をさらに上げなければいけない。大切なのは、次だ。継続してこそ本物となる。おぼろげだった強さの形は、線を濃くし始めている。

以上

2013.04.28 Reported by 馬場康平
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