爆弾低気圧の影響に左右されず、好調・富山に先行される展開にも動じなかった栃木は、今季初の連勝を逆転勝利で飾った。その立役者は、交代後わずか1分で結果を残した三都主アレサンドロ。最も諦めの悪い男が、極上の結果を引き寄せた。出場機会に恵まれなくとも真摯に練習に取り組んだからこそ、限られた時間の中でチャンスが巡って来た。ベテランが奮起し総合力で勝ち取った勝利は、さらにチームを加速させる材料になるのは言うまでもない。
3月を辛うじてイーブンの成績で終えた栃木にとって、捲土重来を期する4月。絶好のスタートを切り、最高の状態で水戸との「北関東ダービー」に挑める。ようやく流れを掴んだが、「ダービーは順位や勢いは全く関係ない」と古巣相手に菊岡拓朗が気を引き締めれば、松田浩監督も「相手は並々ならぬ覚悟で臨んでくる」と昨年の覇者に警戒心を強める。3連勝と覇権奪還が懸かる一戦も、前節同様に苦しい展開が予想される。ただ、先制されても追加点を許さず、試合を引っ繰り返した成功体験は小さくなく、必ずや水戸戦にも活かされるに違いない。恐れず、驕らず、自信を持って王者に立ち向かえばいい。
「(水戸は両サイドバックが高い位置を取るので)カウンターが活きる場面があると思う。相手は長いボールを使うことが多く、プレスバックしてしっかりセカンドボールを拾い、前向きにプレーできるようにしたい」(菊岡)
水戸は中盤の両サイドの選手が内側に絞り、その空いたスペースを両サイドバックが使う攻撃を得意とする。相手の形に持ち込ませないことが肝要だが、仮に持ち込まれたとしても隙のない守備で応戦することが求められ、ボールを奪ったら積極果敢にスペースに飛び出せればチャンスに繋がる。今週のトレーニングでは切り替えの際の状況判断を磨くと同時に、特にゴールに飢えている菊岡が2列目から質の高いランニングでゴールに迫るシーンを数多く作った。前節の決勝弾はサイドを攻略してから生まれている。今節も同じような形からのゴール奪取に期待が持てる。
鈴木隆行をいかに抑えるか。栃木が主導権を握る上で重要なポイントになるだろう。対応に当たる當間建文は、「前半から激しい戦いになると思うが、したたかに90分やりたい」と、キーマン潰しに静かなる闘志を燃やす。前節、負傷退場したパウリーニョが戦線復帰したことは心強く、菊岡が言うようにセンターバック2枚とダブルボランチの4人で挟み込み、相手を苛立たせるような守備が出来れば攻撃力は半減する。序盤から気を抜かずに、ハードかつタイトな対処をしたい。
18位に沈む水戸は、ここ5試合未勝利と絶不調。前節も松本に1‐2で敗れた。試合内容は悪くないが、今季は複数得点を一度もマークしておらず、攻撃陣の奮起が必要不可欠になる。指揮官も手をこまねいているわけではない。柱谷哲二監督は前節、中盤の配置をいじった。ボックス型からダイヤモンド型に変更し、苦境から脱するためにテコ入れを図った。新システムは一定の成果が得られたものの、肝心の結果が伴わないことに変わりはなく、依然として暗いトンネルから抜け出せずにいる。だからこそ、栃木戦を浮上のきっかけにしたいという思惑が透けて見える。連覇に向けてこの一戦を落とすと可能性が狭まるだけに、何としても勝点3を持ち帰りたいところだ。
「バトルで激しさを避けていたら勝てない。どんな展開でも1対1では負けてはいけない。そこで勝つことが試合に勝つ近道。僕はそれが見えやすい選手だと思う。気持ちのこもったプレーをしたい」
菅和範はダービーを単なる「試合」とは捉えていない。「バトル」と位置付け、既に鼻息は荒い。互いのプライドが激突すれば、死闘になることは必至。あらゆる局面で相手に競り勝てれば、90分終わった時に堂々とピッチには栃木が勝者として立っているはずだ。二度と昨年のような悔しさを味わわないためにも、北関東の覇権奪還に全力を注ぐ。水戸戦は3連戦の頭だが、後のことなど考えなくていい。とにかく、目の前の一戦。今に生きよう。
以上
2013.04.13 Reported by 大塚秀毅
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第8節 栃木 vs 水戸】プレビュー:単なる試合ではない。今節はバトルだ!5戦未勝利の18位・水戸を撃破し、栃木は連勝を3に伸ばすと同時に北関東の覇権も奪還する。(13.04.14)
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