4点・5点・2点・3点。
4試合で14点と爆発的な攻撃力を見せているのが、今季の横浜FMの特徴だ。そのキーマンは、何といっても5得点のマルキーニョスと3得点の中村俊輔である。
昨年の広島ビッグアーチ(現エディオンスタジアム広島)での対決では、青山敏弘の64メートルロングシュートで広島が先制したものの、横浜FMが逆転。広島の攻撃を中央の堅い守備で封じ、サイド攻撃とセットプレーからマルキーニョス・齋藤学・富澤清太郎の3人がゴールを叩き込んだ。特にマルキーニョスの得点は、マークについた山岸智の上から叩き込むスーパー・ヘッドで、この得点がゲームの雰囲気をガラリと変えてしまった。
当然、マルキーニョスの存在をどう消すかが、広島の守備陣にとって大きな課題となる。塩谷司は、「とにかくシュートが上手い。今までに経験したことのないようなスタイルを持っている」と警戒心を怠らない。「大切なのは、いいポジションをとること。相手の位置取りを確認し、守備ラインに声をかけ、フリーにさせないことが重要。そこを怠らなければ、封じることはできると思う」。若きストッパーの意気込みは強い。しかし、そういう強い想いをはぐらかし、気負いを逆手にとってゴールを決めるのが、マルキーニョスという熟練のストライカーの役どころだ。
そしてもう一人の重要人物が、中村俊輔である。今季、既に直接FKから2得点、CKから1得点。「魔法使いの左足」がギラリと輝き、異次元の力を吸収したボールは必然のようにネットに吸い込まれる感覚に陥る。それほど、彼のプレースキックは切れている。昨年の広島との対決でトドメをさした富澤のゴールも、中村のCKが起点。簡単にセットプレーを横浜FMに与えることは、広島にとっては危険この上ないと言える。
ただ、確かに横浜FMは好調だが、広島のチーム状態も決して悪くはない。ACL浦項戦では確かに敗れたが、高萩洋次郎・ミキッチ・山岸智と、主力が登場する度に相手を追い込んでいた。リーグ戦に限っていえば、初戦の浦和に敗れた後は2勝1分。メンバーを入れ替えて臨んだACLでの3連敗のためにいい印象は残していないが、リーグでの順位は5位。7得点3失点、2試合連続完封中という数字も含め、及第点の戦績である。
青山敏弘や森崎浩司の負傷は痛いが、イキのいいプレーを見せる岡本知剛は試合毎に成長。清水戦で切れ味を証明したベテラン・中島浩司の存在もあるし、大きな混乱はあるまい。森崎和幸という大立者が中盤に君臨すれば、岡本にしても中島にしても、本来のストロングポイントである攻撃面で力を発揮できる。青山とは違った形での攻撃スタイルを二人が持っていることを考えても、現状は決してネガティブではない。
勝負のポイントは、何といっても先制点だ。横浜FMは今季、2度にわたって逆転勝ちを収め、昨季も広島相手に逆転を演じているが、それでも広島が先制した時のブロックを崩すのは決して容易ではない。一方、ホームチーム側の立場からすれば、優勝した昨季ですら、先制点を奪われた後に逆転勝利をおさめた試合は、クラブ・ワールドカップでの蔚山現代戦以外にない。広島の攻撃力をもってすればもっと逆転勝ちが増えてしかるべきで、そこは試合を運ぶ上での大きな課題ではある。
ただ、昨季の先制した試合での勝率.826は、リーグ2位。先制試合数23もリーグ1位ならば、勝利数19もダントツでトップ。「先に点をとれば勝てる」という自信は強く、だからこそ「0-0が長く続けば、自分たちの試合」という言葉が多くの選手たちから聞こえてくる。その傾向は、今季も同様。先制点をとった2試合はしっかりと勝利し、逆に先に失点した試合はACLも含め勝点をとれていない。横浜FMの守備陣を考えても、どうやって先制点を奪うかに注力する必要があるだろう。ただ、昨年は2試合とも、横浜FM・樋口靖洋監督は「広島に対して特別な対策を講じてきた」(森保監督)。サッカーを知っているベテランが多い横浜FMならば、中2日とほとんど調整する時間がなかったにしても、戦術理解に問題はあるまい。そこを打ち破る力があるかどうか。広島にとって、今季を占う試金石となる。
明日は強風の心配もあり、天候や試合状況に応じて臨機応変にサッカーを運用するセルフマネジメントの力も求められる。つまり、ただ走ってボールを蹴るだけでなく、頭脳戦が大きなポイントになるこの試合、サッカーの奥深さを感じることのできる興味深い決戦となることは間違いあるまい。
以上
2013.04.05 Reported by 中野和也
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