2005年と2009年のワールドカップイヤー前年、柏はともに開幕戦で川崎Fと対戦し、どちらも1−1の引き分けに終わった。その2つのシーズン、柏は降格という憂き目に遭う。そして、ワールドカップイヤー前年となる今年のJリーグ開幕戦、柏の相手は皮肉にも川崎Fとなった。
冒頭からあえてこの件について触れるのは、今の柏は数年前とは比較の対象にはならないほどの力を持つチームへと変貌を遂げたからだ。ネルシーニョという名将によって再建されたチームは、J2優勝、J1優勝、天皇杯優勝と勝利に彩られ、FIFAクラブワールドカップ、AFCチャンピオンズリーグ2年連続出場と国際経験も積んだ。現在の柏は、Jリーグ制覇とACL優勝を狙う“勝者のメンタリティー”を持つチームである。
その証拠が、先日のACL初戦、貴州人和戦での勝利だろう。キャンプから取り組んできた3バックシステムに手を施し、“変則4バック”へとシフトチェンジを行った。その結果、貴州人和の強烈なハイボール攻撃やカウンターの前に屈することなく、大アウェイの雰囲気漂う中国の地で非常に落ち着いたゲーム運びを見せ、見事白星を手中に収めた。待望の柏移籍初ゴールで勝利をもたらしたクレオは「私だけではなく、チーム全体が調子を上げてきている」と自信を露わにし、プレシーズンマッチのちばぎんカップ、FUJI XEROX SUPER CUPの敗戦が悪い方に影響するどころか、露呈した課題をきっちりと修正し、アジアの戦いに生かす能力の高さを披露した。
対する川崎Fは、柏、浦和、鹿島が敢行した大型補強に隠れてしまった感はあるが、大久保嘉人、中澤聡太、パトリックら実力者を加えるという充実した補強を行った。風間八宏監督就任2年目を迎え、ボールをつないでいく攻撃的なスタイルはさらに浸透し、昨シーズンは柏の2戦2勝とはいえ、間違いなくチーム力は大きくパワーアップしている。
2月16日、川崎Fは栃木とプレシーズンマッチを行い0−2で敗れたが、キャンプの最後に組まれた試合であることを考えれば疲労の色合いは濃く、コンディショニングが万全ではなかっただけに、結果をそのまま鵜呑みにすることはできない。その疲労感を抱えた中でどれだけのプレーができるか、現時点での課題は何かを認識するため「この疲れた中でやることには意味があった」(風間監督)との意図もあった。あれから2週間が経ち、コンディションを整え、微調整によってチーム力は格段に向上しているだろう。柏がちばぎんカップの千葉戦とACLの貴州人和戦で全く異なるパフォーマンスを見せたように、川崎Fもまた、2週間前とは全く違ったチームとなって日立台に乗り込んでくるはずだ。
川崎Fは1トップにパトリックが入り、前線の両ワイドを大久保、レナトが務め、彼らを操るのが司令塔の中村憲剛となる。スタイルはポゼッションを基軸にしているが、柏が押し込んだ場合には、時間と手数を掛けずにパトリックの高さを使いつつ、両サイドのアタッカーの個の力を前面に押し出してきてもおかしくはない。深読みしすぎかもしれないが、ズラタン ムスリモヴィッチ=パトリック、YU HAI=大久保、CHEN JIE=レナト、ズヴェズダン ミシモヴィッチ=中村と置き換えれば、先日のACL貴州人和戦は、ネルシーニョ監督の頭の中には“仮想川崎F”という構図もあったのではないかとさえ思えてくる。百戦錬磨の智将は、目の前の試合を采配しながらも先を見据えることのできる指揮官である。となれば、柏は落ち着いたゲーム運びを見せた貴州人和戦の戦い方を踏襲すればいいだけだ。しかも大アウェイの中国ではなく、会場は圧倒的サポーターが後押ししてくれるホーム日立台、ピッチコンディションも申し分ない。
昨シーズンの躓きは、開幕戦の横浜FM戦で3度リードを奪いながらも勝ち切れなかったことに始まった。それは直前のACLアウェイ戦、ブリーラムでの敗戦でリズムを狂わされたことも一因にある。だが今年は逆だ。貴州人和戦で良い形で勝利を収めた。敵地で勝利を収めた直後、「去年の経験が今年に生きた」と大谷秀和は語っている。それはJリーグの開幕戦でも同様のことが言えるだろう。ACLの白星発進は、柏にとってJリーグの開幕ダッシュの狼煙となる。
以上
2013.03.02 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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