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【AFCチャンピオンズリーグ2013 広州 vs 浦和】レポート:浦和はACL黒星スタート。相手の術中にはまってカウンターに沈んだ(13.02.27)

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ペトロヴィッチ監督は「チームの資質は相手よりも上回っていると思う」と話したが、敵将のマルチェロ・リッピ監督からすると「してやったり」といったところだろう。典型的なイタリア人監督とって、ポゼッションは大きな意味を持たない。勝利のためにリスクをできるだけ下げ、且つもっとも効率的な策を打つのが彼らの流儀だ。明確なスタイルでボールをつないでくる浦和に対し、広州恒大は注文どおりのカウンターでゴールをこじ開け、プラン通りの試合運びで勝利をつかんだという流れだった。

リッピ監督は浦和の戦い方を十分に理解していた。スタートのフォーメーションはアンカーを置く4−3−2−1だったが、守備に回る際にはアンカーがDFラインに落ちて5−2−2−1に変化。広州恒大は浦和が普段やっているようなゴール前に「バスを置く」守り方をしてきた。高さのない浦和はゴール前でスペースを消されると攻撃が非常に苦しくなるというのは昨年から見られた現象だが、広州恒大はまさにその展開に持ち込んだ。

さらに広州恒大はアンカーを1枚落とすだけというシンプルな動きで浦和のシステムに噛み合う形に変化し、ミラーゲームに持っていった。ミラーゲームになれば個の能力差が試合の優劣に反映されやすくなるが、そこでは負けないと踏んだ戦い方だった。実際、浦和はボールを握ってアタッキングサードまで運ぶことはできていたが、最後のところで崩しきれずに跳ね返されるパターンが多かった。

あとは重心の低いその状態からどうやって点を取るかということになるが、広州恒大は前線のワールドクラスの外国籍選手3人だけでゴールまで持っていけるので問題なかった。バリオス、コンカ、ムリキの3人は自分の前にボールホルダーがいるときはプレッシャーをかけに行くが、自分の背後に通されたら戻って守備をすることはあまりない。(特にバリオスとムリキ)。前に残ることで相手に圧力をかけるのが彼らの仕事だからだ。「1つ抜けた時に3枚残っているような状態で、そこを使われてやられることは多かったので怖かったりはした」と柏木陽介も振り返っている。

しかも、彼らはただ前で浮いていただけではなく、カウンターの効率を上げるための工夫もしていた。1つは味方が浦和の攻撃を跳ね返すことを見越し、コンカがセカンドボールから攻撃を組み立てやすいポジションに入ること。浦和攻撃時の4−1−5は中盤に広大なスペースができるので、コンカはそのスペースを有効活用していた。そして11.5列目に入るムリキも空いているスペースにうまく入ってカウンターにつながるパスを引き出そうとする。ムリキはアタッキングサードでパスを受けてラストパスを出すか、自分でシュートまで持っていくのが主な役目で、最前線のバリオスはゴール前で体を張ってタメを作るか、最後の仕上げをするというのが基本的な攻撃のイメージだった。

もう1つの工夫は、浦和のボランチが攻撃を組み立てるところをボールカットの狙いどころとしていた点。浦和のビルドアップはボランチがボールを失わないことを前提として成り立っているので、そこでボールロストが起きるとピンチを招く危険性が増すのだが、広州恒大はそれを狙っていた。先制点はまさに理想通りの形だったはずだ。中盤でボールを奪い取ってムリキにスルーパスを出し、ムリキが圧倒的な個人技でDF、GKを次々にはがしてラストパス、最後はバリオスが流し込むだけだった。

広州恒大は先制直後にもムリキがスルーパスを受けて個人技でマーカーを外し、ゴールに流しこむシュートという抜群のテクニックを見せた。この場面では槙野智章がゴールライン際で辛くもクリアしてなんとか立て続けの失点は免れたが、浦和は90分を通してムリキの質の高いプレーに悩まされた。

2失点目も中盤でのボールロストからカウンターを受け、ムリキにワンツーでゴール前に抜け出されてネットを揺らされた。3失点目は結果としてオウンゴールだったが、やはりムリキが絡んでいた。「相手の11番(ムリキ)は非常にいい選手。1対1の状況を作られると、彼を止めるのは難しい」とペトロヴィッチ監督が脱帽したように、ムリキはちょっと手がつけられないレベルだった。

試合後、浦和の選手たちからは「奪われ方が悪かった」「ミスが続いた」という言葉が聞かれた。まさにその通りではあったが、それは自分たちの調子が悪かったからというよりは、広州恒大に誘導されて起きたものといったほうがいい。広州恒大からすれば、奪われ方が悪くなるように、危険な場所でミスが出るように戦った結果だろう。

ペトロヴィッチ監督は「浦和は相手よりベターに戦ったと思う」と試合を振り返った。確かにボゼッションを取って主導権を握ったという意味ではベターだったと言えるかもしれないが、思惑通りの展開に持ち込んだという意味では広州恒大のほうがベターだったと言える。百戦錬磨のリッピ監督のこと、良好とは言えないピッチコンディションも織り込み済みだったはずだ。

ただ、浦和はチャンスを作れなかったわけではない。結果は0−3の完敗だが、槙野は「決してチームはネガティブになっていない。逆にいいところも見られた」と話している。相手に狙われたポイントは課題として持ち帰り、通用した部分は継続して磨いていきたい。阪野豊史、関口訓充といった新加入選手がシーズン初戦でいきなりデビューを飾り、キラリと光るプレーを見せたことも収穫に挙げられる。

ACLはまだ始まったばかりだ。この敗戦で大会が終わるわけでもない。落ち込んでいる時間もない。日本に戻ったら大事なリーグ開幕戦が間近に控えている。今は気持ちを切り替え、広島戦(3/2@Eスタ)に集中していくことが一番大切なことだ。

以上

2013.02.27 Reported by 神谷正明
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