秋葉忠宏新監督のもとスタートを切った「ザスパクサツ群馬」がベールを脱いだ。群馬特有の空っ風が吹き荒れ、指先がしびれるほどの寒さの中で行われたプレシーズンマッチだったが、群馬はF東京の胸を借りて自分たちのスタイルを表現し続けた。ゲーム終盤には地力の差を見せつけられ0−1の敗戦となったが、開幕へ向けて期待が膨らむゲームだった。
正田スタ初陣となった群馬は、エース平繁龍一を1トップに配置し、シャドーに青木孝太を潜ませる3−4−2−1のシステムでF東京を迎え撃った。一方、F東京は李忠成、東慶悟の新戦力を2列目に起用する4−2−3−1で開幕への予行演習を行った。序盤、群馬はF東京2列目の流動的な動きに戸惑い押し込まれたが、時間の経過とともに持ち直すとブロックDFから鋭いアタックを繰り出していく。
守備でリズムをつかんだ群馬は、青木、小林竜樹、加藤弘堅らが素早い切り替えから攻撃のスイッチを入れていく。ゴールこそ奪えなかったがF東京を脅かすシーンを演出し、43分には小柳達司のダイナミックなオーバーラップから平繁がゴール前へ飛び込み「形」を披露、スタンドを沸かせて前半を終えた。再三の攻撃参加をみせた小柳は「イメージを共有できたことが良い攻撃につながった」と振り返った。
風下に回った後半は、F東京がギアを上げてきたこともあり自陣深くまで押し込まれる時間が続いた。群馬は左右WBがDFラインに入る5バックの守備陣形で、F東京の波状攻撃を回避。カウンターからチャンスをうかがう。しかしF東京は甘くはなかった。残り10分を切った81分、途中出場の河野広貴にDFラインの背後を取られてシュートを許す。対角へと放たれたシュートは一度ポストに弾かれたが、こぼれ球を太田宏介に詰められて失点。群馬は終盤に反撃を試みたもののF東京の守備に阻まれて0−1で試合を終えた。
ポポヴィッチ体制2年目でチーム基盤自体は完成しているF東京は、攻撃に物足りなさは残ったものの順調な仕上がりぶりを披露した。先発で80分までプレーした李忠成は「自分に求められる仕事は得点。動き出しや周囲のサポートで攻撃のアクションを起こしたい」と話したが、新戦力がチームにフィットすれば攻撃の魅力は増す。ポポヴィッチ監督は「オーガナイズとディシプリンを守って我慢強く戦えた。残り1週間、細かい部分の質や精度を上げて開幕へ臨みたい」と2日の大分戦を見据えた。
初の公式戦となった群馬は、勝利という結果こそつかめなかったものの指揮官が目指すアグレッシブなスタイルのフットボールを展開した。今季、群馬の下馬評は決して高くはない。だがこの試合をみたサポーターには今季のチームが闘える集団であることが十分に伝わったはずだ。全体の連係はテストマッチを重ねるごとに上がり、形が見え始めている。「やりたいサッカーは浸透してきた」(秋葉監督)。開幕までに求められるのは、平繁、青木という群馬にとって特別な選手が仕事をする舞台を整えること。彼ら2人の能力が発揮されれば、周囲の力も引き出される。「0−1で良かったとは思っていない。チームの成長を結果で示せるように責任を感じてプレーしたい」(平繁)。群馬は、F東京戦での課題と収穫を整理して開幕へ備える。
以上
2013.02.25 Reported by 伊藤寿学
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