いよいよ新シーズン開幕前、最後の調整試合となったこの一戦。「まだ組み合わせの部分で試している段階。試合を重ねるごとに固めて行く作業になると思う」と、キックオフカンファレンスの席で岐阜の行徳浩二監督が語った様に、岐阜はこの一戦で新たな試みを行った。
昨年の岐阜は中盤ボックスタイプの【4-4-2】、【4-2-3-1】がメインだったが、行徳監督は【4-3-3】システムを採用。前線はFW井上平をセンターに、右に染矢一樹、左に美尾敦を配置。そしてその後ろに右から李漢宰、服部年宏、益山司を並べ、「得点の可能性を探った中でスリーボランチを選択した」(行徳監督)。
今季のポイントとして、益山をどこで使うかがあった。行徳監督は左サイドバックでの起用を示唆していたが、益山の本来のポジションはボランチ。「益山は前に飛び出せる選手。中盤の底からパスを散らすだけではなく、積極的に前線に絡む動きが出来る」と評していたように、サイドバックよりも、ボランチの起用に意思を傾け、トップ下の選択もあったが、ボランチというポジションで、かつ中盤とアタッカー陣を繋ぐ潤滑油としての役割もこなせるように、スリーボランチの左に配置した格好となった。
序盤はこの形はスムーズに行った。前線で井上が自在に動き回り、それによってできたスペースに、益山と右ボランチの李が絡み、そこから美尾も中に絞り込んでバイタルエリアでの崩しに参加。DFを引き付けてから、右の染矢の突破力を生かすという、攻撃の形が出来ていた。
一方の京都は新加入のMF山瀬功治とFW三平和司がどこまでフィットするかが注目されたが、前線で収まりどころとなった三平に対し、山瀬は右MFに起用されながら、機を見て逆サイドまでポジションチェンジを図るが、左MF駒井善成らとの連携不足が垣間見られた。だが、個人能力で岐阜の上を行く京都は、まだコンビが噛み合わないCB関田寛士とデズモンドの間のスペースを、FW宮吉拓実、三平らが果敢に狙ってチャンスを作り出そうとしていた。
共に決定機を作るまでには至らなかったが、攻撃の狙いが伝わる試合展開となった。だが、岐阜にアクシデントが起こる。服部が左足を負傷し、そのまま交代を余儀なくされてしまったのだ。34分、服部に代わってMF清本拓己が投入されると、行徳監督はスリーボランチを止めて、李と益山のダブルボランチに切り替えた。正直、もっとこのシステムを見たかったが、アクシデントによりそれは叶わなくなってしまった。
【4-4-2】となってからの見所は、ツートップの縦関係とその周囲の連動性に変わった。ツートップは井上が前に、美尾が下に入り、清本は左MFに移った。美尾が1.5列目の位置でボールを引き出す動きをすると、すっと益山も上がってくる。井上もそれを見てDFラインの裏を狙う。前半はスリーボランチでも、ダブルボランチでもある程度の形を作り出すことは出来た。
だが、後半は京都がエンジンを掛けてきたことで、中盤でのポゼッションで上回れるようになった。山瀬の動きが徐々にフィットし、三平との相関関係が良くなったことで、京都は高い位置でボールを握ることが出来た。しかし、それに対して岐阜もデズモンドと関田が対人の強さを発揮。間に入ってくる選手に対しても、益山と李がカバーをし、ゴールは許さなかった。
「トレーニングでやったスペースを使うことは、いくつか出来た。守備も粘り強く対応が出来つつある。しかし、まだグループでどうするかを修正していかないといけない。1週間でやらないといけないところがはっきりとしてきた」(行徳監督)。
「後半になってボールが前に出るようになって、自分たちがやるべき切り替えが少しできた。前半より少し良くなったのは認められるし、1週間前にいいゲームが出来たと思う」(京都・大木武監督)。
共にシュート6本ずつを放った試合は、スコアレスドローで決着。岐阜は前半の守備のはめ込み、攻撃の形と言う面で光は見えたし、京都は全くかみ合わなかった前半から、新戦力が噛み合いだし、後半に一気に形を作り出してきたのも光明となった。共に課題と収穫を見出すことが出来た一戦。あとはいかにこれを1週間後の開幕戦に繋げられるか。いよいよ始まる本番に向けて、実り多きプレシーズンラストマッチとなった。
以上
2013.02.25 Reported by 安藤隆人
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