日本プロサッカー選手会（JPFA）がチャリティーマッチを主催するのは、昨年12月23日以来のこと。同年の3月11日に発生した東日本大震災の被災地の復興を支援する目的で始まったこの試合は、今年も開催された。
「まだまだ復興には時間がかかるなか、サッカーを通して継続的な支援をしていきたい」。その思いを持った多くの選手たちが、日本内外からユアテックスタジアム仙台に集結。東北に縁のある選手で構成された「東北ドリームス」と国内外のJPFA所属選手から選出された「JAPANスターズ」が対戦するのだが、今年はピッチ内外ともに前回から大きくスケールアップした試合が繰り広げられた。

試合は前半から点の取り合いとなった。東北ドリームスを指揮した名波浩監督が「JAPANスターズの方がハイプレッシャーで前からバンバン来て最初は受けてしまった」と振り返ったように、JAPANスターズが攻勢に出る。立ち上がりのチャンスこそ本間幸司（水戸）の好セーブに阻まれたが、8分には鈴木武蔵（新潟）のゴールでJAPANスターズが先制。13分にはCKから半袖ユニフォームに背番号79という播戸竜二がフィニッシュして点差を広げた。JAPANスターズは得点するたびに小倉隆史監督を派手に胴上げするパフォーマンスを見せた。

東北ドリームスも黙ってはいない。大津祐樹（VVVフェンロ）のドリブルを中心に攻めこみ、32分に宮城県出身の東浩史（愛媛）が1点を返した。すると東北ドリームス（と相手選手などの＋α）がピッチに雪崩れ込み、寝そべって「東北」の人文字を作り上げた。

盛り上がるスタジアム。後半はしばらくゴールが生まれない引き締まった守備が見られる展開となった。そこで、既に前半の時点で岡山一成（札幌）に煽られていたホーム側ゴール裏へ、さらなる盛り上がりをもたらすべく謎のサポーターグループ（構成員約2名）が加わった。よく見ると先制点をアシストした安田理大（フィテッセ）と負傷で試合出場は叶わなかった長友佑都（インテル・ミラノ）で、安田のメガホンのリードのもと長友が大学時代に鍛えたドラミングの腕を披露して応援歌のボリュームをアップさせた。

この効果があったか、73分に高木善朗（ユトレヒト）、76分に乾貴士（フランクフルト）と、後半を沸かせたJAPANスターズの選手たちが立て続けにゴール。クラッカー射撃のパフォーマンスで盛り上げた。今季での現役引退を決めた坂本紘司（湘南）も華麗なサイドチェンジを披露し、83分には、試合前に安田に「この人がキーマンじゃないですか」と指名された中山雅史（札幌）が満を持して投入された。

ゴール裏からの「東北、諦めるなー！」の声に押された東北ドリームスも、88分に村上和弘（大宮）のクロスを飯尾一慶（東京V）が鮮やかに蹴りこんでゴール。今度はバックスタンドの前で「東北」の文字を作った。

そしてこのゴールの直後に、大友一平主審にアクシデントでもあったのか、主審交代のアナウンス。代わって出てきたのはなぜか第四審ではなく、昨年に副審を務めた内田篤人だった。中学校以来という内田主審の登場で盛り上がりも最高潮を迎えようとしていたが、最後の最後にそれ以上のドラマが待っていた。JAPANスターズの乾、宇佐美貴史（ホッフェンハイム）がボールをつなぐと、その先に抜け出していたのはなんと中山。PKを与える必要もなく、自らの引た…いや、「第一線を退く」舞台を飾る「ゴンゴール」を決めた。
選手全員が反対サイドのゴール裏に駆けていくと、そこで待っていたのはサポーターからの紙テープによる祝福、中山コール、そしてみんなでの胴上げ。PKを取る準備をしていたはずの内田主審はそのPKもアディショナルタイムも取ることなくここで試合を終了し、楽しい宴は幕を閉じた。

「自分たちが楽しくやっていれば、見てくださっている皆さんにも楽しさが伝わるかな、という気持ちでやっていました」と語ったのは、ミックスゾーンで内田主審に「真面目か！」と突っこまれていた長谷部誠（ヴォルフスブルク）JAPANスターズ主将。間違いなく、その気持ちは伝わっていた。

試合中に、長友のドラムのもとでサポーターが熱唱したのは「ニッポン」の応援歌。まだまだ続く被災地の復興のために努力する日本のみんなを、選手も、サポーターも、それぞれの持てる力で、応援し続けていくのである。

以上

2012.12.27 Reported by 板垣晴朗