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最終節の松本戦は２度ネットを揺らしたが、微妙な判定でスコアレスドロー。プレーオフを６位で進出することになったが、終盤の３試合は自分たちのスタイルを存分に出せているし、手応えは十分にある。もっとも、田坂和昭監督も言うように「プレーオフは別の大会」。天皇杯やカップ戦と異なりレギュレーションの違いで、大分は勝たなければ次の試合はない。田坂監督はリーグ戦をマラソンだとすれば、プレーオフは短距離走と例えた。「ウチは一歩下がった状態でスタートしなければいけない、最初から全力で駆け抜け、追い抜かなければいけない」と序盤からフルスロットルで試合に臨む覚悟だ。

短期決戦で重要なのは、戦術でも、個の能力でもなく、メンタルだ。「引き分けでいい」のと「勝たなければいけない」のとでは、チームの勢いがまったく違う。本来なら「引き分けでいい」の方が有利であるが、大分にとって、「勝たなければいけない」という状況は悪くはない。突き進めばいい、と前向きな姿勢で試合に臨めるからだ。確かに京都は強い。選手個々のクオリティは高く、特に攻撃陣はテンポ良く、いいボールの動かし方をする。ここ数年の世界のサッカーの潮流を見ても、ポゼッションが高いチームの勝率は高い。ただ、「サッカーは上手いチームが勝つわけではない。強いチームが勝つ」（田坂監督）。
今季のリーグ戦では大分が２勝しているが、どちらの試合も内容では京都が圧勝しているが、結果は大分に軍配が上がっている。この２試合の戦い方がヒントになることは間違いない。

「守備の時間は長くなると思うが、焦れずに自分たちがこれまでやってきたサッカーを貫くだけ。個々のタレントでは向こうが上でも、運動量を増やし連携して、２度でも３度でも追ってボールを奪い、自分たちの形を出して、それをゴールに結び付けるしかない」
キャプテンの宮沢正史の言葉のとおり、J１レベルの陣容を誇る京都相手に、大分がハードワークを完遂すれば、勝機は十分ある。
前所属の大宮で数々の崖っぷち争いを経験した土岐田洸平も、こう語っている。
「リスクを負ってでも点を取らなければいけない。京都はポゼッションを得意とするチームなのでやり辛さはあるが、勝てば上に上がれるポジティブな戦い。気負う物はないし、最初から飛ばす」
失うものは何もない。全力を出し切り、そこで力尽きるか、そのまま突っ走るかのふたつしかない。これまで通りに運動量をキープし、球際で粘り、焦れずに勝機を引き寄せていった戦いをするだけ。ネガティブな面や課題はいくらでも指摘できる。京都と比べればなおさらである。だが、大分は挑戦者である。挑戦者は臆することなく堂々と、己のスタイルを貫けばいい。最後にモノを言うのは「戦う姿勢」（田坂監督）だ。この一戦では気持ちで相手を上回り、焦れずに戦い切る今季の大分の戦いをするだけだ。

３年前にJ２に降格が決まったのは西京極だった。涙とお金で失楽した３年間の終止符を京都で晴らし、国立に立つ。そこは、大分がクラブ初のタイトルを手にした思い出の地である。最高のシナリオと舞台ができている。ドラマチックなほど奇跡は生まれやすい。

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2012.11.17 Reported by 柚野真也